日本のエネルギー問題

今回のイラン攻撃は、日本経済が抱えている矛盾を表面化させた。
①原油の中東依存、
②電力の火力依存、
③代替エネルギーの手薄さ、などである。

また、④資源価格の高騰で円安が進み、それがエネルギー以外の輸入物価の上昇にも波及する。日本経済は欧米以上に原油高騰に脆弱だと考えられる。日経平均株価の下落幅が大きいことにもそれは表れている。

ガソリン補助金の再開は、当面の価格をレギュラーガソリン170円/リットルに据え置くことで、痛みを封印するものだ。

筆者は期限を区切って短期的に価格補助してもよいとは思うが、これは長期で続けてはいけない措置だと考える。それは、エネルギー消費を抑えて、エネルギー転換を進めていくという動機付けを弱めるものだからである。これは、痛み止めの副作用とも言える。

今のような危機時には、民意には正常性バイアスが働いてしまう。正常性バイアスとは、危機が起こっても、現状維持ができると思ってしまう心理バイアスである。

残念ながら、今の日本の民主主義はそうした心理バイアスに、ほとんど抵抗できなくなっている。IEAなどはすでに各国に原油消費の抑制を呼びかけている。

もしも、完全に痛みを封印すると、エネルギー転換は進みにくくなる。ガソリン補助金にはそうした副作用があることは要注意である。

今、問われているのはエネルギー安全保障だ。

高市首相の持論である経済安全保障には、こうしたエネルギー安全保障も含まれているはずだ。日本のエネルギー安全保障が今まで脆弱だったことについて、高市首相を責めるのは酷なところもある。

しかし、今後は、その反省として、原油輸入先を米国を含めて多様化し、原発再稼働を後押しする必要がある。

また、ガソリン支援は長く続けられないので、段階的に補助を引き下げて、節電・省エネと脱ガソリンに舵を切っていく必要がある。

今回の資源危機は、脱炭素化に向けた推進力にもなり得る。日本のエネルギー効率は徐々に低下しているが、これを加速して、資源輸入を減らすことが円安対策にもなる。

もちろん、物価高対策は日銀を中心に進め、そのときには高市首相のリフレの持論を封じる必要もある。そこは安倍元首相のように、リアリストであるかどうかが問われる。

(※情報提供、記事執筆:第一生命経済研究所 経済調査部 首席エコノミスト 熊野英生)