人工知能(AI)脅威論で激しく売り込まれてきた日本のソフトウエア関連株の一部に、反発を期待する声が上がり始めた。情報技術(IT)人材の不足など日本の特殊事情を踏まえれば、AI技術の進展はむしろチャンスになり得るとの見方からだ。

富士通のロゴ

富士通やNEC、野村総合研究所など大手システムインテグレーターの株価が下げ止まりつつある。AIによってソフトウエア開発が誰でも簡単にできるようになればビジネスが脅かされかねないとの懸念が世界的にくすぶる中でも、日本については必ずしも他国と同列には語れないとの分析が聞かれるようになってきた。

日本株調査会社の英ペラム・スミザーズ・アソシエイツのリンゼイ・ウィップ氏は、「日本では企業内にIT専門技術者が少ないことから、情報システムの設計、運営、維持をシステムインテグレーターに委託することが多い」と話す。これが関連株の「ショックを和らげる役割」を果たし、「付加価値の高い提案を提供し続けて必要不可欠な存在となれば、さらなる強みにもなり得る」と指摘した。

国内では人材不足に加えてデジタル化の遅れもあってシステム開発への需要は強く、システムインテグレーター各社は近年、収益を大幅に拡大してきた。

ノムラ・シンガポールの須田吉貴シニア・クロスアセット・ストラテジストは、日本のソフトウエア株は欧米の同業他社をアウトパフォームする可能性が高いとみる。

須田氏は「ソフトウエア株売りの背景にあるのは人を減らしてAIで代替していくという考え方だが、日本では米国よりも人員削減が難しい」ことを指摘。「AIの脅威が波及するのは、先進国では日本が一番遅くなる」として、日本のソフトウエア株をロング(買い持ち)し、米国のソフトウエア株をショート(売り持ち)する戦略が有効だと話す。

ニッセイアセットマネジメントの伊藤琢チーフ・ポートフォリオ・マネジャーも、今のところソフトウエア企業の業績は好調で、AIによってコスト削減も可能になるため、短期的には収益性の改善も可能だとの見方もあると言う。「システムインテグレーターはシステム開発の最終的なリスクまで引き受けるのが要諦で、AIは簡単には代替できない」とAI脅威論に疑問を呈した。

とはいえ、伊藤氏を含む多くのファンドマネジャーにとって、下げ基調が鮮明になっているソフトウエア株は手を出しづらいセクターであることは変わらない。

富士通は先月、AI技術を活用してソフトウエア開発の生産性を約100倍向上させるプラットフォームを開発したと発表。ベイカレントは今月、アナリスト予想を上回る規模の自社株買い計画を明らかにするなど、潜在的に株価にポジティブとなり得る材料も出ているが、株価を反転させるには至ってない。

ただ、ソフトウエア関連株が世界中で十把ひとからげに売られてきたことから、今後は銘柄選別の動きが強まるとの見方は増えている。ペラム・スミザーズのウィップ氏は「長い目で見れば勝ち組と負け組の区別がはっきりしてくるだろう」と語り、大規模な独自データを持つ企業や規制によって守られている産業などが優位に立つとの考えを示す。

英運用会社ベイリー・ギフォードの日本株担当パートナー、ドナルド・ファーカソン氏は、今後のソフトウエア企業の価値はAI機能を取り込む力と速さによって決まってくるとみる。「大手のシステムインテグレーターにとっては必ずしも悪い話ではない」と読む。

また、ソフトウエア企業はエネルギー価格高騰の影響を受けにくいことから、米国・イスラエルによるイラン攻撃以降は東証株価指数(TOPIX)をややアウトパフォームする企業も増えた。

スイスのオンライン銀行、スイスクオートでシニアアナリストを務めるイペック・オズカルデスカヤ氏は、「エネルギー消費量が多い製造業や輸送業などに比べると、ITセクターは中東のリスクに対して耐性がある」とし、特に防衛・軍需産業向けにクラウドサービスを提供する企業は有望だとの見方を示した。

もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp

©2026 Bloomberg L.P.