(ブルームバーグ):米国では、子どもを持つ親の不安は、従来の大学進学から卒業後の就職へと移りつつある。厳しさを増す新卒の就職市場を背景に、経済的に余裕のある家庭では、子どもが社会に出る何年も前からキャリアコーチを付け、多い場合は数万ドル(数百万円)を支払っている。
ニュージャージー州に拠点を置くキャリアカウンセリング会社「ネクスト・グレート・ステップ」を率いるベス・ヘンドラーグラント氏は、少人数制プログラムや個別指導を通じて、就職に必要なスキルや受け答えを学生に身に付けさせている。こうしたキャリアコーチの需要は拡大している。
同氏がこの事業を10年余り前に始めた当初は、その価値を親に理解してもらうのに苦労した。しかし今ではチームを拡大し、大学1年生の段階から学生を支援している。競争が激化する中で重要性を増すインターンシップの確保や履歴書づくりを後押しするためだ。
こうしたサービスは大学のキャリアセンターと本質的に大きく変わらないとの指摘もあるが、利用は広がっている。
大学生向けのキャリアコーチは、面接対策や応募戦略の指導に1時間当たり数百ドル程度かかり、より包括的なプログラムでは通常3000-1万ドルの料金となる。一方、ニューヨークに拠点を置く就職支援会社プライオリティー・キャンディデーツによると、金融など競争の激しい業界への就職に備えるため、集中的な支援や専門家の指導に3万ドル以上を支払う親もいるという。
コネティカット州の小児科医ロリ・ストーチ・スミス氏は、娘の就職を前にキャリア支援サービスを利用した。「5年前ならこうしたサービスは使わなかったと思うが、今は就職が本当に難しい」と話す。
学生側もこうした支援を歓迎するケースが多いと、親やコーチは話す。グループセッションや個別指導により就職活動の負担は軽減され、継続的な励ましや個別の助言が自信の維持にもつながっているという。
中堅社員向け支援で知られるキャリアコーチング業界において、学生向けサービスは、新たな収益源として浮上している。国際キャリアコーチ協会によると、2019年時点で大学生や新卒を主な対象としていたコーチは約5%にとどまっていたが、最新の調査では25%超がこの層を中核顧客と位置付けている。
ロサンゼルスの弁護士ダグ・ロアン氏は、16歳の息子のためにキャリアコーチを雇った。大学進学コンサルを利用する前に、専攻や進路を早い段階で考えさせる狙いだ。約1500ドルを支払った同氏は「大学進学は高額な投資であり、その費用に見合う進路を選ぶ必要がある」と話す。
もっとも、こうした早期のキャリア設計については「どこかやり過ぎにも感じる」とも語る。「まだ16歳の少年で、友人と遊び回ることが何より大事な時期でもある」と、複雑な思いをにじませた。
高額なキャリア支援は高校卒業直後から始まるケースもあるが、早すぎる進路設計には慎重な見方もある。ニューヨークのキャリア支援会社グラドバンテージの創業者リサ・トレットラー氏は、費用を負担するのは親でも「顧客はあくまで子ども本人」だと繰り返し伝えている。親が望む進路を優先し、子どもの意向と食い違うケースも少なくないという。
「親子の間でバランスを取るのは簡単ではない。若者だけでなく親にも柔軟さが求められる」と語った。
(原文は「ブルームバーグ・ビジネスウィーク」誌に掲載)
原題:Anxious Parents Spend More Than $50,000 to Land Their Kid a Job
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