(ブルームバーグ):個人投資家は、プライベートクレジット(ノンバンク融資)や不動産など、評価が難しい資産を組み入れたポートフォリオに数十億ドル規模の資金を抱えている。そうした市場にひずみが広がるなか、アクティビスト(物言う投資家)として知られるボアズ・ワインスタイン氏が動き出した。
ヘッジファンド運営会社サバ・キャピタル・マネジメントを率いる同氏は、資産運用大手ブルー・アウル・キャピタルが運営するプライベートクレジット・ファンドの投資家の持ち分について、迅速な現金化を提案。保有持ち分を同氏が買い取る構えだ。2年にわたり解約を大幅に制限しているスターウッド・キャピタル・グループの不動産ファンドの出資者にも、同様の提案をしている。
「これは始まりにすぎない」とワインスタイン氏は語る。運用会社が応じきれないほどの解約請求が見込まれる同様のファンドやポートフォリオについても買い取りを検討している。
同氏によれば、スターウッドの不動産投資信託「SREIT」には10億ドル相当の解約請求が殺到したが、実際に応じられたのは約4%にとどまっている。ブルー・アウルは、同社が運営するビジネス・デベロップメント・カンパニー(BDC、企業向け融資を手がける投資ビークル)について、投資家への資金返還に充てるため一部資産の売却を優先し、解約の受け付けを停止している。
ワインスタイン氏は、流動性の低いこれらの市場を覆う不安はいずれ和らぎ、落ち込んだ資産価格も本来の価値に近づくと見込んでいる。それまで待てない個人投資家に現金を支払う考えだ。そうした対応は、これらのポートフォリオを手がける運用会社にはできない、あるいは行う意思がないと指摘する。
同氏は、ブルー・アウルのような事業について多くを知っているわけではないと認めつつ、ファンドの持ち分を基準価格に対して30%下回る水準で取得できるのであれば、リスクを取る考えだという。
「私は事実上、市場の悲観局面で資産を買っている。そして楽観が広がった局面で本来の価格で売っている」とインタビューで述べた。

これを実現するのは、単に安く買って高く売るというほど単純ではなく、波紋を広げる可能性もある。
若い頃はチェスの名手として知られ、その後はカードの出方を計算して有利に賭ける「カードカウンティング」を理由にラスベガスの高級カジノを出入り禁止となった経歴を持つワインスタイン氏は、2009年にサバを設立し、現在は各ファンドで計60億ドルを運用している。
近年は、世界有数の資産運用会社が運営する上場クローズドエンド型ファンドに出資し、資産価値と株価の差の是正を求めて運用会社に働きかけることで名を上げてきた。
BDCの買い取り
今回はブルー・アウルのBDCやスターウッドの不動産投資信託の持ち分を単純に買い取る提案だと、ワインスタイン氏は説明する。対象は今後さらに広がる見通しだ。BDCの運用資産は2025年末時点で約4500億ドルに上るとの推計もある。
クローズドエンド型ファンドで仕掛けたのと同様に、今回もプライベート資産業界が弱っている局面を狙って同氏は動いている。
1兆8000億ドル規模のプライベートクレジット市場では、流動性への懸念や資産価値の過大評価、債務不履行、さらには借り手による不正といった問題が浮上している。その結果、業界が保有する出資持ち分やローンの評価額などが本当に妥当なのかとの疑問も強まっている。
プライベート資産の買い手が提示価格に応じないため、資産は長年売れ残り、ファンドは出資者に十分な利益を還元できずにいる。ワインスタイン氏は、解約を制限している運用会社のもとで資金が動かせなくなっている個人投資家を支援するために動いていると述べた。
業界の動揺は今年、一段と強まった。上場BDCを手がける大手資産運用会社のブラックロックとアポロ・グローバル・マネジメントが、一部ファンドで配当を減額し、不振資産の評価を引き下げたためだ。その影響で、両社の株価は一段と低迷した。
世界最大のオルタナティブ資産運用会社ブラックストーン・グループの主力プライベートクレジットファンドは今年、多額の解約請求に直面。対応策として運用担当者らが約1億5000万ドルの自己資金を拠出した。ブラックロックも顧客からの解約請求が急増したことを受け、プライベートクレジット・ファンドの一つで解約を制限し、業界に衝撃を与えた。
こうした状況を踏まえると、2月時点で上場BDCの平均株価が純資産価値の約77%で取引されていたのは不思議ではない。ブルー・アウルのBDCを30%安く買い取るというワインスタイン氏の提案は、不満を抱く投資家に受け入れられる可能性がある。
ワインスタイン氏はインタビューで、ブルー・アウルは自身の介入を支持しているとしたうえで、自身も同社の幹部を高く評価していると述べた。
ブルー・アウルはコメントを差し控えたが、同氏による買い取り提案に関する3月6日の発表文では、「すべての株主の価値最大化に引き続き注力し、株主の利益を保護する」としている。
原題:Weinstein ‘Buying Pessimism’ With Discount Private Fund Bids (1)(抜粋)
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