(ブルームバーグ):任天堂は昨年6月の「スイッチ2」発売以降、人気ゲームの相次ぐ成功、好調なテーマパークのアトラクション、先月封切りのヒット映画など、上昇気流に乗っているはずだ。しかし東京市場で取引される同社株は、この10年で最悪の下落局面にある。
この矛盾と投資家間での議論の中心にあるのは、スイッチ2本体の価格だ。コスト上昇に対処し、投資家の不安を鎮めるには、8日の決算発表時に値上げを明らかにせざるを得ないとみる向きは多い。一方で、需要への影響を懸念する声もあるが、それは株価への圧力ほど長期化しない可能性がある。
任天堂の株価は月間ベースで5カ月連続下落し、2016年以来の長期低迷となっている。半導体の供給ひっ迫が深刻化した昨年9月に、任天堂の株価は日経平均と乖離(かいり)し、イラン戦争で悪化。時価総額は8月高値から約半減した。
予想外のヒットとなった生活シミュレーションゲーム「ぽこ あ ポケモン(海外名ポコピア)」や、映画「ザ・スーパーマリオギャラクシー・ムービー」など、任天堂では成功が続いている。ゲーム情報誌「ファミ通」や市場調査会社サカーナによると、スイッチ2は過去のどのゲーム機より最速で売れている。
ではなぜ任天堂は株価の下落がソニーより大きいのか。ソニーグループは「プレイステーション5(PS5)」を値上げしたからだ。
価格450ドルのスイッチ2は採算ラインを大きく下回ると、投資家は懸念する。米ハイテク大手を相手にメモリーなどの部品争奪戦は激化し、中東で起きている実際の戦争で輸送・素材コストも増大。この圧力はカプコンやコーエーテクモ、そしてソニーにもかかっている。
注目は8日の任天堂決算発表で、古川俊太郎社長が価格戦略に言及するかどうかだ。東洋リサーチアドバイスの安田秀樹シニアアナリストは、株価は当面低迷が続くとみている。「インフレヘッジができない企業の株は、市場で罰せられている」と述べた。
一方で値上げは需要減退懸念につながり、株価が少なくとも短期的に下げる可能性もある。
ウェドブッシュ・セキュリティーズのアナリスト、マイケル・パクター氏は「値上げは愚かな行為となろう」と語る。「消費者は苦しんでいる。ガソリンや食料が高騰し、娯楽は真っ先に削られる」と述べた。
選択は厳しい。価格を維持して株売り継続に耐えるか、あるいは値上げで顧客離れのリスクを覚悟するか。値上げするのなら、その規模も問題になる。現在の価格では売っても損失が出る。
消費者需要を考慮すると、50ドルから100ドルの値上げが最も現実的とみられる。東洋証券の安田氏はただし、この程度の調整では収益化というより負担軽減にとどまる可能性があると指摘する。
初代スイッチの成功は損失回避にあり、前世代機「Wii U」失敗後に立てられた戦略だった。スイッチ2向けのソフトウエア販売が鈍いことも、留意の必要がある。
例えば米国で約50ドル値上げし、日本限定の5万円モデルを廃止するのも効果的かもしれない。
任天堂は値上げの可能性を認めつつ、経済状況を考慮していくと説明している。昨年はスイッチ2以外のほぼ全製品を値上げし、短期の痛みを受け入れて長期成長を優先している。
ペルハム・スマイザーズ・アソシエーションの日本株アナリスト、ペルハム・スマイザーズ氏は、スイッチ2のサイクルで比較的早い段階に値上げを行えば、新作ソフトの販売が減速し、利益率に劇的な打撃を与える可能性があると指摘した。「価格設定を誤れば、どちらに転んでもWii Uの二の舞になり、状況は悪化を続ける」と述べた。
昨夏は記録的販売でスイッチ2を増産したが、年末販売は不調に終わり、減産を余儀なくされた。夏の好調は関税絡みの値上げ観測が広がる中、駆け込み需要が影響した可能性がある。顧客を放置する価格判断先送りは、賢明ではない。
PS5の例が参考になるかもしれない。PS5および「PS5 Pro」は先月の値上げ後、日本で比較的早く販売が回復した。
原題:Nintendo Shares Show Profit Pressure on Switch 2: Tech In Depth(抜粋)
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