動画共有アプリ「TikTok(ティックトック)」が復活した。

米国事業の売却か、アプリ利用禁止かという5年にわたる問題がようやく決着して以降、初の大規模なイベントに参加して、筆者は少なくともそのような印象を受けた。

TikTokが広告主や代理店向けに新製品やフォーマットを発表した今回のイベントは、再出発した同社のお披露目の場のような雰囲気だった。会場はブロードウェイやハリウッドの歴史において華やかな存在感を放つ、ニューヨークのジーグフェルド・ボールルームという象徴的で由緒ある場所だ。

また2026年のグラミー賞受賞者であるデュランド・バーナーがサプライズで登場しパフォーマンスを披露。iHeartMediaとの新たな提携や今月開始された「TikTok Radio」をアピールする場となった。

砂糖がけのイチゴのトレーやペンネ・アラ・ウォッカのボウルが客席まで直接運ばれるといったぜいたくな演出も見られた。そして特筆すべきは、1月にTikTokの米国データセキュリティー合弁事業の最高経営責任者(CEO)に就任したアダム・プレッサー氏が、就任後初めて公の場で発言したことだ。





HOLLYWOOD, CALIFORNIA - AUGUST 29: Adam Presser speaks onstage during TikTok Redefining Fandom at Hollywood Athletic Club on August 29, 2024 in Hollywood, California. (Photo by Jon Kopaloff/Getty Images for TikTok)
2024年8月のTikTokイベントで登壇したアダム・プレッサー氏

プレッサー氏らTikTok幹部が聴衆に伝えたメッセージは明確だった。同社は単に以前の状態に戻っただけでなく、イノベーションや成長、可能性に向けてより強力な新局面に入ろうとしているということだ。

TikTokの広告責任者カートゥーン・ワイス氏は5年にわたる混乱を振り、「困難な取り組みをやり遂げた」と述べた。「これから一気にトップギアに入れ、全速力で突き進んでいく」とし、「ぜひ身を乗り出し、音量を上げてほしい。そしてTikTokから発信されるものをしっかり感じてほしい。次の章はより大きく、より大胆で、われわれはまだ始まったばかりだ」と続けた。

その上で、国家安全保障上の懸念から中国の親会社バイトダンスから切り離されたTikTokの新たな合弁事業が、会場にいるビジネスパートナーにとって何を意味するのか、説明するようプレッサー氏に求めた。

プレッサー氏は慎重かつ説得力のある説明を行ったが、広告やマーケティングについては、自身が率いる米国主体の新会社ではなく、バイトダンスが引き続き統括する点には触れなかった。

同社に対する監視の目が完全に消えることはない。ソーシャルメディア依存を巡り家族や学区などがTikTokを含む主要プラットフォームを訴えた全米規模の裁判が6月に始まる予定だ。この訴訟が及ぼす潜在的な影響は一段と大きくなった。カリフォルニア州の連邦地裁が25日、若者のソーシャルメディア依存を巡る訴訟で、20歳の女性の精神的な健康問題についてメタとグーグル傘下YouTubeに責任があると認定したためだ。

また議会では、TikTokに関する合意の合法性に加え、トランプ大統領の周辺で金銭のやり取りがあったとされる経緯について、依然として疑問の声が上がっている。

それでも、トランプ氏が2020年8月にTikTokの禁止または売却を迫って以降、今回のイベントはTikTokアプリの将来を巡る不透明感が会話に影を落とさなかった数少ない機会の一つだった。

TikTokはアプリを開いた際にブランドのロゴが最初に表示される「Logo Takeover」と呼ばれる広告枠や、15分以内に同一ブランドの広告を3本表示する「Prime Time」機能など、注目度の高い新たな広告商品を発表した。

TikTokのショッピング事業の急成長についても最新情報が提供された。ラスベガスで開催されたeコマース(電子商取引)のイベント「Shoptalk」で発表された新たなデータによると、TikTok Shopの2025年の取引総額は約80%増加。今年1-3月期(第1四半期)だけで、数百人の人気クリエイターが25年通年の売上高をすでに上回った。

TikTokが今後も存在感を維持するとみられる中、筆者は同社のeコマースの野望とハリウッドへの挑戦、AI強化の戦略について注視していきたいと考えている。

原題:TikTok Takes Aim at a Bigger, Bolder Future: Tech In Depth(抜粋)

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