(ブルームバーグ):つい数日前まで、都内の一部では「ガソリン1リットル200円」を突破し、SNSにはその高値を嘆く投稿が相次いでいました。ただ、20日にガソリンスタンドの横を通りかかると、看板の数字は160円台に。政府が導入した緩和措置が、暮らしに束の間の安堵をもたらしています。
この平穏を維持するために、いま世界ではどれほどの代償が払われているのでしょうか。1週間のニュースから、五つを厳選してお届けします。
1. 乗り切った日米会談
ホワイトハウスで現地時間19日にあった日米首脳会談。トランプ米大統領は冒頭、イラン攻撃の事前通告がなかった理由を問われ、「真珠湾攻撃をなぜ知らせなかったのか」と軽口で返しました。
高市早苗首相は冷静に受け流します。自衛隊派遣を確約せず、代わりに総額730億ドル(約11.5兆円)規模の対米投融資2号案件を提示。日立製作所による次世代原子力発電(SMR)建設など、トランプ氏のエネルギー覇権に直結する協力を約束しました。同盟の亀裂を回避しつつ、着実に実利を積み上げた形です。
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2. 海図から消えるタンカー
イラン戦争の開始前に中東から日本に向けて出発した「最後の原油タンカー」が22日に到着します。日本の原油輸入を支えてきた船列は、ホルムズ海峡の封鎖によって海図から消えることになります。
海峡では行き場を失った船員たちが極限の恐怖にさらされています。「毎晩、耳をつんざく爆発音が響き、家族もパニックになっている」。ブルームバーグの取材に応じたインド人船員は、食料を節約し、レーダーのみに頼る過酷な現状を明かしました。私たちの日常を支える燃料は、いまや命懸けの物流網の先にあります。
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3. サウジ皇太子の恐怖とイランの計算
イラン戦争を当事者たちの視点から捉え直すと、全く別の危機が浮かび上がります。ブルームバーグが行った2つのインタビューから、その深層を読み解きます。
皇太子と定期的に対話する専門家によれば、中東のキーマン、サウジのMBS皇太子が今、最も恐れているのは宿敵の体制崩壊だといいます。隣国の無政府状態が自国への過激主義流入や泥沼の内戦を招くことを懸念し、トランプ氏に対し「イランの壊滅は望まない」と密かに説得を続けています。
イランはなぜ降伏しないのか。 テヘラン出身のバリ・ナスル教授は、トランプ氏の「短期決戦」という思惑は外れたと指摘します。空爆で体制不満はあっても、国そのものが攻撃されたことで国民は生存のために結束。イランは、米国が痛みに耐えきれなくなるまで持久戦を続ける構えだと読み解きます。
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4. 「有事の円買い」いまや昔
かつてのマーケットの鉄則だった「安全資産としての有事の円買い」は、今回の危機では崩壊しています。円は対ドルで159円台後半まで下落。非資源国である日本が直面する「原油高=円安」という構造的なもろさがむき出しになっています。
アジア諸国では、燃料不足がレストランから工場までを直撃。投資家は今、リスク回避の円買いよりも、エネルギー自給国であるドルの強さを選んでいます。
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5. BTS、4年ぶりの復活
殺伐としたニュースが続くなか、世界中を紫色の歓喜が包んでいます。紫はBTSと世界中のファンが「最後まで信じ合おう」と誓った絆の象徴。4年ぶりに完全体で復活した彼らは21日、ソウルの光化門(クァンファムン)広場で無料公演を開催します。一夜だけで約270億円の経済効果が見込まれ、総額は3500億円規模に達する可能性もあります。
独占インタビューに対し、リーダーのRMは「人生は泳ぐようなもので、これからも泳ぎ続けたい」と語りました。今回のステージで彼らが選んだのは、自身のアイデンティティである韓国の伝統文化を前面に出した構成。等身大のメッセージが、多くの共感を集めています。
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今週の動画
ホルムズ海峡の封鎖や湾岸諸国での生産減少で原油価格が高騰するなか、石油の未来はどう描かれるのか。アジア経済へのダメージやトランプ政権が抱える政治的リスクを詳しく解説します。

東京では19日、平年より5日早く桜の開花が発表されました。朝晩にはまだ冬の名残がありますが、春の陽気も混じり始めています。穏やかな週末をお過ごしください。
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