(ブルームバーグ):米国とイスラエルによる対イラン攻撃は、開始から3週目に入った。事態打開のカギを握るトランプ米大統領に対し、戦争終結を求める圧力が強まりつつある。
しかし、肝心のトランプ氏の説明は二転三転している。
なぜ戦争に踏み切ったのか-。それが明確でないため、同盟国も敵対国も、トランプ氏がいつ戦闘終結に向けた判断をするのかが見通せない。仮に終結を望んだとしても、イラン側にはそれに応じる姿勢がほとんど見られない。トランプ氏は当初、戦争はまもなく終わると宣言していたが、その後は欧州や湾岸の同盟国に支援を求める姿勢に転じた。だが各国は消極的で、ロシアなどはむしろ恩恵を受けている。
状況は、主要7カ国(G7)首脳との最近の電話会談にも表れていた。事情に詳しい関係者によると、欧州首脳らはトランプ氏に対し戦争の最終目標について繰り返し説明を求めた。トランプ氏は電話会談では戦争の目標を議論することはできないと述べつつ、いくつかの目標を念頭に置いており、紛争を早期に終わらせたいと語ったという。
この48時間で、かつては強固だった同盟国の間の混乱はさらに深まった。
トランプ氏はFOXニュースのインタビューで、戦争が終わるのは自分が「骨の髄で」それを感じた時だと述べている。こうした発言に、政府関係者の間では困惑と衝撃が広がっている。
世界の石油の約5分の1と大量の液化天然ガス(LNG)が通過するホルムズ海峡は、事実上の封鎖状態に近いが、航行を再開するための限られた資源を振り向けようとする国は見当たらない。一方でインドやトルコなど各国は、ホルムズ海峡を通過する自国船舶の安全確保を目指し、イランとの非公式ルートを模索している。
米国と足並みを乱したくない日本でさえ、船舶護衛に向けた自衛隊の派遣について「非常にハードルが高い」と述べている。これは丁寧な形での「ノー」を意味する。
米政府は今週にも、複数の国がホルムズ海峡の航路で船舶を護衛する連合体の結成に同意したと発表する計画だと、米紙ウォール・ストリート・ジャーナルが報じた。ただし、その作戦が戦闘中に開始されるのか、あるいは戦闘後になるのかは不透明だという。
側近からも、戦争終結求める声
イランは、中東各地の標的に向けてミサイルやドローン攻撃を日々続けている。イランが海峡の航行を締め付けていることから原油価格は1バレル100ドルを超え、世界経済を揺るがし、トランプ氏の国内政治にも影響を及ぼしている。トランプ氏の側近の1人でさえ、勝利宣言を出して戦争を終えるべきだと公然と呼びかけた。
欧州当局者によると、最近の米軍の軍事行動のエスカレーションは、米軍作戦のピークを示している可能性がある。当局者らは、攻撃によってイランの軍事能力を破壊したとトランプ氏が主張している点については、誇張だとみている。ただ、その発言は米国が作戦完了を宣言するための布石になり得るとも考えている。
「軍事作戦を迅速に終える強い動機は、すべての側にある」と、かつてトランプ政権で国家安全保障副補佐官を務め、現在はヘリテージ財団に所属するビクトリア・コーツ氏は述べた。交渉条件を決める主導権を握っているのはトランプ氏だとも指摘した。
一方、湾岸地域の政府高官は、原油価格の上昇こそが、最終的にトランプ氏に戦闘停止と勝利宣言を迫ることになると警告する。その場合、湾岸の同盟国は残されたイランの脅威に対処することを強いられる。
現時点でトランプ氏は軍事作戦を続けると誓っており、まだ合意の準備はできていないと主張している。むしろイランが合意を望んでいるという立場だ。イランでは被害が拡大しているが、米国よりも長期戦に耐えることができるとの確信も持っている。
週末にトランプ氏は方針を大きく転換し、ホルムズ海峡の再開に向けて各国の協力を呼びかけた。しかし各国では、その可能性は疑問視されるか非現実的だとみられている。フロリダ州のゴルフ場からトランプ氏はソーシャルメディアで相反するメッセージを連投した。自ら勝利したと繰り返してきた戦争への支援を求め、封鎖されていないと主張してきたホルムズ海峡の通航に向けて協力を求める内容だ。14日には、イランが合意を望んでいると主張したが、イラン側はこれを否定した。
迅速な軍事勝利と経済回復を強調して懸念を退けようとするトランプ氏の試みは、限界が見え始めている。これまでに少なくとも米国人13人が死亡し、原油価格の急騰を抑えるための対応に追われている。価格上昇は中間選挙を控える共和党にとっても打撃となる。トランプ政権による原油市場安定化の取り組みは、いまだ持続的な価格下落にはつながっていない。
週末、ホワイトハウスはこの軍事作戦が4-6週間続く計画であると改めて説明しつつ、予定より早いペースで進んでいると述べた。国家経済会議(NEC)のハセット委員長は米CBSの番組で「現在の状況が終わり次第、世界経済には大きなプラスのショックが起きると予想している」と述べた。
トランプ氏の支持基盤にも、緊張の兆しが見えている。トランプ政権の人工知能(AI)責任者デービッド・サックス氏は13日公開のポッドキャストで、「われわれは出口を探るべきだ」との意見に同意すると述べ、イラン軍はすでに弱体化していると指摘した。「今こそ勝利を宣言して撤退する好機だ。市場も明らかにそれを望んでいる」と語り、紛争がさらにエスカレートする可能性を警告した。
また、外国への軍事介入に懐疑的なバンス副大統領は、この軍事行動を全面的に支持する姿勢も公に批判する姿勢も示していない。
それでもトランプ氏の盟友であるグラム上院議員は、イランの生命線とも呼ばれるカーグ島の一部を爆撃する決定を称賛。SNS投稿の最後には、米海兵隊のモットーを引用した。これは、米軍が近く地上部隊を投入する可能性を示すサインとも受け止められる。政府関係者によると、米国は海兵遠征部隊を地域に派遣しているという。
米軍はカーグ島の軍事目標を攻撃したが、イラン輸出の大半を担う石油施設には被害を与えていない。
国際エネルギー機関(IEA)は、この戦争がすでに世界の石油市場に史上最大級の供給混乱を引き起こしている可能性があると警告している。米国のガソリン価格は戦争開始以降、1ガロン当たり約65セント上昇した。世論調査では米国民の支持も限定的で、意見は分裂するか、むしろ戦争反対に傾く傾向が示されている。
「想定よりも長引いている」と専門家
「トランプ氏はこの戦争が非常に短期間で終わることを期待していた」と、イランの専門家であるジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院(SAIS)のバリ・ナスル教授は語る。「だが今や、この戦争は彼のコントロールを離れてしまった。想定より長引き、混乱も大きく、代償も伴っている」と述べた。
湾岸諸国の当局者の一部は、米国の計画についてほとんど情報を得られていないとし、戦争が十分な協議なしに開始されたことに不満を示している。投資の約束などを通じてトランプ政権との関係強化を図ってきたにもかかわらず、戦争を左右する決定に対して影響力がいかに小さいかを浮き彫りにしたという。
「湾岸諸国が望んでいるのは平常の状態だ。国家の変革計画に再び集中するための平和と安定だ」と、クウェート大学のバデル・アルサイフ助教は言う。「そのためには、西側パートナーとの安全保障の枠組みを大きく見直す必要があり、イランとの対話も必要になる」と指摘した。
戦争終結が難しい理由は単純だ。米国とイランが、勝利を全く異なる基準で測っているためだ。
米国がイランの軍事目標への攻撃で成果を挙げている一方、テヘランには反撃の手段が残されている。通常戦力の多くが損傷しても、代理勢力による攻撃や船舶への嫌がらせ、地域のエネルギー供給の混乱を通じて代償を強いることができる。
つまり、イランは軍事的に米国を打ち負かす必要はない。戦争を生き残るだけでも成功と主張できる可能性がある。
「誰がより大きな痛みに耐えられるか。それを彼ら(イラン)は計算している」とナスル氏は述べた。「米国とイスラエルは短距離走では速いが、長距離走者ではないと考えているのだ」という。
イラン当局はまた、迅速な停戦を求めていないことも明確にしている。指導部はこの戦争を、米国とイスラエルに対する抑止力を回復し、イランが再び攻撃されないようにする機会だと位置付けている。
最高指導者モジタバ師は先週、イランの目標について「敵に自らの行動を後悔させるような効果的な防衛」を続けることだと声明で述べた。さらに「われわれは賠償を求める」とも表明した。
「比較的単純な手段によって、世界の原油価格を押し上げることができる。その点で、イランはすでにルビコン川(後戻りできない一線)を越えたと考えているかもしれない」と、英国の元駐イラン大使サイモン・ガス氏は指摘した。
それでもオマーン、サウジアラビア、トルコなどは緊張緩和とホルムズ海峡の航行安定化を目指すルートを模索しており、欧州各国もイランの仲介者との非公式チャンネル維持を試みていると関係者は述べた。
ただし、こうした取り組みはまだ初期段階にとどまる。欧州当局者によると、イランがこれまでに示している要求は主に「戦時被害への補償」と「将来の攻撃を防ぐ保証」の二つだという。どちらも米国にとっては、受け入れがたいものである可能性が高い。
今後、戦場が拡大する可能性もある。イスラエルはレバノンでの作戦を拡大し、イラクの民兵組織は米国などへの攻撃を新たな段階に移す兆候を示しており、外交的な打開の余地は依然として不安定だ。
また、トランプ氏が目標を達成したと判断するか、あるいは痛みに耐えられなくなった場合、交渉なしで戦闘が終わる可能性もある。
「大統領はイランの軍事力と海軍力の大半を破壊し、イランの核開発計画を数年後退させた」とトランプ政権でイラン担当特別代表を務めたエリオット・エイブラムズ氏は述べ、「大統領は望めばいつでも戦闘を止め、勝利を宣言することができる」との見方を示した。
原題:Trump Leaves Allies and Foes Guessing on Endgame for Iran (1)(抜粋)
--取材協力:Patrick Sykes、Josh Wingrove、Jeff Mason、Kevin Whitelaw、Selcan Hacaoglu、Courtney McBride、Alex Wickham.
もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
©2026 Bloomberg L.P.