(ブルームバーグ):中国当局が資本流出を抑制するために、違法な越境取引に対して過去最大規模の取り締まりに踏み切ったことを受け、中国の投資家は海外株を売買するための別の手段を急いで探している。
米国で人工知能(AI)の仕事を手がけるリチャード・ワン氏は、中国のオンライン証券大手、富途控股(フートゥー・ホールディングス)の株式約12万米ドル(約1900万円)分を保有していた。
しかし、中国当局が資本規制の抜け穴封じに向けた厳しい措置を講じたことを受け、22日に米国株を売却したと語った。香港市場が26日に再開した後、残る保有株も売却する予定だという。
今回の措置は市場に急速な反応を引き起こし、22日にはナスダック・ゴールデン・ドラゴン中国指数が2.2%下落し、富途の時価総額は4分の1超が失われた。
中国本土投資家からの需要縮小が懸念される中、香港市場の流動性や活況を呈している新規株式公開(IPO)市場を圧迫する恐れもある。香港の主要株価指数であるハンセン指数は26日、取引序盤の下げから切り返し、香港時間午前10時20分時点で0.4%高で推移した。
ブルームバーグ・インテリジェンスがまとめた指数によると、いわゆるホットマネー(投機的な短期資金)の流出額は昨年、約1兆米ドルに達した。2006年の統計開始以来、年間ベースで最大の流出となった。
中国国有の中信証券(CITIC証券)は、今回の取り締まりが香港にある最大2500億香港ドル(約5兆円)相当の資産に影響を及ぼす可能性があると試算している。このうち富途だけで約1500億-1800億香港ドルを占めるという。ブルームバーグが集計したデータによれば、富途は今年、香港で30件のIPOを引き受けており、銀行を含めどの金融機関より多い。
ワン氏は「中国はさらなる資本流出を懸念し、越境取引ルートを閉鎖して資金を国内市場へ戻そうとしている」と述べ、「だから私は手を引く」と語った。
今回の取り締まりは、中国が2022年末にオンライン証券会社へ違法事業の是正と中国本土投資家の新規受け入れ停止を命じた際よりも、一段と踏み込んだ措置となる。
これは、中国当局が越境資金の移動への不満を強めていることを示唆している。中国証券監督管理委員会(証監会)は22日、ライセンスなしで中国本土で営業したとして、富途、老虎証券、長橋証券の3社に対し、合計3億3000万米ドル超の罰金を科す方針を明らかにした。
これまで、一部の投資家は2022年の規制を回避し、偽造書類を使って新規口座を開設していた。銀行勤務で成都在住のデイジー・チン氏は、香港在住の友人の住所情報を利用して昨年、富途で口座を開設して香港IPOに応募していたという。
チン氏は週末にかけて、他の証券会社に代替手段がないか確認を急いだが、口座開設要件がさらに厳格化されていることが分かった。現在は200万元(約4600万円)相当の株式をすべて売却するつもりだ。
チン氏は、「シンガポールや米国の別の証券会社へ移ろうとしている人もいるが、私は詳細ルールを待つつもりはない。新たな口座を開設するつもりもない」とし、「保有株を売却して即座に撤退し、リスクを回避する」と語った。
すでに銀行がその受け皿となり始めている。金誠同達法律事務所のパートナーで上海を拠点とするアレン・ワン氏によると、一部顧客は中国銀行の香港支店やHSBCホールディングスなど、越境取引が引き続き認められている金融機関に海外株取引を移している。保有株は口座移管ができるため、売却する必要はないという。
銀行は以前から利用可能な選択肢だったが、手数料の高さや効率の低さから富途のような証券会社の方が投資家に人気だった。ただ、ワン氏は「今では銀行側の立場が強くなっている」と指摘した。「現時点では政策がやや不透明だが、顧客は銀行まで禁止対象になることを懸念している」という。
香港に拠点を置く一部の中国系証券会社も、今回の影響範囲を見極めるため、政策がより明確になるのを待っている。匿名を条件に語った関係者によれば、2022年以前に開設された既存口座については、今回の取り締まり対象から除外される可能性を期待する人たちもいる。
中国当局は2022年、オンライン証券会社に既存顧客向けのサービス継続を認めていたが、22日にはすべての「違法」な既存口座を2年以内に整理するよう命じた。当局は、この措置について資本市場の健全化と、海外投資を規制されたルートへ誘導することが目的だとしている。
原題:China Traders Run for Exit After Cross-Border Flow Crackdown (1)(抜粋)
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