対米投資の重荷
日米首脳会談は、一定の成果があったとしても、重大なリスクが残されている。
会談における日本側の作戦は、議論の中心をイラン攻撃への協力ではなく、対米投資にシフトさせることだったと思う。
高市首相がイラン外交についてトランプ大統領に何を語ったかは非公開の部分が多いが、トランプ大統領の方は日本の対米投資第2弾に満足している。
対米投資の第1弾は360億ドル。今回の第2弾は、①小型モジュール型原子炉(SMR)の建設400億ドル、②天然ガス発電施設の建設330億ドル(2件)、と第1弾と併せて1,090億ドルになる。
全5,500億ドルのうち、これだけで20%を占める。トランプ大統領はご満悦だったに違いない。第1弾がガス火力発電所・原油輸出インフラだったことをみても、トランプ大統領の資源エネルギー好きを斟酌したものだという見方もできる。
しかし、案件の中には、SMRのようにまだ未開発のものがあり、投資案件の成果が見通しづらいものが目立つ。
また、話題を集めているのはアラスカ産原油を日本の備蓄に充てるという話である。この構想は、喫緊の備蓄手当てという話と、未開発のアラスカ産原油を先々に入手したいという別の時間軸の話が重なり合っている点が気になる。
現状、アラスカ産原油を日本にすぐに輸出する余地は乏しく、日本の備蓄分を賄うとしても相当に先の話である。
アラスカの開発は、自然破壊に反対する根強い意見がある。前のバイデン政権は、アラスカ資源開発を中止した経緯もある。地球温暖化が進む北極海を開発することへの抵抗や、先住民問題もある。日本がアラスカ産の原油を輸入することがコスト的に見合うかどうかの問題も大きい。
トランプ大統領が中間選挙に向けて、自分のための利益誘導に対米投資の約束を使っていることに、あまりに無警戒に乗ってしまうと、後から思わぬツケを支払わされる可能性はある。
日本の自動車産業も以前からEV事業で多額の対米投資を行ってきた。しかし、EV販売が伸びなくなり、さらに米国での補助が打ち切られると、この事業は思わぬ逆風にさらされた。
日本企業も巨大な減損処理を余儀なくされている。米国企業も同様に、EV事業では手痛い減損処理を余儀なくされていて、事業リスクの大きさを改めて認識させられている。
各種事業の投資採算などがまだ未定のうちは、「対米外交は大成功だった」とは諸手を挙げて評価できないと思う。