(ブルームバーグ):ウォール街の金融機関は、2026年の米経済見通しを下方修正し、インフレ率と失業率の見通しを引き上げている。イラン戦争の影響が徐々に顕在化するなか、リセッション(景気後退)入りの確率も上昇している。
ゴールドマン・サックス・グループは原油価格の急騰を受け、今後12カ月以内にリセッションに陥るリスクが30%に上昇したと指摘した。失業率は2月の4.4%から年末までに4.6%に上昇すると予想する。複数の金融機関は、今年のインフレ率が2%ではなく3%に近づくとの見方を示しており、可処分所得を圧迫し、雇用の抑制要因になるとみている。
これは、トランプ関税の影響が後退し、減税による景気刺激が本格化することで2026年は力強い年になると見込まれていた従来予想からの転換だ。戦闘が早期に終結した場合でも、すでに生じた打撃により米経済は不安定な状態が続き、求職者や低所得層はいずれも厳しい状況に直面し続けるとエコノミストは指摘している。
オックスフォード・エコノミクスの米国担当チーフエコノミスト、ナンシー・バンデンホウテン氏は「この戦争の影響で、経済の多くの側面が弱含むことになる」と指摘。「影響は非常に短期間で明確に表れている。近くのガソリンスタンドを見れば分かる」と語った。

米自動車協会(AAA)によると、ガソリン価格は今月これまでに30%余り上昇し、1ガロン=約4ドルとなった。2005年にハリケーン「カトリーナ」がメキシコ湾岸の原油生産を停止させて以来の大幅上昇となる。
一方、トランプ政権の「大きな美しい法案」によって拡大した所得税還付は予想を下回っている。モルガン・スタンレーのエコノミストは23日のリポートで、還付額は前年比12%増で推移していると推計したが、従来見込んでいた15-25%増を下回った。同行は個人消費の見通しを下方修正し、2026年は従来の2%から1.7%増にとどまると予測している。
同行のアルニマ・シンハ氏はインタビューで「原油ショックによって、これまで見込んでいた景気押し上げ効果はほぼ打ち消される」と述べた。
ウォール街では、2026年の米経済成長率は約2%になると予想されている。データセンター投資の継続や、豊富で安価な天然ガス供給を背景に輸入エネルギーの影響を比較的受けにくいことが支えとなる。
ただ、経済は引き続き人工知能(AI)を巡る投資家の楽観や、資産効果に支えられた高所得層の支出に依存する構図となる。こうした支出は、雇用の伸びがほぼゼロだった2025年の景気拡大を下支えした。

原油価格は、イランとの戦争終結に向けた米国の外交努力が伝えられる中でやや落ち着いているものの、北海ブレントは依然として1バレル=100ドル前後で推移している。仮に双方が早期に戦闘終結で合意した場合でも、ホルムズ海峡を通る原油輸送の回復には時間を要すると指摘する声は多い。
米国の消費者はすでに、ガソリンや航空券の購入時に影響を実感している。一方で、戦争によって生じた肥料不足の拡大も、年内を通じて食品価格を押し上げる見通しだ。ディーゼル燃料の価格高騰は輸送コストを押し上げ、関税の影響ですでに上昇していた消費財価格の一段高につながる可能性がある。
BMOキャピタル・マーケッツのシニアエコノミスト、ジェニファー・リー氏は「事態の収束までにどれだけ時間がかかるのか、誰もが強い懸念を抱いている。仮にきょう決着しても、生産の立ち上げには時間がかかる。エネルギー生産や供給の再開には長い時間を要する」と述べた。
個人消費への影響
シティグループなど複数の金融機関は、失業率の上昇を予想している。これが理由の一つとなり、多くの市場関係者は、足元で利上げ観測が広がる中でも、米連邦準備制度理事会(FRB)が2026年のいずれかの時点で利下げを再開するとの見方を維持している。
シティのエコノミスト、ジゼラ・ヤング氏は、雇用鈍化が個人消費の見通しにも波及する可能性があると指摘。「すでに平均でほぼゼロの状態にある雇用の伸びがさらに鈍化すれば、個人消費にとって新たな逆風となり得る」と述べた。賃金上昇率が再び鈍化することも見込んでいるという。
ただ、戦争による影響の初期的な兆候は、急速に悪化する見通しが示すほど一様ではない。JPモルガン・チェースやバンク・オブ・アメリカのエコノミストによると、クレジットカード支出の週次データでは、3月中旬時点でも減速の兆しはほとんど確認されていない。ガソリン価格の上昇で負担が増す中でも、消費者はまだ支出を抑制する動きには至っていないとみられる。
JPモルガンの米国担当チーフエコノミスト、マイケル・フェローリ氏は「紛争開始から最初の2週間では、個人消費に顕著な変化は見られていない」と指摘。「それでも、景気拡大の勢いはいくぶん削がれると考えている」と述べた。
原題:US Recession Risks Begin to Rise as Economists Tally War Impact(抜粋)
--取材協力:Jarrell Dillard.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
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