(ブルームバーグ):米国とイスラエルは2月28日、イランへの大規模な攻撃に踏み切った。イランも報復に出たことで、攻撃の応酬は激化し、戦火は中東各地へと拡大している。
これまでの出来事を日本政府の対応も含めて、主なポイントごとに整理する。日本時間5日午後6時時点の状況は、以下の通り。
ハメネイ師の後継は?
トランプ米大統領は2月28日、イランの最高指導者ハメネイ師が死亡したと明らかにした。その後、イラン国営メディアも死亡を認めた。
1979年のイスラム革命で成立した現在のイラン・イスラム共和国において、ハメネイ師は2人目の最高指導者だった。前任のホメイニ師の後を継ぎ、1989年に就任した。
ハメネイ師が殺害されたことで、次に誰がイランを統治するのかという問題が浮上している。ハメネイ師は生前に、公には後継者を指名していなかったためだ。
次の最高指導者の選出は、聖職者で構成される専門家会議の役割だ。専門家会議は88人で構成されるイスラム教シーア派の聖職者機関。選出までの間は、ペゼシュキアン大統領ら3人で構成する臨時指導評議会が職務を代行している。
ハメネイ師の後継を巡っては、次男のモジュタバ氏が有力候補との見方が広がっている。
イランの準国営ファルス通信は、専門家会議はインターネット経由など安全な手段で投票を実施していると伝えた。新指導者の発表は近く行われる可能性があるとしている。
後継問題は、米国にとっても重大だ。大規模な攻撃を開始したものの、出口戦略には不透明感が漂っている。
トランプ氏は3月3日、「最悪のシナリオは、われわれが行動を起こした結果、前の人物と同じくらい問題のある人物が権力を握ることだろう。そうなる可能性はある」と発言。「5年後に振り返ったとき、自分たちが据えた人物が以前と何ら変わらなかったと分かるかもしれない」と述べた。
ハメネイ師の後継には、より穏健な指導者の登場を望む考えをトランプ氏は明らかにしている。ただ、有力候補とみていた人物は攻撃の中で死亡し、第2の候補グループについても「報道によれば死亡したとみられる」と述べた。
トランプ氏はFOXニュースの取材に対し、イランへの攻撃によって「48人の指導者が一度に殺害された」と述べた。イスラエル国防軍の発表では、イスラム革命防衛隊のパクプール司令官ら、複数のイラン高官が殺害された。

米イスラエルによる攻撃は?
米国は今回の攻撃を軍事作戦「エピック・フューリー(壮絶な怒り)」と呼んでいる。
トランプ氏は3月4日、対イラン攻撃について「戦況は非常に順調だ」として自信を示した。だが、今回の軍事作戦の期間については依然として不透明なままだ。ヘグセス国防長官は「6週間かもしれないし、8週間かもしれないし、3週間かもしれない」と述べている。
米国防総省によると、これまでに2000の目標を攻撃し、イラン海軍の艦艇20隻を撃沈したという。イラン国内の犠牲者は、1000人超にのぼっている。
スリランカ沖では4日、イランの軍艦を魚雷で撃沈。スリランカ当局によると、乗組員約32人が救助された一方、100人超が行方不明か、死亡したとみられている。
一方、ニューヨーク・タイムズ(NYT)は、イラン情報省の工作員が第三国の情報機関を通じて米中央情報局(CIA)に接触し、戦争終結の条件を協議することを提案してきたと報じた。だが、イラン側は同報道を「全くの虚偽だ」と否定している。
米軍には犠牲者も出ている。中央軍によると、これまでに米兵6人が死亡した。トランプ氏は、今後の攻撃でさらに犠牲者が増える可能性もあると話している。
イランによる報復攻撃は?
イランは中東各地にミサイルとドローンの大規模な攻撃を仕掛けており、さらに報復を強化する意向をみせている。
革命防衛隊は報復攻撃を今後数日でさらに激化すると、イラン国営のヌール通信は伝えている。また、米国が体制転換を図れば、イラン側はイスラエルのディモナ核施設を標的にするつもりだと準国営のイラン学生通信(ISNA)は報じた。
これまでに戦闘に巻き込まれたのは10カ国以上にのぼる。ここは、アラブ首長国連邦(UAE)、カタール、クウェート、サウジアラビアなどの米軍基地や拠点が含まれる。過去に米国とイランの交渉を仲介してきたオマーンも、攻撃を受けた。
湾岸各国にある米国の在外公館を標的とする攻撃も相次いだ。
またイスラエルもイランからの攻撃を受けており、十数人が死亡したとみられている。

原油市場への影響は?
ホルムズ海峡が事実上閉鎖され、世界の原油市場は混乱に陥った。世界のエネルギー供給の5分の1が通過する要衝であるホルムズ海峡では石油タンカーの通航が事実上途絶えている。
エネルギー危機を回避しようと、トランプ氏は3月3日、ホルムズ海峡を航行する石油タンカーやその他の船舶の安全を確保するため、米国が保険と海軍による護衛を提供すると明らかにした。
一方、イランの準国営ファルス通信は、ホルムズ海峡は戦時状態にあって、海峡を航行する船舶は「ミサイルやドローンの脅威にさらされる可能性がある」とするイスラム革命防衛隊の声明を伝えた。声明で「ホルムズ海峡がイラン海軍の完全な支配・監視下にある」と主張した。
石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国で構成する「OPECプラス」は3月1日、4月の原油生産をやや大きく増やすことで原則合意した。紛争が原油価格の上昇を招く恐れが高まっている。
海上保険組合の一部は、ペルシャ湾に入域する船舶向けの戦争リスク保険の引き受けを停止する動きをみせている。
ブルームバーグ・エコノミクス(BE)は、ホルムズ海峡が閉鎖された場合、原油価格が最大で1バレル=108ドルまで急騰する可能性があると試算している。

空路への影響は?
攻撃開始以来、大手航空会社は中東のハブ空港向けの運航を縮小するなど、世界の航空会社は計1万5000便超を欠航している。
エミレーツ航空は、商業運航を7日まで停止すると発表した。世界の旅行者にとって重要な目的地である湾岸地域で、運航が1週間フルに途絶えることになる。
相次ぐミサイルやドローン攻撃により、ドバイ、アブダビ、バーレーン、クウェートの各空港は危険にさらされている。クウェート国際空港は、2月28日にドローン攻撃を受け、軽傷者が数人出たほか、旅客ターミナルにも被害が生じた。

日本の対応は?
小泉進次郎防衛相は5日、イラン情勢の緊迫化を踏まえ、邦人輸送のために自衛隊機を派遣する準備に着手したと明らかにした。防衛省において、現地邦人の状況把握と、自衛隊進出ルートの検討、使用する機材や要員の選定など具体的な準備を進めるという。
高市早苗首相は、国民生活や経済活動への影響を最小限に抑えるため、必要な対応を機動的に講じる考えを示している。
2日の衆院予算委員会で高市氏は、「これから生じてくる経済的影響についてもあらかじめ洗い出し、打てるべき手を考えておく」と説明。日本の石油備蓄は「現在254日分がある」ことも明らかにした。
「イランによる核兵器開発は決して許されないというのがわが国の一貫した立場だ」との見解を示した上で、事態の早期沈静化へあらゆる外交努力を行うとも語った。

また茂木敏充外相は、現在イランにいる約200名の邦人の「ほぼ全員と既に連絡を取って安否を確認しており、被害の情報には接していない」と説明。攻撃を受けている周辺国にも全体で約7700人おり、安否確認や必要な場合の退避の準備を進めていると述べた。
外務省によると、イスラエルからの出国を希望した日本人5人がテルアビブから隣国ヨルダンの首都アンマンに陸路で到着した。現地の日本大使館が支援した。また、イランからの出国を希望した日本人2人は日本時間4日朝、アゼルバイジャンの首都バクーに陸路で到着した。
原題:Iran War Ripples Across Region as Trump Vows ‘Whatever It Takes’、Iran Strikes: The Latest on US-Israel Conflict With Tehran(抜粋)
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