(ブルームバーグ):人工知能(AI)ブームを背景としたバブル懸念が広がる中、投資家が安全な逃避先として新たに注目している資産クラスがある。銀だ。
銀価格は2025年に130%超上昇。金の上昇率を上回り、主要資産の中でも有数の好パフォーマンスとなった。インフレ懸念がくすぶる中、ウォール街ではこれが「ディベースメント取引(通貨価値切り下げトレード)」なのか、それとも一時的な熱狂局面にすぎないのかを巡り議論が起きている。

米フロリダ州の資産運用会社シーコースト・インベストメント・サービスでシニア・バイスプレジデント兼ファイナンシャルアドバイザーを務めるデニス・ノルテ氏は「これまでに多額の資金が流入し、値動きも非常に不安定になっていることから、すでに高値をつけた可能性があるとの指摘も出ている」と語る。
金と異なり、銀は単なる象徴的な資産ではない。太陽光パネルや半導体、電気自動車(EV)に使われる実用的な金属だ。在庫の減少に加え、中国やインドの買い手による安定した需要が供給を引き締めている。一方で、こうした産業用途の性格から、銀相場の動向は投資家心理だけでなく、世界の景気循環にも大きく左右される。
こうした二面性、すなわち逃避先資産であると同時に原材料でもあるという性格は、足元の矛盾を如実に映し出している。安定性への不安を抱えながらも、なお成長に賭ける市場の構図だ。
最近の動きを踏まえると、銀に関心を持つ個人投資家は、銀を裏付けとした上場投信信託(ETF)にとどめ、現物には手を出さないのが賢明だろう。
金と銀の同一視は避けよう
銀は金と同様に安全資産と見なされることがあるが、市場の厚みははるかに薄い。ロンドンの保管庫には重量ベースで金の約3倍の銀が保有されているが、その総額は約400億ドルと、金の1兆1000億ドルに比べ極めて小さい。このため、価格変動は大きくなりやすく、流動性も安定しにくい。
金価格が市場予想を大きく上回る中、より手頃な銀は貴金属に投資したい投資家にとって手軽な選択肢に映るかもしれない。ただし、両者を同一視するのは避けるべきだ。

銀が1オンス=50ドルを上回って取引されたのは1980年が最後で、このときは富豪のハント兄弟が市場の独占を試みて失敗した。彼らの破綻は価格の急落と、その後の長年にわたる訴訟を招いた。2011年や新型コロナウイルス禍の2020年に見られた相場の高騰も、最終的には価格が急落して終わった。
直近の銀相場の上昇は、取引の活発さという点で歴史的なものとなっている。2025年1月時点では1オンス約29ドルだったが、その後相場は急騰し、同年末までに70ドルを突破した。2026年1月には一時120ドルを上回り、その後、下落に転じた。
従来の相場が主に投機的な過熱によって押し上げられてきたのに対し、2026年の銀の現物価格は、少なくとも一部は産業需要に裏付けられている。AIデータセンターの急速な整備やEVへの移行など、銀需要の大きい分野が需給を引き締めている。ただし、この構図が持続するかどうかは別問題だ。
商品は一般にインフレヘッジとされるが、実質利回りの上昇やドル高が逆風となる場合がある。金とは違って中央銀行という安定的な買い手を欠く銀は下支え要因に乏しく、投資家の熱意が冷める局面では急反落しやすい。
銀は1月30日、日中ベースとしては過去最大となる36%の急落を記録し、上昇局面から急反転した。バンク・オブ・アメリカ(BofA)は2026年の銀の平均価格を75ドルと予想。生産抑制や太陽光パネルを含む産業需要が下支えになると指摘する一方、ETFからの資金流出拡大や鉱山供給の増加に加え、地政学的な逆風も価格の重荷となり得ると警告した。

それでも、足元の現物価格は、アナリストが想定していた水準を大きく上回っている。2025年10月時点のBofAの予想は、2026年末までに1オンス約65ドルに達する可能性があるというものだった。勢いが鈍化する中でも、銀がいかに急速に市場の期待水準を切り上げたかを浮き彫りにしている。
ETFで流動性を確保しよう
個人投資家にとって、銀を保有する最も簡便な手段はETFだ。現物の銀に裏付けられており、保管や安全確保の手間を省けるうえ、延べ棒やコインに比べて売買コストが低く、流動性にも優れる。その利便性の対価となるのが手数料だ。
ブルームバーグがまとめたデータによると、現在少なくとも18本のETFが銀への投資機会を提供している。ブラックロックの「iシェアーズ・シルバー・トラスト(ティッカー:SLV)」は銀を裏付けとする最大のETFで、資金流入の継続と価格上昇を背景に、過去1年で資産規模が倍増し、350億ドル超に達した。このETFの購入は、裏付けとなる銀資産の持ち分を保有することに相当する。
より強気の見方に賭けたい投資家にとっては、「プロシェアーズ・ウルトラ・シルバー(AGQ)」が選択肢となる。銀の値動きの2倍のパフォーマンスを目指すETFだ。ただ、レバレッジ型商品は一般に、資産の値動きに対して1日単位で売買を行うアクティブな投資家向けであり、長期では値動きとの連動性が崩れやすい点に留意が必要だ。
銀価格の上昇に賭けるもう一つの手段となるが、銀鉱山会社の株式だ。代表的なものとしては、「グローバルX・シルバー・マイナーズETF(SIL)」と「アンプリファイ・ジュニア・シルバー・マイナーズETF(SILJ)」がある。いずれもパッシブ運用で、それぞれ対象とする銀鉱山株指数に連動する。
現物保有の意味を理解しよう
金の強気派と同様に、銀の強気派もまた、法定通貨ではなく現物の地金こそが価値を保ち続けるとみている。延べ棒やコインを保有する習慣は、中国やインドなどアジアの文化にも深く根付いており、2025年には銀地金が売り切れる動きも見られた。
前出のノルテ氏は「理論的には、銀や金は投資というより価値の保存手段だ。状況が大きく悪化しても、手元には交換可能な現物資産が残る」と指摘。「ただ、金の方が投資対象としての市場や仕組みがより整っているため、価格変動ははるかに小さい」と語った。
銀はコインや延べ棒の形で流通するが、いずれも輸送や保管にコストがかかる。関税の可能性や供給の縮小も踏まえると、銀は金庫に保管するよりも装飾品としての方がましかもしれない。少なくとも、これほど価格変動が大きい局面では、ポートフォリオの中でも居場所を見つけにくい。
原題:A Buyer’s Guide to Silver: How Volatility Hit a Safe-Haven Asset(抜粋)
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