非鉄金属大手のJX金属の株価は新規株式公開(IPO)から1年で4倍となり、時価総額は元親会社に並ぶ水準まで拡大した。同社上場の成功体験は、日本の資本市場で事業の分離や独立などの動きを今後加速させる可能性がある。

25年3月19日の東証上場セレモニー

ブルームバーグのデータによると、2025年にあった公募と売り出しの合計金額が10億ドル(約1600億円)以上のIPO銘柄のうち、JX金属株の上場後の上昇率は最大だ。人工知能(AI)ブームの中で半導体関連製品の需要拡大期待が株価を押し上げている。18日終値時点の時価総額は3兆7000億円と、親会社だったENEOSホールディングスの3兆9000億円にほぼ並ぶ。

石油元売りのエネオスHDの100%子会社だったJX金属は、昨年3月19日に東京証券取引所プライム市場に上場。IPO時にエネオスHDが約6割の持ち分を売却した。JX金属が長期戦略で半導体や情報通信材料に軸足を移す中、エネオス本体との事業シナジーが薄れたこともあり、子会社分離に動いた経緯がある。

取引所や国内外の投資家から資本の効率性、ガバナンス(統治)の向上に対する監視の目が鋭くなり、上場企業が非中核事業や資産の売却に動くケースが増えている。特に事業が多岐にわたる企業は、株式価値が割り引いて評価されるコングロマリット・ディスカウントの状況になりやすく、JX金属の上場は同社の企業価値が顕在化され、事業の分離・独立の好例となった。

IPO時からJX金属株に投資するアバディーン・ジャパンの荒川久志取締役兼運用部長は「既存事業には引き続き投資し、シナジーがあまりないところはカーブアウトやスピンオフする流れは歓迎すべきことだ」と指摘。事業ポートフォリオの整理に伴う分離は今後増えていくと予想し、一つの事業単体で資金調達の需要が強い場合には活用されやすいとの認識を示した。

JX金属は半導体の製造に欠かせない材料のスパッタリングターゲットを製造し、世界シェアは約6割。決算説明資料によると、台湾積体電路製造(TSMC)やインテル、SKハイニックスなど世界の主要半導体メーカーが顧客だ。

事業の切り離しでは、ゲームなどエンターテインメント事業や画像センサー、AV機器を手がけるソニーグループの例も挙げられる。親会社が一部株式を保有し続け、部分的に独立させる「パーシャルスピンオフ」の制度を使い金融の完全子会社だったソニーフィナンシャルグループを上場させた。総合化学のレゾナック・ホールディングスも石油化学事業の分離を検討している。

投資家の間ではソニーGのほか、パナソニックホールディングスや三菱電機など多数の事業を抱える大手電機メーカーがスピンオフに踏み切る可能性を予測する向きは多い。実際、三菱電機は自動車機器事業の売却も選択肢に大規模な構造改革を進めている最中だ。

こうした流れは、親子上場解消の動きとも密接に関連している。資本効率やガバナンスの向上に加え、これまで不十分と問題視されてきた少数株主保護の在り方についても東証などから厳しく問われていることが背景だ。

三菱UFJアセットマネジメントの友利啓明エグゼクティブファンドマネジャーは、JX金属のIPOを「事業ポートフォリオ経営の高度化に伴う事象だ」と評価し、「日本の経営がガバナンスを含め前進している証左」と受け止めている。

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