電気自動車(EV)戦略の見直しなどで今期(2025年3月期)に巨額の赤字に転落する見通しとなったホンダでは、稼ぎ頭の二輪車事業頼みの構図がこれまで以上に鮮明になっている。ただ、二輪にも電動化の波が押し寄せ、中国などアジアの新興メーカーが攻勢を強めており、牙城が脅かされ始めている。

ホンダは二輪で圧倒的な強みを持つ。連結売上高に占める二輪事業の割合は2割に満たないものの、四輪事業の赤字が続く現状では利益面で会社を支える屋台骨となっている。

英調査会社ペラム・スミザーズ・アソシエーツのジュリー・ブート氏は、ホンダの収益構造を踏まえ「なぜ自動車を売っているのかと言いたくなる」と話す。

ホンダの三部敏宏社長は5月に経営立て直し策を示す予定で、自動車事業の再建が主軸になる見通しだ。ただ、投資家の関心は二輪事業をどう守り、成長につなげるかにも向かう。電動化への対応次第では、収益の安定や市場の信認回復が左右される可能性がある。

ホンダの三部敏宏社長(2023年5月19日)

中長期では、ホンダは世界市場で50%のシェア獲得を狙っている。成長の原動力として見込むのは、インドや、インドネシア、フィリピン、ブラジルなどグローバルサウスと呼ばれる新興国だ。二輪車が日常の交通手段として根付いている地域で「カブ」や「PCX」シリーズなど性能が高くて故障が少なく、手ごろな価格のホンダ製品は支持されてきた。

ただ、それらの地域でもスマートフォンのような手軽さや維持費の安さを背景に、EVバイクやスクーターの普及は今後進むと見る向きがあり、ブルームバーグNEFでは40年に二輪販売全体の87%が電動化すると予測している。

そうした中でホンダとヤマハ発動機、スズキ、カワサキの国内二輪大手4社は、25年の世界二輪出荷台数6000万台のうち4割超を占めた。ただ、EV二輪の比率は9%未満にとどまっている。

昨年11月、王者ホンダにとって黒船来襲ともいえる出来事が起きた。販売台数ベースで世界最大の電動二輪メーカーである中国の雅迪集団が日本市場に参入したのだ。投入したEVスクーター「PORTA」は21万7800円(税込み)でホンダやヤマハ発動機のEVスクーターより安かった。ホンダは2月、22万円(同)の新車を3月下旬から日本で発売すると発表した。

世界の二輪販売の35%を占め、ホンダにとっても最重要市場と言えるインドでも競争が激化している。ホンダは3年前、そのインドでEVスクーター2車種を投入し、世界展開を始めたが出足は鈍かった。ある車種は自宅充電に対応せず、電池交換方式のみに頼ったため使い勝手に課題があった。別の車種では急速充電機能を備えたが、競合より大幅に高い価格設定となった。インドネシアでも同様の結果となった。

インドで生産拡大

ホンダでは30年までにEV二輪に5000億円を投じる計画だ。30の新モデルを投入し、年400万台の販売を目指す。最終的には二輪販売全体に占めるEV比率を2割まで高める構想を掲げている。

ただ、こうした市場ほど課題は大きい。EV二輪の航続距離は一般に100キロメートル未満で、ガソリン車の約300キロメートルに及ばない。また価格も高い。電池は高コストで搭載スペースにも制約があり、性能と手ごろさの両立は容易ではない。

ブルームバーグNEFのコーマル・カリア氏は「内燃機関車と競える性能が必要だ」と話し、「一方で、メーカーは価格を大幅な上乗せなしで抑えることに苦労している」と指摘した。

ベトナムのビンファスト・オート、台湾のゴゴロ、インドのバジャージ・オートといった中国以外の新興勢も勢力を広げている。EV二輪の普及は技術だけでなく、補助金や政策支援にも左右される。生活費の上昇が消費者の負担を重くする中、主要市場での規制強化も需要構造を変えつつある。

ホンダは生産拡大にも動く。インドでは28年までに電動二輪の専用工場を新設する計画で、生産能力は625万台から800万台に引き上げる方針だ。

もっとも、二輪の増産は収益面で裏目に出る可能性もある。ブート氏は、販売が増えても利益率の低下を招く恐れがあるとみる。「ブランドは残っても、いまは競争のルールもプレーヤーも変わった」と話した。

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