企業の合併・買収(M&A)が昨年急増した日本は今や、投資銀行や投資家にとって極めて優先度の高い市場だ。今年に入ってもM&A活動の勢いは続き、中東危機が続く中でも2026年はさらに上回る可能性がある。

先陣を切ったのはトヨタ自動車グループだ。アクティビスト(物言う株主)として知られる米投資ファンド、エリオット・インベストメント・マネジメントとの対立を経て、傘下の豊田自動織機を5兆9000億円で非公開化することで合意した。

さらに、ソフトバンクグループは対話型人工知能(AI)「ChatGPT」のOpenAIが実施した1100億ドル(約17兆5000億円)の資金調達に300億ドルを拠出することを約束した。

ブルームバーグが集計したデータによると、こうした大型案件が寄与し、日本の四半期ベースのディール総額は過去最大級となっている。

「日本は現在、世界で最も刺激的かつ興味深い市場の一つであり、その状況は今後も続くだろう」とシティグループでアジア太平洋投資銀行部門の共同責任者を務めるヤン・メッツガー氏は述べた。

コーポレートガバナンス(企業統治)と株主還元の改善に向けた改革が、国内でのM&Aを後押ししている。

一方で、日本企業も海外での機会を模索している。プライベートエクイティー(PE、未公開株)投資会社主導の取引やアクティビズムが増加しているほか、事業の切り出し(カーブアウト)や非公開化案件も増えている。

転換期

法律事務所リンクレーターズのパートナーで保険部門グローバル共同責任者を務めるトレーシー・ウィリスキー氏によれば、「日本企業は変革の途上にあり、上場・非上場を問わず活発なインバウンドとアウトバウンドのM&A市場は、その変化を示す有力な証拠」だ。

東京を拠点とする同氏は「こうした要因が重なり合い、10年前には想像もできなかった取引が実現しつつある。日本のM&Aにとって真に転換的な年となる条件が整っている」と語った。

米アクティビストファンドのサファイアテラ・キャピタルで最高投資責任者(CIO)を務める細水政和氏はトヨタをはじめとし創業家や企業グループによる買収も増加していると指摘。以前は買い手が価格決定力を握っていたが、アクティビストの声により価格の見直しが進み、より公正な価格での取引が増えていると述べ、これが日本関連の買収総額を押し上げる要因になっていると説明した。

潜在的リスク

中東紛争やテクノロジー株の売り、プライベートクレジット市場の動揺などで世界的なセンチメントが脅かされる中でも、日本は底堅さを示している。

ベーカー&マッケンジー東京事務所のマネジングパートナー、高田昭英氏は、中東などの「地政学リスクを評価することは必要だが、影響が限定的にとどまるなら、日本企業によるクロスボーダー案件の前向きな傾向は持続するだろう」と話した。

ジェフリーズ・ファイナンシャル・グループでアジアM&A部門責任者を務めるエリス・チュー氏によると、日本は引き続き大型案件を生み出している。半導体大手のロームは6日、トヨタ系の部品メーカー、デンソーから買収提案を受けたと明らかにした。

2月にはルネサスエレクトロニクスが、電子回路の正常機能に必要な信号を発生させるデバイスなどを製造するタイミング事業を米半導体メーカーのSiTimeに売却すると発表。

また三菱商事は、米エーソン・エナジー・マネジメントから米国のガス・パイプライン資産を52億ドルで取得する。これは米シェール分野における日本企業による買収として最大規模となる。

英HSBCホールディングスがシンガポールとインドネシアで進める資産売却には日本の保険会社が関心を示している。日立製作所はデータストレージ事業の売却に向け入札を準備し、東芝はエレベーター事業の段階的な売却を検討しており、買い手候補にはフィンランドの昇降機メーカーで株主でもあるコネなどが挙がっているという。

ソニーグループも傘下のソニーがTCLエレクトロニクス・ホールディングス(TCL)と、ホームエンタテインメント領域での戦略的提携で基本合意したと発表した。

チュー氏は「最近の日本のM&A活動の急増は一時的な急伸ではなく、広範な構造的変化だ」との見方を示し、「取締役会は資本効率の改善に本格的な圧力を受けており、それがカーブアウトや非公開化、子会社買収のうねりとなって表れている。これほどのペースはこれまで見たことがない」と語った。

原題:Megadeals Like Toyota’s Set Japan on Course for Record M&A Run(抜粋)

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