(ブルームバーグ):ホンダは12日、四輪の電動化戦略の見直しに伴って損失が発生し、今期(2026年3月期)の利益見通しを下方修正すると発表した。来期以降も追加損失が発生し、今期分とあわせて最大で2兆5000億円にのぼる可能性も示した。
発表資料によると、従来は5500億円の黒字としていた今期の営業損益予想は2700億円から5700億円の赤字に修正された。純損益予想も赤字転落となる。北米で生産予定だった「0 SUV」、「0 Saloon」、「Acura RSX」の電気自動車(EV)3車種の開発中止の決定や電動化戦略の見直しなどで最大1兆1200億円の営業費用が見込まれることなどを反映する。
ホンダは三部敏宏社長のリーダーシップのもと、21年に40年に販売する新車をすべてEVか燃料電池車(FCV)とする目標を掲げるなどEVシフトを強力に進めてきた。その後、EVの普及の速度は鈍化して大手自動車メーカーの間では事業計画を見直す動きが相次いでおり、ホンダの戦略は裏目に出たかたちだ。
三部社長は会見で、将来の環境が不透明な中で、市場や政策の動向について「複数シナリオみたいなものを持って、戦略を修正しきれなかったこと、これは反省すべき課題だった」と振り返った。「最終的な責任は私にある」とした上で、問題を先送りして将来に負債を残さないために今回の決断を下したと説明した。
発表によると、今期の純損失予想は4200億円から6900億円となった。従来計画では3000億円の黒字だった。ホンダによると、純損失となるのは連結で決算開示を始めた1977年以来初だ。
巨額損失の見通しとなったことを受けて、三部社長のほか副社長が月報酬30%を3カ月分自主返上する。四輪事業の中長期戦略再構築の詳細について、5月に発表を予定しているという。
岩井コスモ証券の菅原拓アナリストは、元々今期の業績は悪いと市場では認識されていたとし、損失計上ですっきりする形であればポジティブにも捉えられるが、今回の発表では「今期で片付く話なのか、来期に積み残しがあるのか、その辺が分からない」と評した。
四輪事業を取り巻く環境変化は一企業でどうにかなるものではないと理解を示した上で、EVに振り切った戦略の結果でもあるとして、三部社長にも一定の責任があるとの見方を示した。
三部社長は会見で、開発中止した3モデルについてこのまま生産販売フェーズに移行すると将来に渡ってさらなる損失拡大を招く状況だと明らかにした。その上で、そうなればブランド価値毀損(きそん)の可能性を含めてホンダの将来にとって最善ではないと「断腸の思い」で決断を下したと述べた。
藤村英司最高財務責任者(CFO)は、最大2.5兆円の損失には、3車種の開発中止に伴う開発資産の除却や金型や専用設備などの減損のほか、サプライヤーに対する補償も含まれると説明した。同氏によると、このうち現金支出を伴わない損失は6000億-8000億円になる。
ブルームバーグ・インテリジェンスの吉田達生シニアアナリストは、「不確実性やリスクは残るので、悪材料出尽くしとまでは言い切れないが、ことEVについては相当部分の悪材料が判明したことは、暗闇の中での光明だ」との見方を示した。今後の課題は進捗(しんちょく)が遅れている四輪事業のてこ入れだとし、中国を含むアジアでの失地回復など「課題は山積だ」とした。
ホンダは、昨年5月にEVなどの投資の減額計画を公表していたほか、2月には自動車業界を取り巻く経営環境の変化を受けて、中長期の戦略再構築について今後公表する方針を明らかにしていた。
(会社幹部と識者のコメントを追加して更新します)
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