2026年の就職活動は容易ではない。人工知能(AI)利用と大量応募により、多くの履歴書は人の目に触れることなく選別され、面接もボットが担うケースが増えている。

求職者にとっては、応募への返信が減って選考過程の不透明さが増し、AIを使う是非や方法を巡り悩む場面も多い。AIを誤用すれば応募書類が画一的で不自然に見え、不利になる。一方でうまく使えば、応募職種の特定や面接準備などに有効だ。

専門家は、採用する側とされる側の両方でAIを避けて通れない存在と指摘する。真の課題は、AIで様変わりした就職環境をどう乗り切るかを学ぶことだ。

【ステップ1】準備

「ハルシネーション」を避ける

キャリアコーチらは、求職者が自分で履歴書を書いた上でチャットボットに重要なフィードバックを求める方が良いと助言する。AIで履歴書を生成すると、チャットボットが情報を創作し、AIが事実と異なる回答を出す「ハルシネーション(幻覚)」を生じさせるリスクがある。ここで誤れば応募が台無しになり、自分の評判を傷付けかねない。

カリフォルニア州のキャリアコーチ、アレクサ・ロケン氏は、履歴書には前職で担当した顧客数や売上高、予算規模など具体的な数字が必要だと言う。対話型生成AI「ChatGPT」はそうした情報を提供できないからで、具体性こそが他の応募者との差別化につながる。

小細工は駄目

応募者をふるいにかけるソフトウエアに引っかかるよう履歴書にありとあらゆる文言を詰め込むのは愚策だ。古いシステムはキーワードマッチングに依存していたが、大規模言語モデルを活用する最新システムは文脈や意図を読み取る。そのため、職務記述書の表現を丸写しする効果は薄れる。

AIを用いた選考システムに読み取らせようと、キーワードや指示を白文字にし、人間の採用担当者には見えない形で埋め込むのは、逆効果になりかねない。「大半のシステムはこうした小細工を検知するようプログラムされている」とリンクトインのキャリア専門家キャサリン・フィッシャー氏は指摘する。

「AI文体」を排除

カバーレターも履歴書と同様に、AI任せではなく自分の言葉で書くことが推奨される。

AIで下書きを作成する場合は、自身の具体的な経験や成果を盛り込むよう詳細な指示を与えることだ。採用担当者は具体性に共感する。また、AI特有の表現を編集時に除去することも必要だ。大規模言語モデルが生成する文章には、頻繁なダッシュや「~だけでなく~も」といった「AI文体」が散見されるからだ。

AI面接プラットフォーム「リボン」の共同創業者アーシャム・ガラマーニ氏は、AIで作成したことが明らかな文面は「単純なプロンプトで生成し、それ以上の精緻化を考えなかった」という印象を与えると話す。

年齢への先入観に備える

レイオフの増加や物価高を背景に、再就職を目指す中高年層が増えている。リンクトインのフィッシャー氏は、直近10-15年の経験に絞り、肩書より成果や対人スキルを前面に出すべきだと助言する。

また、HotmailやMSNといった古いメールアドレスは年齢を示すサインになり得る。競争が激しい中では、こうしたささいな点が選考結果を左右しかねない。

【ステップ2】応募

AIで求人情報自動検索

リンクトインではプラットフォームにAIが導入されており、複雑なキーワードの組み合わせではなく日常的な言葉で求人情報の検索ができる。「シカゴで保険業界の営業職」といった具体的な検索から、「写真スキルを生かしてサステナビリティーを推進できる仕事」といった広めのプロンプトまで対応する。

また、ChatGPTなどを活用し、対象企業の求人情報を自動で毎日スキャンするAIエージェントを構築することも可能だ。応募は早いほど有利で、採用担当者は応募数を管理するため求人を早期に締め切るケースが増えている。

さらに、数十から数百件の求人に自動で応募できるとうたうサイトには注意が必要だ。自動生成された画一的な履歴書やカバーレターは選考通過率が低く、実際には不適格な職種に応募されるケースが多いという。

チャットボットで適職診断

ChatGPTやClaude、Geminiなどのチャットボットを使えば、履歴書や希望給与条件、性格診断結果を入力して適職の提案を受けられる。予想通りの結果が多い一方で、思いがけない方向性を見いだす場合もある。また、自身の経歴と特定の職務との適合度を評価することもできる。

リモート勤務か出社か

動画投稿アプリのTikTokで話題となった「年収24万ドルで週5日出社」を選ぶか「12万ドルで完全リモート勤務」を望むかという討論は架空のシナリオだが、その判断は現実の問題だ。

求人サイトのインディードで職場トレンド担当の編集者を務めるプリヤ・ラソッド氏は、通勤時間や養育・介護などの家庭事情、応募先の職場が実際にリモート勤務かどうかも考慮すべきだと助言する。採用ペースが鈍化し、対面での就業が再び求められる中で、完全リモート職の求人は減少傾向にある。リモート勤務を強く望むならソフトウエア開発などの分野でより良い機会を見つけられるかもしれない。

【ステップ3】面接

AIで想定問答

面接準備では、チャットボットを使って想定問答を練ることが有効だ。企業研究やキャリア転換の説明を整理する際にも役立つ。ただしAIは基本的に肯定的で、批判的なコメントは少ない。弱点を指摘するよう明確に求めることだ。

ボット面接への備え

人間のリクルーターを模したAI音声エージェントによる面接も増えている。非言語的な手掛かりがないことに戸惑うかもしれないが、事前にChatGPTの「ボイスモード」などで練習しておくとよい。

リボンのガラマーニ氏によれば、AIボット相手の面接対策の多くは人間相手の場合と同じだが、準備はさらに重要になる。AIエージェントの中には事前に候補者を調べ、人間よりも詳細な質問を投げかけるものもある。また、ボットに無礼な態度を取らないよう注意する必要がある。AIが面接相手でも録画は人が確認するため、それが最初の印象になる。

台本読みは禁物

2025年に登場した「Cluely」などの面接支援AIツールは、受け答えをリアルタイムで助けるが、企業側はすでにそれを検知する技術を導入している。

ソフトウエア企業ザピアの採用責任者ボニー・ディルバー氏は「画面を読み上げていることが明らかな場合、信頼性を疑われる」と語る。

一方で、AI活用を公言する企業の場合は、自分の思考の置き換えではなく補完を目的に使うなら好印象を与える場合もあるという。

適応力を示す

最新AIツールを使いこなす人材を求める雇用主は増えている。面接ではAIを活用した業務改善事例を説明し、AI導入の理由や安全対策を具体的に語ると効果的だ。

ディルバー氏は「AI利用の指示を待っているのでは遅い。自ら試し、成果を示すことが重要」と強調する。AIが急速に進化する中、厳しい就職戦線では、現在の知識だけでなく、技術の進化を追い続けられる適応力が求められている。

原題:How to Strategically Navigate the 2026 Job Market With AI(抜粋)

もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp

©2026 Bloomberg L.P.