(ブルームバーグ):米国とイランによる2週間の停戦合意で、エネルギー輸送の要衝ホルムズ海峡が一時的に再開される可能性が浮上する中、船主らは合意を巡り詳細の把握に追われている。ペルシャ湾内に足止めされている800隻超の船舶を湾外に移動させる好機を生かそうとしている。
ホルムズ海峡は数週間にわたり事実上封鎖されてきた。米国とイスラエルによる攻撃を受けた後、イランが同海峡の管理を強めたことで、前例のない世界的なエネルギー供給不足を引き起こした。複数の危険行為を受け、数千人の船員と貨物の安全を確保できない状況となったため、船舶は海峡の両側で待機を余儀なくされ、通航はほぼ途絶えていた。
トランプ米大統領が設定した期限が切れる直前、米国とイランはホルムズ海峡の通航再開と引き換えに停戦で合意したが、詳細はなお不明だ。イランは自国の軍と連携し「技術的制約」の範囲内で2週間の安全通航に同意したとする一方、トランプ氏は「完全で即時かつ安全な再開」を発表した。通航料の支払いなどを巡り合意に至ったかどうかも明らかでない。
トランプ大統領は別のSNS投稿で、米国が混雑の緩和を支援し、円滑な流れを確保するため、とどまって状況を見守ると表明した。
今回のニュースは慎重ながらも楽観的な見方を船主に促すには十分だった。業界団体の日本船主協会などは、情報を伝える前に米国とイランの合意内容の詳細を確認する方針を示した。
24時間で元に戻らず
船舶の航行にはさらなる明確化が必要であり、最良のシナリオでも物流の回復には時間がかかると警告する向きが多い。平時には1日当たり約135隻が通航しているが、その数は大幅に減少している。
「世界の海運の流れは24時間で元に戻るものではない」と、西オーストラリア大学防衛・安全保障研究所のジェニファー・パーカー非常勤教授は指摘する。「タンカー船主や保険会社、乗組員はリスクが実際に低下したと確信する必要がある。単に一時停止しただけでは不十分だ」と述べた。

ケプラーのデータによると、湾内にとどまっている船舶の多くはエネルギー輸送船だ。現在、原油や石油製品を運ぶタンカーが426隻、液化石油ガス(LPG)運搬船が34隻、液化天然ガス(LNG)船が19隻ある。残りは農産物や金属などのばら積み貨物やコンテナを輸送している。
停戦計画は必要な一歩だが、あくまで初期段階に過ぎないと、保険ブローカー、ウィリス・タワーズ・ワトソンのアジア海上部門責任者ルイス・ハート氏は指摘。「2週間の猶予があっても、活動の再開は一斉ではなく、段階的に進むとみられる」と話す。
トレーダーや船主は今後、どの船が海峡通過に向けて動き出すのか、特に通常であればイランの保護を受けない船舶がどう動くかを注視する見通しだ。8日午前時点で、ドバイやホール・ファッカン周辺では1000隻を超える船舶が集まって待機している。
「市場の好反応は良いことだが、暫定的な停戦の初日だ」と、元米情報当局顧問のマイケル・プレジェント氏はブルームバーグテレビジョンで指摘。「どの船が通過を許可され、いくら徴収され、誰が拒否されるかは、当局が管理する可能性が高い」と述べた。
発表後に脱出を試みた最初の2隻は8日午前、イランのララク島とゲシュム島に向けて1組で航行しているようだと、船舶追跡データは示している。このうち1隻は、米国の制裁対象となっているスエズマックス型船「Tour2」で、イラン船籍だ。
この船舶の隣を航行しているのはギリシャ所有のばら積み船「NJ Earth」で、ペルシャ湾内での進路履歴からは、位置情報を隠したり、電子戦で妨害されたりした可能性が示唆されている。所有会社「NJ Earth Marine」と管理会社「NJ Trust Marine」については、データベース「Equasis」に連絡先情報が掲載されていない。
国際海事機関(IMO)の3月末時点の集計によれば、これらの船舶や関連の支援船に乗る民間の船員約2万人が取り残されている。乗組員は物資不足や疲労、心理的ストレスに直面しているとIMOが警告している。
原題:Shipowners Eye Hormuz Truce With 800 Vessels Still Trapped (2)(抜粋)
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--取材協力:稲島剛史.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
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