米・イスラエルがイラン攻撃、日本経済へはエネルギー価格を通じて波及へ
2月28日に米・イスラエルがイラン攻撃、最高指導者のハメネイ師が死亡、ホルムズ海峡が実質的に封鎖状態に陥ったと報じられるなど地政学的緊張が高まっている。日本経済への影響として第一に考えられるのは、原油をはじめとした資源価格高騰を通じた経路だ。日本の原油輸入は多くを中東に依存しているほか、ホルムズ海峡の封鎖状態が長期化するようであればエネルギー供給減少を通じた国際市況への影響が避けられない。執筆時点(2日9時15分)で、WTI先物価格は一時75ドルをつけ、先週末から12%超上昇した。
戦況の行方は現段階で不透明である。トランプ大統領は4週間程度で収束するとの見通しを示している一方、目的を達成するまで攻撃を続ける旨も示しており、長期化のリスクも相応にある。
本稿では、現下の状況を踏まえ、原油高騰シナリオとして60ドル/bblから80ドル程度に上昇するシナリオに加え、戦況が悪化することを想定した100ドル、130ドルへの上昇シナリオをそれぞれ設定し、主要経済変数への影響をマクロモデルで試算した。コストプッシュインフレの影響で消費や設備投資に下押し圧力が及ぶほか、貿易収支にも赤字方向の圧力がかかる。実質GDPへの影響は原油80ドルへ上昇の場合には1年目▲0.21%、2年目▲0.35%(いずれもベースラインとの乖離率)となる。戦況悪化を想定した130ドルシナリオの場合には、1年目▲0.58%、2年目▲0.96%と実質GDPを1%近く押し下げるインパクトが及ぶ。初年度の消費者物価への影響は80ドルシナリオで+0.22%、130ドルシナリオで+0.63%だ(2年目にはコストプッシュによる需要低迷で物価上昇圧力は減退)。
目下では食料インフレの落ち着きの中で、長らくマイナス圏の続いてきた実質賃金のプラス転換が見通せる状況になっていた。仮にイラン情勢悪化を通じた原油価格への影響が深刻化する場合には実質賃金のマイナス幅が再拡大する展開も生じうる。また、コストプッシュを通じた需要減退圧力を招く点、経済情勢の不透明感が増す点で日本銀行の利上げには逆風となる可能性が高い。


(※情報提供、記事執筆:第一生命経済研究所 経済調査部 主席エコノミスト 星野卓也)