(ブルームバーグ):第2次トランプ米政権は、いわゆる「マッチョ」な力の誇示を前面に出し、ポピュリスト右派が思い描く男らしさを体現してきた。ヘグセス国防長官は世界に向けて「F-A-F-O」(ふざけた態度を取ったら痛い目をみる)と発言。ケネディ厚生長官は上半身裸でトレーニングする動画を公開した。さらに、ホワイトハウスの敷地内で総合格闘技(MMA)の大会開催も予定されている。
2024年の大統領選では、若い米国人男性の過半数がトランプ氏に投票し、第45代大統領を第47代として返り咲かせた。しかし、もはや若い男性はこうした演出には関心を示していない。中道系民主党シンクタンク、サード・ウェイ(Third Way)が委託した世論調査によると、18-29歳の男性有権者のトランプ氏支持率は32%に急落した。
民主党寄りの団体「スピーキング・ウィズ・アメリカン・メン(Speaking with American Men)」の調査では、16-29歳の男性のうち、トランプ氏が「われわれのような層のために成果をあげている」と考える割合は27%にとどまった。
一体、何が起きたのか。心理学の学位がなくても見当はつく。
Z世代の男性は当時、民主党候補で副大統領だったカマラ・ハリス氏ではなくトランプ氏を支持した。経済的な不安を抱え、連邦政府が優先順位を誤っていると感じていたためだ。最大の関心事は生活費の高騰と、国外の軍事紛争への米国の関与だった。彼らはトランプ氏に対し、ワシントンの政策課題を立て直し、新たな経済繁栄の時代を切り開くとともに、国外への関与を縮小するとの期待を託した。
しかし、少なくとも若い男性の目には、状況は何一つ変わっていない。トランプ氏が「私はアフォーダビリティー(暮らし向き)の問題で勝利した」と宣言し、過去1年が歴史的な成功だったと主張しても、何の助けにもなっていない。
「若者がいまトランプ氏に強い不満を抱き、距離を置き始めている一因は、そもそも同氏を支持した理由そのものにある」。Z世代に特化した調査・メディア企業ザ・アップ・アンド・アップ(The Up and Up)の創業者、レイチェル・ジャンファザ氏はこう指摘する。「多くの若者、特に男性は、自分たちの生活がむしろ悪化したと感じている」という。
2024年大統領選後の分析の中には、若い男性のトランプ氏支持率を50%弱とするものもある。一方、選挙当時79歳で米史上最高齢の大統領となった同氏が、Z世代の男性から50%を大きく上回る支持を得たとする調査もあった。
いずれにせよ、この層での得票はトランプ氏勝利の鍵となった。若い男性が民主党候補のヒラリー・クリントン氏、ジョー・バイデン氏をそれぞれ大差で支持した2016年、20年の選挙と比べると、得票は大幅に改善した。実際、大統領選を受けて共和党内では、支持基盤の再編が起きたのではないかとの期待が広がった。今後は若い男性が共和党候補に投票する傾向が強まるとの見方だ。それは重大な変化となるはずだった。
しかし現在、若い男性の間でトランプ氏への支持は崩れている。18-29歳の男性がトランプ氏に背を向けているだけでなく、反発の広がりも目立つ。
トランプ氏の挑発的な振る舞いや攻撃的な発言、ソーシャルメディアでの軽率な投稿が問題なのではない。そうした言動は、若い有権者にとって物心ついた頃からの常態だ。むしろ批判の矛先は、態度よりも政策や実績といった中身そのものに向けられている。
ジャンファザ氏は、Z世代有権者を対象に定期的に実施している座談会で得た知見として、次のように説明する。
若い男性はトランプ氏の関税政策を失敗とみなしている。また、先のベネズエラなどでの軍事力行使にも反対しており、対外的な介入よりも国内再建を優先するとした公約に裏切られたと感じている。さらに、政権による強硬な移民強制送還プログラムにも強く反発している。
加えて、トランプ氏は公共奉仕に関心がなく、むしろ暗号資産企業にすり寄って私腹をこやすことや、ホワイトハウスに新たなボールルーム(宴会場)を建設するといった自己顕示的なプロジェクトを追求する利己的な指導者だと受け止められている。
「彼が自らを富ませることに終始し、国民に目を向けていないと映る場面が数多くある」とジャンファザ氏は述べ、「若者たちは彼を、長年批判してきたはずのエリート層の一員だと見なしている」と続けた。
その余波は深刻で、トランプ氏の後継を目指すバンス副大統領にも及んでいる。41歳の同氏は、若年層有権者の世代とわずか十数年しか離れていない。サード・ウェイの世論調査結果をまとめた分析によれば、「2028年の大統領選にバンス氏が出馬した場合、支持すると答えた若い男性はわずか26%にとどまり、55%が反対、17%は分からないと回答した」。
若い男性有権者の離反は、2024年にトランプ氏に傾いた他の有権者層の動きと軌を一にしている。これらの有権者の多くは、トランプ氏の経済運営などに不満を抱いており、この1年で徐々に離反してきた。
Z世代の男性は、具体的な成果を期待してトランプ氏に投票した。だが、公約を実現できなかったとみているだけでなく、解決を託したはずの問題をかえって悪化させたと受け止めている。民主党に責任転嫁してみたところで、若者の失望は埋められない。
(デービッド・M・ドラッカー氏は、政治と政策を担当するコラムニストです。保守系メディア「ザ・ディスパッチ」のシニアライターでもあり、著書に「In Trump’s Shadow: The Battle for 2024 and the Future of the GOP」があります。このコラムの内容は個人の意見で、必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)
原題:Why Young Men Are Turning Away From Trump: David M. Drucker(抜粋)
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