(ブルームバーグ):米Netflixがワーナー・ブラザース・ディスカバリー(WBD)の買収合戦から撤退したとのニュースは、ハリウッド関係者の多くにとって驚きだった。
Netflixは昨年12月、WBDのスタジオ部門とストリーミング事業「HBO Max」を買収することで合意。Netflix共同CEO(最高経営責任者)のテッド・サランドス氏は、ホワイトハウスへの対応を含め一連の記者会見や会合でこの取引について説明していた。
同氏は撤退後初のインタビューで、ブルームバーグ・ニュースに対し、撤退の判断は実際にはもっと早い段階で下されていたと明らかにした。Netflixが事前に策定していた複数の入札シナリオに基づくものだったという。

WBD買収を競い合っていたパラマウント・スカイダンスが先月26日に「より高いオファーを提示し、その内容の詳細を受け取った時点で、われわれにはすぐに分かっていた。何をすべきかは明確だった」とサランドス氏は述べた。
同氏によると、パラマウントは大企業を買収するため数百億ドル規模の借り入れを行いつつあり、同社のデービッド・エリソンCEOは160億ドル(約2兆5000億円)のコスト削減と数千人規模の人員削減を迫られることになる。サランドス氏は「制作本数は減り、働く人も減るだろう」と語った。
Netflixの買収提案は、同社が歴史的に映画館を十分支援してこなかったことなどを理由に、ハリウッドの労働組合や政治家、ジェームズ・キャメロン監督ら業界の著名人から強い反発を受けた。
ただサランドス氏は、ここ数カ月にわたり映画配給会社と重ねてきた対話がNetflix作品の劇場公開拡大につながる可能性が高いとの考えを示し、「今後、一緒にできる面白いことがたくさん見つかると思う」と話した。
ブルームバーグ・ニュースなどは、米司法省がNetflixの事業慣行について広範な調査を行っていると報じていたが、サランドス氏はその調査はすでに終了したと説明し、「問題はない」と述べた。
以下はサランドス氏とのインタビューの要旨(明確にするため一部を編集している)。
撤退を決めたのはいつか
われわれが支払ってもよいと考える価格帯は非常に狭い範囲に設定しており、当初合意時にその水準で提示した。その後は、取引を迅速化するため現金案に切り替えた点を除き、ほとんど動かしていない。参入時も撤退時も納得している。
2月26日に相手がより高いオファーとその詳細を提示したと通知を受けた時点で、何をするかは明確だった。
どのようなシナリオを事前に想定していたのか
あらゆるシナリオ分析を行っていたため、取締役会に持ち帰る必要はなかった。われわれの方針は決まっていた。
相手の資金調達には多くの不確実性があった。価格面でどこまで応じるのか。他の論点は解決しても価格は引き上げないのか。私が予想していなかったのは、1110億ドルの取引に個人保証を付けたことだ。前例のない措置だ。それにより他の論点は解消され、さらに価格も引き上げられたことが明確になった。
ワシントンを訪れていたが
なお、相手側は最終提案ではないことを非常に明確にしていた。昨年12月5日にわれわれが締結した合意は最終提案であり、その通りだった。
あなたは撤退当日にワシントンにいたが、司法省やトランプ大統領は何と言ったのか。政治的な反発の高まりは判断に影響したか
政治的反発が高まっていたとは思わない。そうしたナラティブ(物語)が広がっていたに過ぎない。われわれは通常の規制審査プロセスを進んでいた。2月26日に司法省との予定された会合があり、数週間前から設定されていた取引に関する質問への対応だった。極めて生産的な会合で、特別なことはなかった。ワシントンに急行するような変化はなかった。
上院公聴会では共和党議員が強く反対し、共和党の州司法長官らが反対書簡を出した。しかし、この取引を承認するのは司法省であり、上院や委員会ではない。大統領は完全に中立だった。司法省は通常通りの手続きを進め、極めて慎重だった。
1~2年に及ぶ法廷闘争も辞さない構えだったのか
規制面で明確な道筋があると確信していた。
司法省の調査は終了したとの理解か
そうだ。問題はない。
パラマウントの取引は承認されると思うか
分からない。推測はしたくない。
承認されるべきだと思うか
われわれの取引が厳しく検証されたように、同様に厳しく調べられるべきだ。あらゆる観点から同じ顕微鏡で見るべきだ。われわれは証言を求められ、私もエリソン氏も招致された。私は出席した。
仮に買収が成立すれば、ハリウッドやエンターテインメント業界にどのような影響があるのか
この取引は大規模なコスト削減に依存している。われわれはワーナーの帳簿を精査したが、最大のコストは制作現場の人件費だ。160億ドル超の削減が見込まれている。資金提供者には18カ月程度で実行すると説明している。制作は減り、働く人も減る。
なぜ支持を広げるのに苦労したのか
多くの人はワーナーが誰にも売却されること自体を望んでいなかったのだろう。この数年、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)やストライキ、利益圧縮に伴う制作縮小など、業界は厳しかった。さらなる混乱を望む人はいなかった。われわれが買収主体だったため、矛先が主に向けられた。
映画館の問題が繰り返し取り上げられた。買収しない今、戦略は元に戻るのか。それとも劇場公開を拡大する計画は続くのか
私が話してきたことは、劇場配給部門の買収を前提としていた。ただ、劇場オーナーと対話を重ねられたのは大きな収穫だ。以前はその必要がほとんどなかった。
「ストレンジャー・シングス 未知の世界」や「KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ」のようなクリエーティブな取り組みを進めている。来週には米国と日本で「ONE PIECE(ワンピース)」を一部劇場で公開する。今後も新しいことに取り組めるだろう。これまでやってこなかったことも視野に入る。
最初からパラマウントに過大な債務を背負わせて高値で買わせ、28億ドルを得て撤退する計画だったとの臆測もある
28億ドルを得るもっと簡単な方法はある。世界50の規制当局との手続きを進め、多くの時間と労力を費やした。ワーナーの上位200人の社員とも会った。グレッグ・ピーターズ共同CEOと私でだ。われわれはこの資産を本気で望んでいた。ただ、必要だったわけではない。
原題:Netflix’s Co-CEO Explains Why He Quit the Warner Bros. Fight(抜粋)
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