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CEOからのヒント
米アップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)は、ウエアラブル人工知能(AI)デバイスへの進出において、「Visual Intelligence(ビジュアルインテリジェンス)」が決定的な機能になるとの考えを示唆している。
アップルのように秘密主義で知られる企業のトップでありながら、クック氏は有益なヒントをさりげなく示してきた。
2013年を振り返ってみればいい。スマートウオッチ「Apple Watch」が発表されるかなり前、クック氏は「センサー分野全体が爆発的に拡大する」と語っていた。
アップルは当時、心拍数モニタリングや血圧測定、血糖値測定などの機能を備えた、手首装着型の医療ラボのようなスマートウオッチを極秘裏に開発しようとしていた。そのため医療用センサー業界から人材を積極的に引き抜いていた。
Apple Watchは発売当初、医療機器ではなかった。しかし、アップルはクック体制で初の主要な新製品カテゴリーとなった同製品に着実にセンサーを追加し、最近では高血圧検知や睡眠時無呼吸症候群の警告機能を導入した。
アップルは現在も、半導体部門内の極秘チームで、非侵襲型の血糖値モニタリングを実現するセンサーの開発を進めている。
同社がその後、新たな製品カテゴリーである複合現実(MR)ヘッドセットに乗り出した際も、クック氏は完全に口を閉ざしてはいなかった。
最終的に「Vision Pro」が融合することになる拡張現実(AR)と仮想現実(VR)の利点について繰り返し語っていた。16年には、ARは1日3食を取るのと同じくらい不可欠な存在になると述べている。
アップルは開発に数十億ドルを投じたVision Proを23年に発表、24年に発売した。同製品はヒット商品とは言い難いものの、同社にとって重要な関心分野であり、クック氏がアップルとしての存在感を示したいと明確に考えていた領域だった。
そして今、クック氏は3つ目の新カテゴリーであるAIウエアラブルについて示唆し始めている。これらのデバイスは、アップルがビジュアルインテリジェンスと呼ぶ、周囲の環境を認識し、それを活用して行動を起こすAI技術を中核に据えるものだ。
同社は24年、「Apple Intelligence(アップルインテリジェンス)」の一環として「iPhone 16 Pro」にビジュアルインテリジェンスを初搭載し、その後ほかのデバイスにも展開した。
現在の機能では、写真やスクリーンショットを撮影し、その内容についてOpenAIの対話AI「ChatGPT」を通じて質問できる。またグーグルによる画像の逆検索も容易に実行でき、アイテムの特定などに役立つ。
アップルは独自のビジュアルモデルの開発を進めており、より高度な「AirPods」やスマートグラス、ペンダント型デバイス(コンピュータービジョン用カメラや各種センサーを搭載し、首や身体に装着できるもの)を含む今後のAIデバイス群の中核にこの技術を据える方針だ。
筆者は昨年、同じ理由からカメラ搭載のスマートウオッチを開発していると報じたが、これはその後、棚上げされた。
これらのカメラで可能になる機能として、最も基本的な用途は、皿に載った料理を撮影して食材や料理名を識別することなどが考えられる。
より高度な用途としては、デバイスが視認した内容に基づき、特定の作業を行うための具体的な指示を出すことが挙げられる。例えば、単に何フィート先と示すのではなく、特定の目印を通り過ぎるよう案内する高度なターンバイターン方式の道案内が可能になるかもしれない。
また、特定の物体や場所に近づいた際に、やるべきことを通知することも考えられる。
クック氏はホリデー商戦期の決算説明会で、この技術への関心を早くも示していた。AIやアップルインテリジェンスについての議論の中で、ビジュアルインテリジェンスを特に取り上げた。
「最も人気のある機能の1つがビジュアルインテリジェンスだ。iPhoneの画面上のコンテンツを通じて、ユーザーがこれまで以上に学び、さまざまなことを実行できるよう支援する。検索やアクション、アプリ全体での質問への回答をより迅速に行えるようにしている」と述べた。
最近の全社会議でも、クック氏はアップルがAI分野で「疑いようのない」かつ「巨大な優位性」を持っていると語り、アクティブデバイスのインストールベースが25億台を超えたと強調。アップルインテリジェンスに再び言及し、ある特定の機能を称賛した。言うまでもなく、ビジュアルインテリジェンスだ。
これは偶然ではない。これまでアップルは、OpenAIやグーグルのテクノロジーを用いる以外、ビジュアルAIで大きな取り組みをしてこなかった。
それにもかかわらず、クック氏はこの機能をアップルのAI戦略の中核として強調している。この分野で近く動きが加速しなければ、自身の発言の前面に押し出すことはないはずだ。
これらの新しいアップル製デバイスが実際に登場するまでには、なお数カ月、あるいはそれ以上かかるだろう。
しかし登場すれば、クック氏が次の展開に向けて周到に準備していたことは明らかになる。Apple WatchやVision Proの時と同様だ。発言自体は具体性に乏しいことが多いが、その裏には常にそれ以上の意味が込められている。
今年初の製品発表会、3日間連続で実施
アップルの26年最初の大型製品イベントは3月4日に予定されている。ただ実際には、それよりやや複雑な展開となりそうだ。
関係者によると、同社は3日間にわたる集中的な発表を計画している。2日(月)と3日(火)、4日(水)にそれぞれ新製品を披露し、最終日の4日には発表済み製品のハンズオン(実際に手にして触れてみる)体験を提供する見通しだ。
同社は4日のイベントを「特別なアップルエクスペリエンス」と位置付け、ニューヨークとロンドン、上海の各拠点に一部の報道関係者を招く。
デアリング・ファイアボールのジョン・グルーバー氏は、3日間にわたる集中的な発表の可能性に言及し、水曜日の製品発表は異例だと指摘した。アップルのイベントは通常火曜日に開催されるためだ。
アップルの招待状からもそうした意図が読み取れる。3月4日については、イベントではなくエクスペリエンスと明記している。
また、主要な製品基調講演の際には通常、ウェブサイト上でライブ配信を告知するが、今回はそれが行われていない。つまり、来月2日の週は製品ニュースが相次ぐ忙しい3日間になるが、大規模な単一の基調講演は実施されない公算が大きい。
実際に発表される製品については、少なくとも5製品が登場するとみられる。ハードウエアやソフトウエア、半導体にまたがる可能性がある。中でも新型の低価格パソコン(PC)「MacBook」が発表される見通しだ。招待状には同機種の発売カラーが含まれているためだ。
また、新デザインを披露するのでなければハンズオンの機会を設ける理由は乏しい。現時点でアップルの直近の製品計画の中で外観上の刷新が見込まれるのはこのノートPCだけだ。単にチップが高速化しただけの製品で、いわゆるインフルエンサーを招く意義は小さい。
2026年春に登場予定のその他の製品としては、「iPhone 17e」、「M4」チップ搭載の「iPad Air」、「A18」プロセッサー搭載のエントリーモデル「iPad」、刷新された「MacBook Pro」、そして新型「MacBook Air」がある。
17eは3月の発表が確実視されており、さらに早まり得る。前モデルの16eは25年2月中旬に発売された。
MacBook ProまたはMacBook Air、あるいはその両方が披露される可能性も高い。Proは数カ月前から更新時期を過ぎており、MacBook Airも例年この時期に新モデルが投入される。iPadも製造面では出荷準備が整っている。
26年前半には、Mac関連でさらに2製品が見込まれている。刷新版のデスクトップPC「Mac Studio」と新型「Apple Studio Display」だ。
Studio Displayはすでに出荷可能な状態にあり、Mac Studioもそれに近い段階にある。世界各地のアップルストアで外付けモニターの在庫が極端に不足していることも、近く更新がある兆候と言える。
ただ、3月上旬の発表ラッシュの中で、両製品を同時にお披露目するのは過剰かもしれない。
複数の小売店関係者によると、製品在庫の枯渇は、近く後継機種に置き換わることを裏付けているという。
在庫が枯渇状態にあるのは「iPhone 16e」や「iPad Air」、13インチおよび15インチの「M4 MacBook Air」、14インチおよび16インチの「M4 Pro」、「M4 Max」搭載MacBook Proだという。
また、Apple Watchの複数のバンドも在庫が減っている。これらは通常、毎春に新色や場合によっては新デザインで刷新される。仮にこれらの製品更新が3月上旬に行われなくても、その後まもなく実施される可能性が高い。
(これはマーク・ガーマン記者のニューズレター「Power On」のサブスクライバー専用版の抜粋です。アップルに関する特ダネや消費者向けテクノロジー情報、シリコンバレーの内部事情などに関してガーマン記者が執筆するもので、個人的見解も含まれます)
原題:Apple’s Next Big Thing Is a Major Push Into Visual AI: Power On(抜粋)
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