(ブルームバーグ):人工知能(AI)半導体で圧倒的シェアを占める米エヌビディアのジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)は、徹底的に説明するタイプの人物だ。聴衆の理解を深めるのが自らの役割だと考えており、相手が納得してうなずいていないと感じれば、同じ主張を何度でも繰り返す。
その姿勢は、米カリフォルニア州サンノゼで開催された同社最大の年次カンファレンス「GTC」での基調講演で際立った。フアン氏は約2時間半にわたり講演、さらに複数のパネルや質疑応答にも登壇し、持論を展開した。
講演では、恒例のオヤジギャグや教授のような講義に加え、時折いら立ちを見せる場面も織り交ぜた。フランス人の発音をからかう一幕や、自身のスライドのグラフが読みづらいことを認める発言もあった。
また、新たなデータセンター製品群から1兆ドル(約159兆円)超の売上高を生み出すとの巨額目標も提示し、中国市場への復帰が進展していることも示唆した。
しかし、こうした発言にもかかわらず、聴衆を沸かせることはできなかった。少なくとも株価の反応を見る限り、投資家は冷静だった。ウォール街は新たな売上高目標や中国を巡る進展をおおむね受け流し、より詳細な説明を求めた。エヌビディアの株価は、4日間のイベント期間中に約1%下落した。
フアン氏は一部のアナリストや投資家に意見をぶつける場面もあった。自らの発言が過度に細かく分析されていると不満を示し、自身を米連邦準備制度理事会(FRB)当局者になぞらえた。
「当社の発言を細かく切り刻んで分析しないでほしい」と述べ、「われわれは今やFRBのような存在だ。『near(近い)と言ったのかalmost(ほぼ)と言ったのか、それは何を意味するのかと詮索される」と語った。急増する受注と出荷に同社のサプライチェーンがどう対応するのかとの質問に答えた。
実際には、エヌビディアが世界経済に与える影響の大きさを踏まえると、フアン氏はFRB議長以上の重要性を持っている可能性がある。同社はAIインフラに投じられる数千億ドル規模の投資の中核となる機器市場を支配している。そのため、同氏の発言は極めて大きな意味を持つ。
正式な役職ではないものの、フアン氏はAI業界の事実上のリーダーであり、広報と技術の両面を担う存在となっている。
そうした立場を暗に認めるかのように、フアン氏は業界の経済性について多くの時間を割いた。巨額のAI投資がなぜ必要で、どのように回収されるのか説明した。
結論として同氏は、AIシステムはコンピューターの数が増えるほど収益も増える段階に達していると強調した。つまり、数千億ドル規模の投資も、生み出される収益によって十分に正当化されるという考えだ。
GTC参加者の熱気からは、この考えに共感する人が多いことがうかがえた。展示会場には自動運転車や医療ロボットなどが並び、多くの来場者で混雑した。サーバー機器やネットワーク装置と一緒に写真撮影をする人々の列も見られた。参加者は3万人を超え、会場はどこも満員だった。
もっとも、こうした熱狂にもかかわらず、AIの革新性や衝撃を表現するのは次第に難しくなっている。米OpenAIの「ChatGPT」登場から3年以上が経過し、期待値はかつてないほど高まっている。人々はAIが日常生活にどのような変化をもたらしているのか、より具体的な成果を求めている。
ソフトウエア開発の分野では、いわゆる「バイブコーディング(AIに話し言葉で指示するプログラミング手法)」の時代が到来し、大きな変化が起きている。しかし医療や輸送、産業製造、通信といった分野への影響は依然として明確ではない。
カンファレンス最終日になっても、フアン氏は精力的に自説を展開し続けた。ポッドキャスト番組「All-In」に出演した際、ウォール街の予測が自身のビジョンを十分に反映していない理由を問われると、こう答えた。
「彼らはAIの規模と広がりをまだ理解していないのだ」と。
原題:Nvidia CEO Finds It Harder to Wow His Audience: Tech In Depth(抜粋)
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