(ブルームバーグ):オマーンのマスカット空港が、突如として混雑している。普段は、近隣ドバイの華やかさよりもゆったりとした雰囲気を好む観光客向けの静かな空港に過ぎないが、中東で続く戦争により、自国民を帰国させるための各国の救援便が相次いでいるためだ。

英国やドイツ、イタリアなどが救援便を派遣し、マスカット空港のプライベートジェットの発着は、過去1週間で10倍に急増した。カタール航空などの航空会社も、乗客をロンドンやベルリン、アムステルダムへ移送するため、マスカット発の便を運航している。
オマーンのバドル外相はソーシャルメディアへの投稿で「湾岸地域から帰国を希望する全ての人のために、オマーン政府は各国政府および国際航空会社と連携し、帰国便の手配を進めている」と述べた。
その結果、通常であれば1日1、2機のプライベートジェットと、ドバイやドーハの忙しいハブ空港に比べればごくわずかな商業便しか扱わないマスカット空港で、活動が急増している。フライトレーダー24がまとめたデータによると、戦争開始以降、この比較的小規模な空港から90機超のプライベート機が出発した。
利用しているのは、一部は政府主導の退避便のほか、企業が従業員を退避させるケースもあれば、ドバイから逃れる富裕層の家族もいる。データによると、プライベートジェットの主な目的地はイスタンブール、カイロ、モルディブのマレ、インドのアーメダバードだった。

増便
プライベートジェット仲介会社ルナジェッツには、過去24時間で個人や各国政府から800件超の退避要請が寄せられ、24時間体制のチームが問い合わせに対応している。同社は、マスカットからイスタンブールとアテネへ向かう団体退避便をそれぞれ2便手配し、各便に約200人を乗せた。座席価格は最大2100ドル(約33万円)に上った。
対応に当たっているデービッド・ロイター氏は「最初の攻撃以降、電話は鳴り止まない。多くの人がパニックに陥り、できるだけ早くこの地域から脱出しようとしている」と語った。
ただし、オマーンに押し寄せている人々の多くが恵まれているというわけではない。乗り継ぎ便が欠航となったり、ドバイを休暇で訪れていたりしたため中東で足止めされている人々だ。湾岸地域に居住する外国人が帰国を目指すケースもある。急増する滞在者に対応するため、市内の複数のホテルは急きょ客室の確保に追われている。
オマーンの空港は依然として定期便の約80%を運航しており、空域が閉鎖されている国向け路線に限り運休している。国営オマーン航空は、急増する需要に対応するため、欧州方面の便数を増やし、追加の機材を手配した。

中東各地で足止めされた旅行者は、帰国の道筋を見つけるためその場その場で対応せざるを得ない状況にある。多くの人が数百ドルを支払い、何時間も車で移動してマスカット空港に到着し、その後さらに数千ドルを支払って飛行機に乗っている。プライベートジェットを利用する場合は、その数倍の費用がかかることもある。
プライベートジェット予約プラットフォーム「ブックマイジェット」を運営するサントシュ・シャルマ氏は「需要はあるが、供給が問題となっており、その結果、中東発のプライベートジェットのチャーター料金は倍増している」と述べた。
サウジアラビアでも、クウェートやカタールからの旅客の流入が増えている。退避便に加え、クウェートの格安航空会社(LCC)ジャジーラ航空は、ジェッダの空港からの運航を開始する予定で、バーレーンの国営航空会社はダンマーム発で運航する。カタール航空も5日から、リヤド発の限定便を運航している。

退避便
各国政府は退避便の手配を進めている。アイルランドは、特にアラブ首長国連邦(UAE)に滞在する非居住者で、ぜい弱な立場にあり緊急支援を必要とする人々を対象に、マスカット発のチャーター便を手配している。
米軍のダン・ケイン統合参謀本部議長は4日、C-17輸送機など一部の航空機で座席を開放していると述べた。米国務省によると、戦闘開始初日の2月28日以降、1万7500人超の米国人が無事帰国した。
ドイツ政府は、ルフトハンザ航空を通じてマスカット発の便を手配し、5日朝に250人を乗せてフランクフルトに到着した。イタリアはオマーンとサウジアラビアの経路を通じ、約2750人の自国民を退避させた。
英国のチャーター便は、4日にオマーンを出発予定だった便が技術的な問題で延期されていたが、英国政府によると、5日に出発する見込みだ。
小泉進次郎防衛相は5日、邦人輸送のために自衛隊機を派遣する準備に着手したとX(旧ツイッター)への投稿で明らかにした。
原題:Private Jets Swarm Oman as Muscat Becomes Ground Zero for Escape(抜粋)
--取材協力:Siddharth Philip、David Ingold、Eric Martin、Iain Marlow、Allyson Versprille、Kate Duffy、Thomas Escritt、Milda Seputyte、Konrad Krasuski、Jan Bratanic、Alessia Tinti、Javier Salinas.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
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