アラブ首長国連邦(UAE)には最近数年、ウォール街の幹部やトレーダーが大挙して押し寄せた。中東地域で最も安全な取引拠点という触れ込みで、ミサイルやドローン(無人機)が飛び交う危険に直面するとは、ほとんど誰も想像しなかった。

事情に詳しい関係者によると、複数のヘッジファンドが業務継続プランの見直しを即座に着手した。ゴールドマン・サックス・グループやJPモルガン・チェース、シティグループ、野村ホールディングス(HD)を含むグローバルバンクは、在宅勤務を行員に指示し、他の企業はスタッフに屋内退避し、外国大使館や軍事施設周辺のような注意を要する場所を避けるよう促した。

首都アブダビとドバイの上空では、週末に防空システムが飛翔(ひしょう)体を迎撃し、人工島パームジュメイラを含む高級観光地や商業地区の近くで破片と煙が確認された。ドバイ国際空港では空爆とみられる攻撃で施設が一部損傷し、アブダビでは外交使節団が入居するエティハド・タワーズの外壁にドローンの破片が衝突した。

米軍とイスラエル軍によるイランへの大規模攻撃と、最高指導者ハメネイ師殺害を受け、同国は中東各地を標的とするかつてない報復攻撃に踏み切った。近隣の不安定な状況からUAEが隔離されているという認識がヘッジファンドやプライベートキャピタル、グローバルバンクを引き付け、UAEの急速な台頭を支えてきたが、そのイメージが崩れた。

シンガポールを拠点とするヘッジファンド運営会社「ダイモン・アジア・キャピタル」の上級幹部らは2月28日夜、緊急のオンライン会合を開き、衝突が全面戦争に発展した場合の対応などを協議した。軍での経験を持つケネス・カン副最高経営責任者(CEO)兼マネジングパートナーが、中東各地のスタッフに送付したガイドラインのドラフト作成を支援した。

ドバイ国際金融センターのオフィスには17人が勤務するが、フライトの欠航や空域閉鎖により移動中に足止めされたスタッフもいた。従業員に屋内にとどまり、ガラス窓や軍事施設、大規模な集会を避けるよう推奨する対策は主に常識的な内容だ。対象となる従業員は、移動経路を会社が把握し必要な支援ができるよう毎日安否確認を行い、都市を離れられないスタッフにはホテルルームが確保された。

「これまで新型コロナや香港の騒乱への対応を迫られたことはあるが、戦時関連の安全の問題は今回が初めてだ」とカン氏は話す。

ドバイはここ数年、急成長するヘッジファンドの拠点として台頭してきた。 ドバイ国際金融センターには、ミレニアム ・マネジメントやエクソダスポイント・キャピタル・マネジメントなど100社余りが拠点を置き、ケネス・グリフィン氏率いるシタデルも同地でオフィスを開設する計画を明らかにした。アブダビもスケールアップしている。

原題:Hedge Funds, Banks Forced Into Contingency Mode in the UAE (1)(抜粋)

--取材協力:Zainab Fattah、Alex Dooler、Omar El Chmouri、William Shaw、Ambereen Choudhury、Filipe Pacheco、Laura Gardner Cuesta.

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