(ブルームバーグ):イランを巡る戦争は開始からわずか3日で、消耗戦の様相を呈している。イランの波状的なドローン攻撃によって、米国のほか、バーレーンやアラブ首長国連邦(UAE)などパートナー国の防衛網には圧力がかかり、兵器備蓄が減少している。勝敗はどちらが先に弾薬を使い果たすかに左右される可能性がある。
イランの一方向攻撃型ドローン「シャヘド136」や、小型で簡易な巡航ミサイルが2日も中東各地の目標を攻撃した。米国とイスラエルが2月28日にイランへの軍事作戦を始めて以降、こうした無人機は、米軍基地や石油インフラ、民間の建物などを標的としている。
UAEによると、米国製のパトリオット防空ミサイルはイランのシャヘドやその他の弾道ミサイルの阻止におおむね成功しており、迎撃率は90%を超える。
ただ、2万ドル(約315万円)のドローンを破壊するのに400万ドルのミサイルを使用する状況で、ウクライナでの戦争初期から西側の軍事計画担当者を悩ませてきた問題が改めて浮き彫りとなっている。安価な兵器が、より複雑な脅威に備えた資源を消耗させる恐れがある。
その結果、イランと米国の双方が数日から数週間で兵器不足に陥る可能性がある。より長く持ちこたえた側が大きな優位を得ることになる。
イランの代理勢力はガザを巡る戦闘で大きく弱体化。ミサイル能力も昨年6月の「12日間戦争」におけるイスラエルと米国の攻撃で損傷を受けた。
イランはそれ以降、トランプ政権による攻撃の影響や代償について警告を強める戦略に転換してきた。トランプ氏の支持者の多くが長引く泥沼の戦争に反対していることを踏まえたものだ。先月28日の空爆で死亡したイランの最高指導者ハメネイ師は、米国が攻撃すれば地域全体を巻き込む大規模な戦火につながると警鐘を鳴らしていた。
シンクタンク、スティムソン・センターのケリー・グリエコ上級研究員は、「消耗戦戦略はイランの立場からすれば作戦上理にかなっている」と指摘。「防衛側が迎撃ミサイルを使い果たし、イランがミサイルやドローンを使い切る前に湾岸諸国の政治的意思が揺らぎ、米国とイスラエルに作戦停止を迫る圧力が高まると彼らは計算している」と話す。
ブルームバーグ・ニュースが確認した内部分析によれば、カタールのパトリオット迎撃ミサイルの在庫は現在の使用ペースでは4日間しか持たない見込みだ。同国は紛争の早期終結を水面下で働きかけている。
イランは昨年のイスラエルとの衝突後も約2000発の弾道ミサイルを保有していると推定されていた。ブルームバーグ・エコノミクスの防衛担当ベッカ・ワッサー氏の分析によると、シャヘドについてはより多く所有している公算が大きい。ロシアもシャヘドの主要生産国で、1日当たり数百機のペースで生産可能とされる。
イランは今年の紛争開始以降、1200発余りの飛翔(ひしょう)体を発射。その多く、恐らく大半がシャヘドとみられる。より破壊力の高い弾道ミサイルを持続的攻撃のために温存している可能性があると、ワッサー氏は付け加えた。
イランのアラグチ外相によると、軍は外務省を含む文民指導部と緊密または頻繁な調整を行わずに行動しているもようだ。
アラグチ氏は1日、アルジャジーラとのインタビューで「軍部隊は現在、事実上独立し、ある意味で孤立した形で、事前に与えられた一般的な指示に基づいて行動している」と語った。
一方、トランプ大統領が4週間は継続可能と見積もったにもかかわらず、米側の攻撃計画担当者がその期間続けるのに十分な弾薬を域内に移送している公算は小さいと、ワッサー氏は指摘した。
ヘグセス米国防長官は2日の記者会見で、「これはイラクではない、終わりなき戦争でもない」と述べた。
イランの防空能力は大きく損なわれている。戦争序盤の空爆で地対空ミサイル部隊が打撃を受け、最新鋭のロシア製S300も標的となった。その後、米国とイスラエルの戦闘機はイラン領空で目立った支障なく作戦を遂行している。
米国と地域のパートナー国は主にロッキード・マーチン製のパトリオット防空システムからPAC3ミサイルを発射している。国防総省は増産を促しているが、ロッキードによれば2025年のPAC3の生産は約600発にとどまった。撃墜されたと報告されているミサイルやドローンの数からすると、先月28日以降、中東では数千発の迎撃ミサイルが発射された可能性が高い。
サウジアラビアとUAEは、より高性能で高速のミサイルを高高度で迎撃するロッキード製のTHAADも運用している。これらは他の目標に使用される公算が小さく、1発当たり約1200万ドルとさらに高額だ。
事情に詳しい関係者によると、現在のようなイランの激しい攻撃が続けば、域内のPAC3備蓄は数日以内に危険な水準まで減少する可能性がある。攻撃用兵器も枯渇すれば、こう着状態に陥る恐れもある。
カーネギー国際平和財団のアンキット・パンダ上級研究員は、「その間にイランのミサイルやドローンの在庫は減少するだろうが、体制自体は混乱の中でも存続することがあり得る」と分析。「この戦争の最初の60時間を見る限り、そうした結果となる可能性が高い」と述べた。
原題:Iran’s Missile Math: $20,000 Drones Take on $4 Million Patriots(抜粋)
--取材協力:Marissa Newman、Courtney McBride.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
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