アジアの新興国通貨はイラン戦争の影響で圧力を受けてきたが、中央銀行が支援を強化し始めていることから、最悪期はまもなく過ぎ去る可能性がある。各国中銀は、こうした事態に備えて外貨準備を積み増してきた。

インドネシアとインド、台湾の政策当局はこの2週間、いずれも外国為替市場に介入した。中国人民銀行(中銀)も毎営業日発表する人民元の中心レートをより強めに設定することで人民元を支える姿勢を示した。さらに複数の当局が口先介入を行い、為替の変動を抑えようとしている。

ある意味で、域内の中銀は数年前からこうした事態への備えを進めてきた。日本を含めたブルームバーグの試算によると、各国は約8兆ドル(約1275兆円)の外貨準備を積み上げており、2024年末から約6000億ドル増加している。

これらの資金は、イラン戦争によってアジア通貨に圧力がかかる中で活用されている。背景には、安全資産としてのドルの復活や原油価格の急騰による地域経済への影響、そして世界経済減速のリスクがある。

ウィリアム・ブレア・インベストメント・マネジメントのファンドマネジャー、クリフォード・ラウ氏(シンガポール在勤)は、「幾つかのアジア通貨は下落したが、市場が無秩序な動きを見せれば当局が対応する可能性が高く、下振れリスクは現在ではより限定的になっているとみている」と述べた。

同氏はまた、「アジアの各中銀は過去10年で十分な外貨準備を積み上げており、為替の変動を管理し対外ポジションを守るための大きな緩衝材となっている」と語った。

アジア通貨は、2月28日にイラン戦争が始まった後の取引開始とともに急落し、世界のリスク資産売りと歩調を合わせた。危機発生以降、韓国ウォンは2009年以来の安値に下落し、インドネシア・ルピアとインド・ルピーはいずれも過去最安値を記録した。

介入

地域の中銀は迅速に対応。インドネシア銀行は3月4日、ルピアを下支えするため、国内外市場の双方で「断固として一貫」した介入を行うと表明した。ルピアは9日に過去最安値を付けたものの、アナリストはインドネシア中銀が1ドル=1万7000ルピアの水準を防衛すると予想している。

インド準備銀行も、ルピーの下落を抑えるためオフショア市場とオンショア市場の双方で介入した。インド中銀は6日、通貨を支えるため1兆ルピー(約1兆7200億円)の国債を購入すると発表した。

台湾の中銀も、資金流出の拡大を受けて今月市場に介入したと、同中銀の外為部門トップが5日に明らかにした。

人民銀は人民元の中心レートを過去最長となる15週連続で引き上げた。これらの対応により通貨下落はある程度抑えられ、ブルームバーグ・アジア・ドル指数の下落率は先週0.5%にとどまり、前週の半分以下となった。

アバディーンの投資マネジャー、フェサ・ウィバワ氏(シンガポール在勤)は「大半のアジア中銀は依然として十分な外貨準備を保有しており、為替のボラティリティーを管理できると考えている」と述べる一方で、「地政学的緊張が長引くほど、介入の限界費用は必然的に上昇する」とも指摘した。

原題:Currency Bears Beware, Asia’s Central Banks Are Drawing a Line(抜粋)

--取材協力:Ditas B Lopez、Prima Wirayani、Subhadip Sircar.

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