(ブルームバーグ):もう30年前のことだ。当初は目立たなかった2つの作品がわずか23日の間にゲームの歴史を変えた。
1996年2月27日、任天堂の「ポケットモンスター 赤・緑」が日本で発売された。ロールプレーイングゲーム(RPG)のこの作品は、その後ミッキーマウスや「スター・ウォーズ」を超える売上高世界一のメディアフランチャイズへと成長したシリーズの原点だ。
そのわずか3週間後、カプコンが「バイオハザード」を発売。海外では「Resident Evil」の名で知られるこのタイトルに、愛らしいピカチュウの姿はない。ゾンビに追われる緊張感を体感させる血生臭い作品だった。
21世紀の4分の1が終わってしまった今でも、人気は衰えていない。高い評価を受けた最新作「バイオハザード レクイエム」は先月の発売から5日間で500万本を販売し、シリーズ最速のペースを記録した。累計出荷本数は1億8000万本を超える。
1996年はゲーム史における画期的な年だった。開発が数カ月で進むことも珍しくなかった当時は、急速な改良と変化の時代だった。開発に何年も要する現在とは対照的だ。
同じ時期に登場し、10年ほど大人気だった「クラッシュ・バンディクー」「Quake(クエイク)」「Tomb Raider(トゥームレイダー)」などのシリーズはその後、影を潜めた。
日本発のポップカルチャー
生き残ったポケモンとバイオハザードは、辛抱強いブランド運営の重要性を示しており、業界全体への教訓となっている。ゲームとしての両者に共通点はほとんどない。
6年の開発期間を要した子ども向けのポケモンは、数カ月での制作が多数派だった当時としては異例の長期プロジェクトで、任天堂の携帯型ゲーム機「ゲームボーイ」の末期を飾る作品だった。
一方、バイオハザードは当時登場したばかりのソニーの「プレイステーション(PS)」向けに、経験の浅いチームが実験的に開発した作品で、アルフレッド・ヒッチコック監督の映画に着想を得たホラー作品だった。いずれも当初は成功の見込みが薄いとみられていた。
両作品の影響はゲームの枠を超える。ポケモンは1998年まで海外で発売されなかったが、今日のアニメブームへと直接つながるきっかけとされている。英誌エコノミストは、ポケモンを「ロゼッタストーン」と評した。
ポケモン人気は当初、子どもを熱狂させ大人を戸惑わせる特異な現象と見なされた。1990年代後半のこうした熱狂へのやゆは、米国のギャグアニメ「サウスパーク」のエピソードでも象徴的に描かれた。
しかし一過性の流行とは異なり、長期的に定着し、日本のポップカルチャーが欧米の若者文化における共通語となる先駆けとなった。
バイオハザードはジョージ・A・ロメロ監督の「ドーン・オブ・ザ・デッド」などの洋画、特にゾンビ映画に着想を得た。しかし、やがてゾンビはパロディーの題材となり、ホラー映画は「スクリーム」のようなメタ的潮流へと移行していた。
この日本発ゲームの成功は、ゾンビを再びホラーの中心的存在として確立し、「28日後...」や「ウォーキング・デッド」などへと道を開いた。稚拙な翻訳や大げさな声優演技で知られながらも、ゲームが漫画的アクションから大人向けの映画的体験へと進化する過程における画期的作品だった。
では、30年を経た今も両シリーズが存在感を保つ理由は何か。第一に、ファンの期待に応えつつ、基本フォーマットを更新してきた慎重なブランド管理がある。バイオハザードは少なくとも2度、大胆な刷新を行い、よりアクション重視の路線へ転換した後、再びホラー色を強めた。
ポケモンは確立された基本の形を維持してきた。直近の主要作「スカーレット・バイオレット」は評価が分かれたものの、シリーズ2番目の売り上げを記録した。
アイデア色あせず
実験も続けている。家庭用ゲーム機「スイッチ2」向けに最近発売された「あつまれ どうぶつの森」風のスピンオフ作品「ぽこ あ ポケモン」は高評価を受け、来年発売予定の新作2本「ウインド」「ウェーブ」に向けてシリーズへの関心を再び高めている。
ポケモンとバイオハザードは、マルチメディア戦略の重要性も示す。漫画やアニメ、トレーディングカードはポケモン初期の成功に不可欠で、キャラクターへの親近感を高め、シリーズを生活の中で避けて通れない存在にした。
バイオハザードは、ゲームの内容とは必ずしも一致しない作風だった映画シリーズも利益を上げ、ブランドの認知度を高めた。ホラー映画で高い評価を得ているザック・クレッガー監督が手がける新作も年内に公開予定だ。
成功を収めてきたとはいえ、両シリーズにはいずれも取りこぼしてきた収益もある。次の四半期決算を押し上げることに常に躍起になるあまり、多くのパブリッシャーは良質なコンテンツを過剰に投入し、結果として、人気作を乱発しがちだ。
だが、ポケモンとバイオハザードは主要シリーズの発売を段階的に行ってきた。ポケモンもバイオハザードも30年間で本編はわずか9作だ。その間にスピンオフやリメイク、外伝作品を展開し、プレーヤーと投資家の関心を維持してきた。
ピカチュウと人肉をむさぼるゾンビには、共通点がないように見える。しかし、優れたアイデアは丁寧に扱えば色あせないことを両者は示している。
(リーディー・ガロウド氏はブルームバーグ・オピニオンのコラムニストで、日本と韓国、北朝鮮を担当しています。以前は北アジアのブレーキングニュースチームを率い、東京支局の副支局長でした。このコラムの内容は個人の意見で、必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)
原題:Pokemon and Resident Evil Rewrote Gaming History: Gearoid Reidy(抜粋)
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