(ブルームバーグ):日本政府は昨年、米国から日本に課される関税を15%とする代わりに、5500億ドル(約87兆円)を米国に投資することで合意した。高市早苗首相が19日にトランプ大統領との首脳会談に臨むにあたり、この大規模投資の行方が焦点となる。
日米両政府は2月、対米投資の「1号案件」を発表。ワシントンで行われる日米首脳会談を前に、二国間関係の強化を図っている。
また韓国でも3月中旬、3500億ドルの投資コミットメントを実行するのに必要な法案が国会で承認された。日本と韓国が米国に約束した投資額は、総額で9000億ドルに上る。
日韓両国は、米国に対して大幅な貿易黒字を計上しており、トランプ氏の不満の種となってきた。安全保障面で米国に依存する両国は、対米投資の約束にこれからどう向き合っていくのか-。現状を改めて整理する。
日本は何を約束したのか
日本は、出資に加えて融資や融資保証などの形で、最大5500億ドルの政府支援資金を米国のプロジェクトに提供することで合意した。赤沢亮正経済産業相は昨年、実際の出資は5500億ドルの1-2%にとどまるとの見通しを示していた。
政府系の国際協力銀行(JBIC)と日本貿易保険(NEXI)などが資金手当てで中心的な役割を担う見通しで、民間部門の参加も見込まれる。
プロジェクトの選定は、ラトニック米商務長官が主導する投資委員会の勧告に基づいて、トランプ氏が自ら決定する仕組みだ。その後に、日本側の意見が反映される。日本は採算性に欠ける、あるいはリスクが過大と判断した場合には資金拠出を拒否できる。
投資は、トランプ氏の大統領任期が終わる2029年1月19日までに実施される。当初の条件では、投資で得られる利益の最終的な分配は米国が9割、日本が1割とされている。
両国が昨年9月に署名した覚書によると、トランプ氏が承認した投資プロジェクトに対して45日以内に日本が資金を提供しない場合、米国は関税を再び引き上げる権利を持つ。米国は、日本が合意を誠実に履行する限り関税を引き上げる意図はないとしている。
日本はどの米国プロジェクトに投資するのか
日本からの「1号案件」では、米国の石油やガス、重要鉱物プロジェクトに約360億ドル規模の投資を計画している。中でも最大の案件は、オハイオ州の天然ガス施設に向けた最大330億ドルで、トランプ氏はこれを「史上最大」と表現した。
日米首脳会談を前に、赤沢経産相とラトニック長官は第2弾案件について協議を進めている。資金構成の詳細はなお不透明だが、日本メディアは、次世代原子炉が有力候補の一つだと報じている。
韓国は何を約束したのか
韓国は、3500億ドルの投資をすることで10月29日に合意した。
この合意では、米国への投資は年間200億ドルに制限している。韓国銀行(中央銀行)はこれについて、通貨を不安定化させることなく対応できる限度だとしている。韓国が20年以内に元本を回収できない場合、利益配分の見直しを可能とする条項も含まれている。
さらに、キャッシュフローが保証される採算性のある案件のみを対象とする条項も盛り込まれている。これは交渉過程で韓国政府が求めた安全策だ。
韓国の国会は3月12日、投資プログラムの実施を可能にする法案を承認した。トランプ氏は1月、法案が停滞すれば関税を最大25%に引き上げる可能性があると警告していた。
韓国はどの米国プロジェクトに投資するのか
韓国は1500億ドルを米国の造船業に投資し、残る2000億ドルは日米合意に類似した投資枠組みに充てると説明している。
具潤哲企画財政相は、ガスや原子力を含むエネルギー分野での協力案件について米国と協議していると述べた。これらの分野は両国にとって相互利益となる取り組みの機会を提供するとしている。
これらの投資は日韓経済に負担となるのか
日本の場合、約束した投資額は2025年末時点の国内総生産(GDP)の約15%に相当する。これは、外貨準備高の約半分に当たる。
2025年10月に就任した高市首相は、国内投資の拡大を経済政策の柱に据えている。エコノミストは、対外投資の拡大により企業が米国での生産を拡大し、国内投資が圧迫されることで、国内の産業活動が弱まる可能性があると指摘する。
韓国にとっての相対的負担はさらに重い。約束した投資額は、2024年時点のGDPの約20%、外貨準備高の約80%に相当する。
エコノミストは、年間投資上限や安全条項が財政や為替のリスクを抑制し得る措置だと評価する。一方で、3500億ドルという韓国史上で最大級の投資規模が、長期的にソブリン格付けや資本流出、投資余力に与える影響への懸念は残る。
関税を巡る司法判断はこれらの合意に影響するか
そもそも日韓による対米投資は、トランプ氏が打ち出した相互関税を引き下げるための交渉の結果として、合意されたものだ。
しかし、2月20日の米連邦最高裁判所の判断で、この関税枠組みの大部分が無効とされた。これにより、対米投資の出発点だった関税政策の法的根拠に疑問が生じている。
米政府は現在、不公正な貿易慣行を行っていると見なす国に関税を課すため、1974年通商法301条などの代替手段を検討している。トランプ氏は、日本や韓国を含む対米黒字の大きい国々を対象に新たな調査を開始した。
一方で別の法律に基づき、世界の輸入品に対して一時的に10%の関税を課しており、これを15%に引き上げる可能性も示唆している。
韓国の具企画財政相は、現在の対米関税の枠組みは大きく変わらないとの見方を示している。不利な見直しをしないよう訴えるとともに、301条措置の可能性について米当局との協議を続けると述べた。
日本もまた、自動車を含む主要輸出品に対する関税を15%に抑えた昨年の合意より、不利な扱いを受けないことを確実にしたい考えだ。
原題:How Japan and South Korea Plan to Invest $900 Billion in US(抜粋)
もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
©2026 Bloomberg L.P.