トランプ米大統領は2日、イランに対する軍事攻撃を必要な限り継続する考えを示し、今回の作戦に関する4つの目標を初めて明示した。

ホワイトハウスで行われたイベントで軍事作戦の期間について問われ、「4-5週間を想定しているが、それよりはるかに長く継続できる能力がある。時間がどれだけかかっても構わない。必要なことは何でもやる」と述べた。

軍事攻撃の目標については、イランのミサイル能力排除や同国海軍の破壊、核兵器取得の道を断つことに加え、イランが国外のテロ組織に武器や資金を提供したり、指揮したりできないようにすることが狙いだと説明した。

特筆すべき点として、トランプ氏は体制転換を作戦目標の1つとして挙げなかった。

トランプ氏に対しては、イラン攻撃の目的や想定期間を巡って発言が揺れており、政権の最終目標に対して疑問の声が上がっていた。また軍事衝突が3日目に入る中、影響は中東全体に広がっており、戦争拡大への懸念が高まっている。

これに先立ち、会見を開いたヘグセス国防長官は、イランとの軍事衝突が終わりのない戦争に発展することはないと否定する一方、どの程度続くのかについては明言を避けた。

米国、イスラエル、イランはいずれも攻撃の手を緩めない考えを示している。トランプ氏はCNNに対し、まだ「大きな波」が来ていないと発言。ニューヨーク・ポスト紙にはイランへの地上部隊派遣を排除しない考えを示した。「地上部隊の投入について躊躇(ちゅうちょ)しない」と述べる一方、その必要はないとの見方も示唆した。

今回の衝突では、これまでに米軍の軍人4人が死亡した。トランプ氏は今後も犠牲者が出る可能性が高いと述べる一方、今回の作戦が将来にわたって米国の安全を確保すると主張して、支持を求めている。

一方、米軍の戦闘機3機が2日、クウェートの防空システムによる誤射で撃墜された。当局者によれば、6人の搭乗員全員は緊急脱出に成功し、救助された。容体は安定している。

早期終結目指し説得へ

アラブ首長国連邦(UAE)とカタールは、イランに対する米国の軍事作戦を短期間にとどめるよう、トランプ大統領を説得する働きかけを水面下で同盟国に行っている。事情に詳しい関係者が明らかにした。

この2国は戦争の速やかで外交的な終結を実現するため、幅広い連合の構築を目指している。戦争の地域全体への拡大やエネルギー供給への衝撃の長期化を回避することが念頭にあるという。

原油・ガス供給への影響拡大

サウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコは、ラスタヌラ製油所の操業を停止した。事情に詳しい複数の関係者が明らかにしたもので、この地域でのドローン攻撃を受けた措置だという。

ラスタヌラはサウジ最大級の製油所で、日量55万バレルの原油処理能力を持つ。サウジアラムコは損傷の状況を検証中で、操業停止は予防的な措置だと、非公表の情報だとして匿名を要請した関係者が語った。敷地内では火災が発生したが、鎮火に向かっているという。

カタール国営エネルギー企業のカタールエナジーは、国内最大のガス田があるラスラファン複合施設が攻撃を受け、LNGの生産を停止したと明らかにした。カタール国防省によると、同複合施設内の発電所の貯水タンクやエネルギー施設が、ドローン(無人機)攻撃の標的となった。

一方、中東から中国への原油輸送コストが過去最高水準に達した。イランを巡る中東地域の戦闘が、ホルムズ海峡の航路を混乱させているためだ。中国の輸送運賃は、戦闘開始前の3倍以上の水準に値上がりしている。

金融市場への影響

イランへの攻撃開始から初めての取引となった2日の米金融市場では、中東での紛争激化を受けて原油価格が大幅に上昇。インフレ再加速への懸念から、国債相場は急落(利回り上昇)している。市場では米利下げ観測が後退し、ドルが買われた。円は対ドルで一時157円75銭まで下げた。

世界のクレジット市場も影響を受けている。既に人工知能(AI)やプライベート市場を巡るリスクでぜい弱化しつつあった同市場は、さらに悪化している。

日本を除くアジアの投資適格ドル建て債のスプレッドは7カ月ぶりの高水準に拡大した。同債券に対するクレジットデフォルトスワップ(CDS)は、9月以来の拡大幅となり、欧州でも上昇した。

中国の反応控えめ

ここ数カ月、中国がイラン向けに防空システムを輸送しているという報道や、ミサイル推進剤の原料を輸送しているといった主張が飛び交っているが、中国製兵器がイランを巡る戦闘に配備されたとの証拠は、今のところ確認されていない。習近平国家主席は、中国の海上原油供給の約13%を占めるイランを攻撃した米国を非難するにとどめ、公的な支援は限定している。

シンガポールのS・ラジャラトナム国際研究院のヤン・ジー研究員は「中国がイランにとって主要な武器供給国だとは言い難いが、軍民両用技術は供給している」と指摘したうえで、「中国は対イラン制裁に加え、スンニ派湾岸諸国やイスラエルとの関係への配慮による制約もある」と語った。

米同盟国は難しい選択

英国軍のキプロス基地は無人機(ドローン)の攻撃を受けた。フランス軍が駐留するアブダビの基地施設も標的となった。イタリア軍が展開するクウェートの基地も被災した。ホルムズ海峡の外側で船舶が列をなす中で、サウジの石油施設が攻撃に遭い、バーレーンやカタール上空にもミサイルが飛び交う。ペルシャ湾岸地域の空域は閉鎖された。

戦争の当事国ではないと主張する国々も既に巻き込まれ、領内の基地やインフラ、住民がイランの報復攻撃にさらされている。米国の同盟国はある時点で、選択を迫られるだろう。米軍の活動をどの程度まで受け入れるのか。「防衛」支援をどこまで拡大するのか。自国の領土が攻撃された時、どう対応するのか。戦闘が長引くほど、傍観を続けることは難しくなる。

試される米経済の耐久力

トランプ米大統領による対イラン戦争は、中間選挙を8カ月後に控えるなか、有権者の不満が高まる経済情勢にさらなる打撃を与えるリスクをはらんでいる。

米国民にとって最も大きな影響は、ガソリン価格の上昇という形で表れる公算が大きい。底堅さを保ってきた米経済への影響を左右する最大の要因は、戦争がどの程度長期化するかだ。それが原油や天然ガスの供給停滞の度合いを決め、ひいては米国民が支払うガソリンや天然ガス価格を左右する。

インフレ再燃に警戒を強めている米連邦準備制度理事会(FRB)にとっても新たな難題だ。紛争が長期化し、サプライチェーンの混乱が再び広がれば、より広範なリスクが生じかねない。

原題:Trump Says US Will Do ‘Whatever It Takes’ in Iran Campaign(抜粋)

(米同盟国の対応に関する記事を追加して更新します)

--取材協力:Golnar Motevalli、Courtney Subramanian.

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