日本政府は18日、米国との昨年の貿易・経済合意に基づく対米投資の「1号案件」としてガス火力発電など3件を発表した。投資額は総額360億ドル(約5兆5180億円)規模。対米投資は昨年の米国との関税合意に盛り込まれており、円滑な通商関係を維持するためにも早期の投資決定が期待されていた。

1号案件として選ばれたのは、工業用人工ダイヤの製造プロジェクト(6億ドル)、米国産原油の輸出インフラ・プロジェクト(21億ドル)、人工知能(AI)用データセンターなどに電力を供給するガス火力発電プロジェクト(333億ドル)の3件。人工ダイヤモンドは、自動車や半導体の部素材の加工に使われ、中国への依存度が高い。

赤沢亮正経済産業相は同日記者団に対して、関心を示している企業を明らかにした。ガス火力発電には、東芝、ソフトバンクグループなどが、原油の輸出インフラ・プロジェクトでは商船三井、日本製鉄などが関心を持っているという。人工ダイヤでは、旭ダイヤモンド工業やノリタケの名前をあげた。

 

日本は昨年、相互関税や自動車関税などの引き下げと引き換えに、5500億ドル規模の投資を約束していた。360億ドルは全体の6%規模ではあるが、3月19日に日米首脳会談を控える中、投資合意で前進できたことは重要な意味を持つ。トランプ政権は対米投資が進まなければ、再び関税を引き上げる選択肢も排除していないからだ。

1月には、15%への引き下げで昨年合意した自動車関税や包括的上乗せ関税を再び25%に引き上げると韓国政府に対して警告した。関係者によれば、総額3500億ドル(約53兆4000億円)の対米投資の手続きが進んでいないとみなしたという。

株式市場も前向き

大和アセットマネジメントの建部和礼チーフストラテジストは電話取材で、対米投資の第1弾決定は対米関係の強さやトランプ政権にアピールする上でも重要であり、株式市場も前向きに捉えて良いだろうと話した。

株式市場ではノリタケと旭ダイヤモンド工業の株価がそれぞれ一時16%高、同26%高といずれもストップ高水準まで急騰。三井海洋開発も同12%高まで買われた。日本製鉄や商船三井もそれぞれ同3.5%、同1.8%高と上げ幅を拡大した。

日米両政府は、第1号案件合意の成果を強調する。米商務省が公表したファクトシートでは、原油の輸出ターミナルについて、米国にとって戦略的な利益をもたらすと説明。米国の貿易収支の改善にも寄与するとした。

木原稔官房長官は18日の記者会見で、選ばれた3件のプロジェクトは日米の相互利益の促進、経済安全保障の確保、経済成長の促進といった対米投資の意義にかなったものだと述べた。

不透明感も

一方で、不透明感もある。今回関心を持っていると名前があがった企業が実際に契約を結んでいるかについて、経産省の担当者は各社の事業活動に関わるとしてコメントを控えた。

また資金の流れについても、政府系の国際協力銀行(JBIC)や民間の銀行が資金提供を担い、日本貿易保険(NEXI)が保証するという従来の説明にとどまっており、詳細は明らかになっていない。

(情報を追加して更新します)

--取材協力:横山桃花、堤健太郎.

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