(ブルームバーグ):ペルシャ湾に浮かぶ小さな島。カーグ島の軍事目標を米軍が空爆した。トランプ米大統領はソーシャルメディアへの投稿で、これを「中東史上で最も強力な爆撃作戦の一つ」と表現。石油インフラを攻撃しなかったのは「配慮からだ」としつつ、これを翻意する用意があると警告した。
海洋戦略センターのスティーブン・ウィルズ氏は、カーグ島はイランの石油輸出の約90%を処理できるよう整備されており、同島が占拠または破壊されれば「理論上、イランの石油輸出能力の大部分を奪いかねない。これがイランの生命線だ」と述べた。
カーグ島はなぜ重要なのか
イラン本土から約24キロメートルの沖合に位置するこの小さな島は、米石油大手のアモコが1960年代に建設して以来、石油輸出ターミナルとして機能してきた。1979年のイラン革命でイラン政府に接収された。
同島のターミナルは日量約150万バレルを扱っており、その規模は多くの石油輸出国機構(OPEC)加盟国の産油量を上回る。トレーダーだけでなく、各国政府もカーグ島の動向を注視している。操業における異変や、輸出量の急変があれば、直ちに世界のエネルギー価格に反映されかねない。
この島はイランにとって戦略的に極めて重要とみられており、攻撃で大きな被害があれば、イラン軍は直ちに報復に動く可能性が高い。
鍵を握る石油インフラとは
イラン本土の油田で生産された原油は、海底パイプラインを通ってこの島に送られ、貯蔵後、タンカーに積み込まれる。
島には最大3000万バレルを保管できる貯蔵タンクが点在し、その貯蔵量は米国の主要拠点であるオクラホマ州クッシングの約3分の1に相当する。8隻のタンカーが接岸できるほか、船舶間の積み替えによってさらに容量が増える。1日に600万バレル以上の原油を積み込むことが可能で、必要に応じて1000万バレルにまで拡大できる。
攻撃前の島の状況は
紛争開始前の時点で、イランはこのターミナルでの原油積み込みを増やしていた。戦闘が始まった後も積み込み作業を継続。可能な限り多くの原油を海上に送り出し、危険回避を図った可能性が高い。
これらの船舶が世界市場に到達するには、ホルムズ海峡を通過する必要がある。しかし2月28日に戦争が始まって以降、この海峡を通過する船舶は激減している。

攻撃によるリスクは
現時点でエネルギーインフラへの大きな被害は確認されていないものの、攻撃があれば原油市場の緊張を一段と高める。現時点でも生産に影響が生じ、ホルムズ海峡が事実上封鎖されている中で、原油価格はすでに40%余り急騰している。
カーグ島への空爆はイラン産原油の輸出を数週間から数カ月にわたり著しく寸断する。同国経済は戦争前から深刻な危機にあった。
カーグ島から輸出される石油の多くは中国向けだが、輸出が滞れば世界の原油価格がさらに跳ね上がり、米国を含む主要先進国でインフレを押し上げる恐れがある。中間選挙を控えたトランプ政権にとって、望ましくない状況だ。
さらにこの攻撃はイランの反撃対象を中東全域のエネルギーインフラに拡大させる可能性もある。革命防衛隊と関係のある組織が地元メディアに語ったとして、AFP通信が14日、報じたところによると、イランのエネルギー施設が攻撃された場合、同国軍は中東に所在する米国関連の石油目標を攻撃すると警告した。
原題:Why Kharg Island Attack Raises Stakes for Oil Markets: Explainer(抜粋)
--取材協力:Julian Lee.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
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