(ブルームバーグ):欧州連合(EU)はエネルギー価格高止まりの長期化に備えている。イランがカタールの重要なガスプラントを損傷させたことで、供給不足が数年にも及ぶ可能性が生じている。
19日にブリュッセルで開催されたEU首脳会議では、悪化する経済情勢への不安が表明され、米国・イスラエルとイランの戦争でエネルギー施設への攻撃に「停止」を求める声が上がった。事情に詳しい関係者によると、会議の席上でイタリアのメローニ首相は、エネルギーの状況は深刻だと警告した。
キプロスのフリストドゥリディス大統領は20日、ブルームバーグ・テレビジョンとのインタビューで、「この状況が続けば、すべての国が悪影響を被る」と発言。「緊張を緩和しなければ、事態がどう展開するかわからない。そして間違いなく、経済のあらゆる側面で深刻な影響が生じるだろう」と語った。
19日に欧州のガス価格は急騰し、3年ぶりの高値を付けた。欧州中央銀行(ECB)は、供給混乱が長期化する場合、ユーロ圏のインフレ率は来年1-3月(第1四半期)に6.3%に達し、短期的な景気後退(リセッション)に陥るとの見方を示した。
EUの行政執行機関である欧州委員会は、価格高騰で既に過去2週間で欧州のエネルギー費用は70億ユーロ(約1兆2800億円)増加したと指摘した。
EUは低成長や米国および中国との問題を抱えた関係に対応を始めた矢先で、こうした厳しい見通しはタイミング的に最悪だった。EUの計画は全て、エネルギー価格を引き下げることを前提としているが、イラン戦争による価格の高騰が起きる前の段階でも、欧州のエネルギー価格は他地域の数倍に上っていた。
19日の展開は、欧州がいかに世界市場の影響を受けやすいか、短期間でこうした事態に対処するための手段がいかに乏しいかを浮き彫りにした。
EU首脳会議に合流する前、ユーロ圏財務相会合(ユーログループ)のピエラカキス議長は「これは極めて憂慮すべき状況だ」と記者団に述べ、「我々はあらゆるシナリオ、良いものも悪いものも、徹底的に議論している」と説明した。

EU首脳会議で加盟国首脳らは欧州委員会に対し、化石燃料の輸入価格高騰に対処するための、的を絞った一時的な措置を早急に提示するよう求めた。
しかし、予想される措置には欠点もある。例えば、加盟国は電気料金への課税を引き下げるという選択肢もあるが、すでに巨額の財政赤字に苦しんでいる国々の歳入にとって、大きな打撃になり得る。
イタリアやポーランドなど10カ国は、EUの排出量取引制度(EU-ETS)の見直しを求めている。温暖化ガス排出によるコストを引き下げて、産業界の負担を軽くする狙いだが、EUにとって貴重な収入が犠牲になるほか、長期的なエネルギー価格低下の基盤になると当局者が主張する再生可能エネルギーへの投資意欲もそがれる。
キプロスのフリストドゥリディス大統領は、エネルギー価格を抑制するための措置は「個別に調整され、対象を絞り込み、一時的」である必要があると論じた。
最終的な結論として加盟国首脳は、EU-ETSの広範な見直しを提案するよう欧州委員会に要請した。EU-ETSは域内の電力会社や製造業者が所有する約1万の施設に対し、排出規制を課している。
ドイツのメルツ首相は「我々はETSそのものを疑問視しているわけではない」とし、欧州委への要請は「単なる調整に過ぎず、本質や根本の変更ではない」と説明した。
原題:EU Leaders Face Multi-Year Energy Squeeze After Qatar Attack (1)(抜粋)
--取材協力:Paul Tugwell、Sotiris Nikas、Jorge Valero、Samy Adghirni、Michael Nienaber、Daniel Basteiro、Max Ramsay、Katharina Rosskopf.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
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