(ブルームバーグ):米銀最大手JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)は過去数カ月にわたり、信用サイクルはいずれ悪化すると警告してきた。そして今、自身が率いる銀行が投資家の関心を試そうとしている。
JPモルガンは、発行体によるジャンク(投機的格付け)債やレバレッジドローンの販売を支援する準備を進めている。米ゲーム大手エレクトロニック・アーツ(EA)と米包装関連会社シールド・エアーの買収資金を調達する案件が今週開始される見通しだ。
さらに、米ソフトウエア企業クアルトリクス・インターナショナルに関連する取引を含め、企業の合併・買収(M&A)に伴う案件も複数進行している。これらの案件だけでも総額300億ドル(約4兆7900億円)超に上る。
ダイモン氏これまで、一部の企業は収益性を高めようと「愚かなこと」をしており、市場で「ゴキブリ」を1匹見つければ、恐らく他にもいると発言。一連の案件を手掛けるJPモルガンの担当者は当然こうした発言を耳にしている。
このほか、米国・イスラエルとイランの戦争が原油相場を押し上げ、インフレ高進の懸念を強めている状況も同行担当者らは目の当たりにしている。一方、人工知能(AI)普及の影響が懸念されるソフトウエアセクターのバリュエーションは押し下げられている。
それでもJPモルガンのバンカーは、投資家がこうしたリスクにとらわれず、ニュースに過度に動揺することもなく、同行の案件に価値を見いだすと自信を持って市場に臨もうとしている。
オークツリー・キャピタル・マネジメントのマネージングディレクター兼共同ポートフォリオマネジャー、ウェイン・ダール氏は、市場の変動が大きい局面で想定より低い価格で債券やローンを取得できる機会が生じるのであれば、新規案件に積極的になる投資家もいると話す。
「大型案件では、ディスカウントで提供されることもあり、それが投資家にとって好機につながる可能性もしばしばある」とダール氏は述べた。
EAの場合、投資家は額面1ドル当たり98.5-99セントのディスカウントで一部のローン債権を購入する機会が見込まれる。市場環境が悪化すれば、引受金融機関は買い手を引き付けるため、価格をさらに引き下げる必要に迫られる可能性がある。
このほか、イーロン・マスク氏率いる2社が約175億ドルを債務投資家に返済しており、投資家には新規案件に振り向ける資金が増えることになる。期限前償還が可能なコーラブル債や公開買い付け、満期を迎える証券により「これらの市場には常に資金が流入している」とダール氏は指摘した。
機関投資家の事情
JPモルガンはEA買収資金向け債券の販売を開始するのに先立ち、レバレッジド・ファイナンス分野の主要投資家をフロリダ州マイアミビーチに招き、EAのアンドリュー・ウィルソンCEOと直接面会する機会を設けた。
これらの投資家は、それぞれ5億ドル超の債券を購入すると見込まれている。ミッドオーシャン・パートナーズのポートフォリオマネジャー、マイケル・レビティン氏はこれについて、銀行団がその他の市場参加者に販売しなければならない額が減るだけでなく、大口投資家は規模の大きい新規案件を求めていることが分かると説明した。
レビティン氏は「機関投資家であれば、流動性があり規模を拡大できるエクスポージャーが必要だ」と話した。さらに、戦争が長期化してM&A市場の勢いが鈍れば、EAやシールド・エアー、クアルトリクス以外に、次の大型レバレッジド・バイアウト(LBO)がいつ実現するのか、債券やローンの買い手は見通せない状況にある。
もっとも、全ての案件が同等の評価を受けているわけではない。事情に詳しい複数の関係者によると、クアルトリクスの案件は、EAやシールド・エアーのケースと比べると投資家の引き合いが弱いという。
こうした取引をJPモルガンとともに引き受けた銀行は、まずEAとシールド・エアーの案件で市場の反応を試し、その後で他案件のシンジケーションに取り組む方針だと関係者は匿名を条件に語った。
一方、市場の不確実性はさらに高まる可能性がある。戦争がいつ終結するのかは不明で、紛争が長期化すればインフレを加速させ、個人消費を抑制する恐れがある。
現時点ではタイミングが重要だ。投資適格級の借り手は、相場が一時的に落ち着いた隙を突き、先週だけで過去最高に迫る1150億ドルの社債を発行した。銀行関係者にとって、これは投資家が取引に応じる姿勢を見せているうちに動く必要があることを示している。
TDセキュリティーズのグローバル債券資本市場責任者、クリストファー・ジェリー氏は「理想的な環境ではないかもしれないが、資金調達の確実性確保の方が重要だ」とし、「完璧さにこだわるあまり非常に良い機会を逃すべきではない」と述べた。
原題:JPMorgan Makes Bold Push to Offload Huge LBO Debt: Credit Weekly(抜粋)
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