(ブルームバーグ):選挙は時に状況を明確にする。だが、日本で今回起きたことは本当にまれだ。高市早苗首相は今後数年、国内で大きな障害に直面することなく、何を成し遂げたいのかという明確な構想を持って国政に当たることができる。そのための民意を得た。
成功するか失敗するかにかかわらず、日本が世界の金融システムで果たす重要な役割を踏まえれば、その結果はすべての人に影響を及ぼす。
変化の遅い国と見られてきた日本で、事態は猛烈なスピードで進んだ。高市氏は約4カ月前、自民党の総裁選で勝算が乏しいとみられていた。自民党自体も逆風下にあった。参議院で与党が過半数割れし、自民党は政権維持のため、流動的な連立に頼っていた。
それが今や、自民党は衆議院で圧倒的な過半数を確保した。高市氏はカリスマ性があり、力強いリーダーだ。サッチャー元英首相との比較は妥当だが、英国の鉄の女がこれほど明確な民意を得たことはなかった。

この衝撃の大きさを強調するなら、衆院解散・総選挙に踏み切った判断自体がギャンブルだったという点だ。わずか2週間前、予測市場では自民党が過半数に達する確率はほぼ50%にとどまっていた。

長年にわたる日本の停滞を経て、決定的に重要なのは、誰が権力を握っているのかについて一切の疑いがないことだ。自民党が国を動かし、高市氏が自民党を率いている。
圧倒的な議員数を得た高市政権は、立法上の行き詰まりだけでなく、官僚機構の惰性さえ乗り越えることが可能だ。
良くも悪くも、実現する政策には高市氏の意向が色濃く反映される。日本を長くウオッチしてきたマネックスグループのイェスパー・コール氏は、高市氏は今や、自民党と官僚を、まさに自らが望んでいたポジションに置いたと論じた。
国債と為替
高市氏は日本をどこへ導くのか。日本企業が世界での影響力を取り戻すのを後押しするため、財政支出を拡大する用意をしている。
また、コーポレートガバナンス(企業統治)改革がようやく実を結び、老舗の日本メーカーにかなりの復調をもたらしていることも追い風だ。一方で、債券・為替市場に根強い懐疑論や、インフレ再燃といった制約も抱える。
株式市場は一般に追加の財政刺激を好む。総選挙翌日の9日に日経平均株価が一時5%余り上昇したのは当然だろう。高市氏が自民党総裁に就いて以降の4カ月間、日本株はすでに好調だった。円安を考慮しても、世界の他市場を上回るパフォーマンスを示している。

問題は国債と為替にある。債券市場は追加の借り入れを嫌うため、利回りは上昇する。通常であれば、利回り上昇は資金を国内に呼び込み、円高を招くはずだ。だが、そうはなっていない。
一見すると、これは警戒すべき状況だ。投資家が日本国債を買わず、円も保有しないというのは、国際的な信認が失われた際に典型的に見られる症状だからだ。
今回の選挙がもたらした利点は、権限が明確に一人に集中したことだ。米ブルッキングズ研究所のロビン・ブルックス氏は、日本は政府債務残高が非常に大きいが、国債利回りが人為的に低く抑えられていると指摘する。現状では、市場における財政を巡る懸念は主に円安として表面化している。
もう一つの当面の焦点は、選挙戦で取り沙汰された消費税減税に高市氏が踏み切るかどうかだ。実施されれば財政圧力は高まる。ソシエテ・ジェネラル証券の劔崎仁調査部長兼チーフエコノミストは、あまりに大勝したため、消費税減税を実行しない判断が格段にしやすくなったと分析している。
魅力的であると同時に、潜在的なリスクもはらむ状況だが、最終的な責任の所在が明確に高市氏にある中で、日本がこの局面を乗り切ることは可能だ。

(ジョン・オーサーズ氏は市場担当のシニアエディターで、ブルームバーグ・オピニオンのコラムニストです。ブルームバーグ移籍前は英紙フィナンシャル・タイムズのチーフ市場コメンテーターを務めていました。このコラムの内容は個人の意見で、必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)
原題:A Stunning Mandate Brings Risks, Rewards, Clarity: John Authers(抜粋)
--取材協力:Richard Abbey.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
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