トランプ米大統領が核開発問題を巡りイランに合意を迫る中、米軍は中東に2隻の空母、戦闘機、給油タンカーなど大規模な戦力を配備し、攻撃の選択肢を確保している。トランプ氏は、イランに対し核開発計画を巡る合意に応じるまで「最大で10日から15日」との期限を示した。

トランプ氏は19日、米大統領専用機エアフォースワン内で記者団に対し「われわれは合意を得るか、さもなければ彼らにとって不幸な結果になる」と発言。期限については、交渉継続を認めるのは「大体」10日から15日で、それが「最大」だとの認識を示し、「それで十分な時間だと思う」とも語った。

今回の米軍の中東展開は、2003年にイラク侵攻を前に兵力を集結させて以来、例のない規模となる。ベネズエラのマドゥロ大統領(当時)を追放する数週間前、同国沖で展開したものをはるかに上回る規模だ。

米国が地上部隊を派遣する可能性は低いものの、今回の増強は、トランプ氏がイスラエルと協力し、数日間にわたる持続的な作戦を行う選択肢を確保していることを示唆している。昨年6月に米軍がイランの核施設に対して行った一夜限りの攻撃よりはるかに大規模な持続的作戦を軸に進んでいるが、米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)の19日の報道によると、トランプ氏はイランを交渉の場に引き戻すことを狙って限定的な早期攻撃案も検討しているという。

トランプ氏は19日朝の演説で「おそらくわれわれは合意に達するだろう。今後10日ほどで、その答えがわかるだろう」と語った。

米イラン間の緊張を巡る地政学的懸念の高まりを受け、株式相場は下落し、原油相場の上昇が続いた。国際指標の北海ブレント原油は19日、1バレル=71ドルを上回った。

焦点は、イランがトランプ氏の要求を満たせるか、そして、これほど多くの軍事装備を中東地域に展開したトランプ氏が、後退するよりもむしろそれを使用せざるを得ないと感じる可能性があるかどうかだ。

追跡サイトのフライトレーダー24のデータによると、カタール、ヨルダン、クレタ島、スペインの基地に向かう米軍の輸送機や空中給油機、偵察機、ドローン(無人機)の活動が急増している。

トランプ氏が投入可能な戦力は強力だ。空母エイブラハム・リンカーンには、巡航ミサイル「トマホーク」を搭載可能なアーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦3隻が随伴する。艦載機にはF-35C戦闘機が含まれる。

建造費130億ドル(約2兆円)とされる米史上最も高価な軍艦、空母ジェラルド・R・フォードもミサイル駆逐艦を伴い、搭載機にはF/A-18E、F/A-18Fスーパーホーネット、E-2D早期警戒機、MH-60SおよびMH-60Rシーホークヘリコプター、C-2Aグレイハウンド輸送機が含まれる。

ワシントン近東政策研究所の軍事研究部門ディレクター、マイケル・アイゼンスタット氏は、2隻の空母により「選択肢が増え、必要とあれば、より持続的な作戦が可能になる」と指摘。今回の増強は「交渉でより柔軟になる必要性をイラン側に示すものだ」と述べた。

トランプ氏は18日、ウィトコフ特使と娘婿のジャレッド・クシュナー氏と会い、イランとの交渉に関する最新情報の報告を受けた。米当局者によると、同日にホワイトハウスのシチュエーション・ルーム(作戦指令室)では会議が開かれ、可能な行動についての議論が行われた。また、中東地域に展開する米軍部隊について、3月中旬までに全配置が完了する見込みとの伝達があったという。

手ごわい相手

イランに対する大規模な攻撃に踏み切れば、米国は1991年以来3度目となる中東での選択的な戦争に参画するリスクを負う。しかも、ここ数十年来で最も手ごわい相手との戦いだ。

元海軍戦略将校でハドソン研究所の防衛アナリストのブライアン・クラーク氏は「イランの防空網が過去の米・イスラエル空爆でほぼ無力化されているため、米国の空爆戦闘機は、イラン領空をほぼ無傷で飛行できるだろう」と述べた上で、「パイロットが撃墜されるリスクは常に存在するが、より危険なのは艦船だ。イランがフーシ派に提供した巡航ミサイルや弾道ミサイルが、ペルシャ湾、アラビア海、紅海で米艦艇に向けられる可能性がある」と語った。

同地域に駐留する数千人の米軍兵士もイラン弾道ミサイルの射程圏内であり、イラン政府は、米軍の攻撃があれば全面的に報復する方針を示している。

米軍資産への攻撃に加え、イランはオマーンとイラン間のホルムズ海峡の封鎖を試みる可能性がある。同海峡は海上石油輸送量の25%が通過する要衝だ。

原題:US Amasses Forces as Trump Says Iran Has Just Days for Deal (1)、Pentagon Amasses Mideast Force as Trump Threatens Iran on Talks(抜粋)

(WSJ紙の報道を追加して更新します)

もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp

©2026 Bloomberg L.P.