(ブルームバーグ):トランプ米大統領が中国を訪問し、習近平国家主席と会談するまであと1カ月。
こうした外交日程の下で、米国が1月にベネズエラのマドゥロ大統領を拘束したのに続き、イスラエルと共に開始した対イラン攻撃で最高指導者ハメネイ師が死亡したことは、米中の緊張を一層高める恐れがある。
マドゥロ氏のベネズエラ、ハメネイ師のイランのいずれも、中国の友好国だ。
中国の王毅外相は1日、ハメネイ師の死について、「主権国家の指導者を公然と殺害し、体制転換を図ることは容認できない」と述べた。王氏はロシアのラブロフ外相との電話会談で、米大統領が中東を「奈落」に追いやる危険があるとも警告した。
トランプ氏が今月31日に北京を訪問するのを前に、双方の当局者が関係安定化を図る微妙な局面にあって、中国外相の米国批判は際立っている。
トランプ氏が今年に入り、中国政府と関係の深い指導者2人を短期間に相次いで排除したことで、状況は複雑化している。

イランやベネズエラは中国にとって重要な貿易相手国や防衛パートナーとは見なされていない。だが、トランプ氏が進める体制転換の動きを受け、次の標的が習主席と一段と緊密な関係を持つ世界の指導者となる可能性があるのではないかとの疑念が浮上している。
コンサルティング会社アジア・グループのパートナー、ジョージ・チェン氏は「全てが正常で問題ないと習氏が感じ、トランプ氏の訪問を喜ばしい気分で迎える準備ができるだろうか」と指摘。さらに、「トランプ氏がそもそも訪中するのであれば、投資家は今回の訪問で同氏が達成できることについて期待を調整すべきだ」と述べた。
チェン氏はまた、習氏が原油供給の確保を図る中で、イラン情勢の不安定化は中国とロシアの関係を一層強固にする可能性が高いとの見方を示した。両国は週末、国連安全保障理事会の緊急会合開催を要請。ロシアは「米国によるいわれのない武力侵略行為」と呼ぶ事態を開催要請の理由に挙げた。
米国とイスラエルによるイラン攻撃は、エネルギー供給の要衝地域に混乱を招き、世界経済を不安定化させると懸念される。世界の海上石油取引の約4分の1を扱うホルムズ海峡では、船舶が航行を回避。中国は海上輸送原油の約13.4%をイランから購入しており、混乱が長期化すれば、不動産市場の低迷や低調な個人消費に直面する国内企業に打撃となる恐れがある。
米調査会社ユーラシア・グループのシニアアナリストで、元米外交官のジェレミー・チャン氏は中国について、「ホルムズ海峡の封鎖状態が長期化すれば世界経済に圧力がかかることを踏まえ、原油の流れが早期に再開されるよう働きかける可能性が高い」と分析。また、トランプ氏の軍事行動が習氏との会談に水を差すことになるとの見方を示した。
さらに、「これによりトランプ、習両氏の会談で有意な成果が得られるとの期待は一段と低下するだろう。ただ、会談自体はなお実施される可能性が高い」とコメントした。
不安定化
中東での戦争に加え、アフガニスタンとパキスタンの間で新たな衝突が発生するなど、中国は自国周辺で拡大する紛争にも直面している。中国はこのほか、台湾を巡る高市早苗首相の発言を受け、日本との外交摩擦を抱えている。
こうした状況は、中国の関心がイランに長くとどまらない可能性を示している。
中東研究所のシニアフェロー、ジョン・カラブレース氏は「一段と大きな懸念材料は、中国の周辺地域で不安定さが増していることだ」と論評。「ロシアと北朝鮮の軍事的連携が強まる中で、中国の行動余地は狭まり、同国が完全には制御できない朝鮮半島でのエスカレーションリスクが高まっている」と述べた。
一方、トランプ氏の動きは、米国の中東における影響力をあらためて示すものとなっている。バイデン前政権の不関与は、習氏にとって同地域での存在感を高める機会となっていた。
習氏は影響力拡大の一環として、2023年にイランの上海協力機構(SCO)加盟を主導。その後、主要新興国から成るBRICSへの参加も実現させた。これらの枠組みは、国際舞台での米国の影響力に対抗するため中国が展開してきたものだ。
もっとも、こうした関係強化にもかかわらず、米国が昨年6月にイランの核施設を攻撃した際、中国政府は米国を非難した上でイランとの通常の通商関係を継続するにとどまり、中国の支援には限界があることを示した。

こうした姿勢は、中国にとって最も近いパートナーにも及んでいる。習政権はロシアのプーチン大統領によるウクライナでの戦争に外交面での支持を与え、軍民両用物資をロシアに供給してきたが、米国の制裁を回避するため、武器の直接供与は慎重に避けている。
習氏の抑制的な対応は、トランプ氏との首脳会談に安定をもたらす可能性がある。そうなれば、1年間の貿易休戦を維持することにつながり、米国の対中関税率を低位に抑えるとともに、中国から米国の工場への重要鉱物の供給を確保する効果が見込まれる。
ワシントンのシンクタンク、スティムソン・センターの東アジア・プログラム共同ディレクターで、中国プログラム責任者を務めるユン・スン氏は、「中国はトランプ氏との関係でうまくやっている」と述べるとともに、「現時点で中国がイランを支援して米国と戦うことはない」と語った。
原題:Trump’s Removal of Another Xi Friend Complicates Planned Summit(抜粋)
--取材協力:Nectar Gan、Alan Wong、Shamim Adam.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
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