トランプ米大統領が発表した米オハイオ州で米最大のガス火力発電プロジェクトを建設するとの日本政府との合意は、拘束力のある確約をまだ確保しておらず、機器サプライヤーの確定も必要となる。州当局や送電網事業者にとっても、寝耳に水の計画だ。

日本のメディアや経済産業省は、ソフトバンクグループやパナソニックホールディングスなど、少なくとも13の日本企業・団体がこの330億ドル(約5兆1300億円)規模のプロジェクトに関与していると伝えている。

しかし、ブルームバーグ・ニュースの取材に対し、これらの企業などはいずれも、拘束力のある契約に署名したことや投資を確約したことを認めなかった。

ホワイトハウス当局者は、プロジェクトは立ち上げられたばかりであり、大半のサプライヤーとはまだ契約を結んでいないが、進展に伴い契約は締結されるとの見通しを示した。

トランプ政権下では、勝ち誇るような発表や巨額の数字を盛り込んだ計画に対し、裏付けとなる具体的な詳細がすぐに示されない状況が常態化している。

トランプ氏は正式な合意文書が整う数カ月前から通商合意をアピールすることが多いが、こうしたやり方は米電力業界が長年続けている慣行と相いれない。

電力開発事業者は通常、長期化する許認可の遅れや主要機器の順番待ちに対応しながら、正式発表前に段階的かつ慎重な手順を踏む。

発電事業者の系統接続を承認する地域送電網の運営事業体PJMインターコネクションは、オハイオ州ポーツマスで計画されているトランプ氏支援のプロジェクトについて通知を受けていないと説明。広報担当のダニエル・ロックウッド氏は電子メールで、PJMはこのプロジェクトを把握していなかったとコメントした。

50メガワット超のプロジェクト建設を承認するオハイオ州電源立地委員会も同様だ。同委員会は、トランプ政権が説明する内容に合致する申請を受け取っていないと、広報担当のマシュー・バトラー氏が18日に語った。ポーツマス地域での案件も、その規模に相当する案件もないという。

天然ガス生産で米2位のEQTのトビー・ライス最高経営責任者(CEO)は、多くの計画がまず打ち出され、その後に詳細が埋められると指摘した。パートナーをそろえ、取引をまとめるには時間がかかる可能性が高いとの見方を示した。

オハイオ州で計画される出力9.2ギガワットのガス火力プロジェクトは、電力需要の急増と電力価格上昇が主要な政治課題となる中で、中間選挙を控えトランプ氏にとって大きな成果となり得る。

ただ、投資家集めに加え、タービンや関連機器の確保も必要になるが、需給逼迫(ひっぱく)で納期が2030年代にずれ込んでおり、先行きは不透明だ。

資金調達の方法

今回発表されたのは、昨年の日米通商合意に基づき日本が約束した対米投資5500億ドルの「1号案件」。来月には高市早苗首相がワシントンを訪問する予定で、政府側としては日米間の大型案件や協力関係をアピールしたい考えだ。

ブルームバーグの取材に対し、ソフトバンクグループは現時点で詳細については差し控えるが、「日米両政府により発表されたガス火力プロジェクトに関して、各関係者と幅広く協議および準備」を進めているとコメント。

東芝は、詳細については差し控えるが、条件に見合う範囲で前向きに取り組むとしている。

日立製作所は、日米政府間の対米投資枠組みのプロジェクトが着実に進んでいることについて歓迎し、第一陣の一つである「AI用データセンター等に電力を供給するためのガス火力プロジェクト」の実現に向けて、日立が期待されていることを光栄に感じているとコメント。

日立は、米国での送電網の強靭化や電力供給の安定化に携わってきた豊富な実績があり、当該プロジェクトについても、日立のケイパビリティーを真の「One Hitachi」で結集し、日米両政府と連携し、米国の社会課題を解決するために貢献していくと表明した。

日本経済新聞は先に、発表されたガス発電事業を進めるため、ソフトバンクグループなど「20社程度の連合体」をつくることが分かったと報じていた。日経によると、パナソニックや村田製作所、住友電気工業、TDKなどの企業が含まれるという。4社はいずれもコメントを控えた。

三菱電機の広報担当者は、同社が関心を寄せているのは発電機や送配電システムの供給だとし、具体的なオファーはこれからだが、オファーを頂いたら前向きに検討していくと話した。

オハイオ州のプロジェクトは、資金調達方法の詳細が依然として明らかになっていない。日本のメディア報道によれば、国際協力銀行(JBIC)や民間銀行が融資を行う見通しで、日本貿易保険(NEXI)が保証を提供する可能性があるという。

NEXIの担当者は、JBICおよび日本政府と連携してこのプロジェクトに取り組んでいると述べたが、詳細は明らかにしなかった。JBICはコメントを控えた。

日経によると、みずほ銀行や三井住友銀行、三菱UFJ銀行などの国内メガバンクもコンソーシアムに参加する。各行の広報担当者はコメントを控えた。

原題:Trump’s $33 Billion Ohio Gas Project Is Very Short on Details(抜粋)

--取材協力:吉田昂、香月夏子、Brian Eckhouse、Andrew Janes、Julian Hast、Min-Jeong Lee、古川有希、稲島剛史、鈴木英樹、望月崇.

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