衆院選の投開票が8日に迫る中、有権者の関心を集めているのが高騰する食料品価格の行く末だ。家計の負担が増す中で、与野党は消費税減税を掲げて国民の信を問う。

生活費高騰に対する有権者の不満は、昨年10月に高市早苗政権が発足する前の2回の国政選挙で、自民党の大きな後退をもたらした。この間、当時の政権は公共料金を削減するための補助金を導入したが、食料品価格の異常な上昇が家計への支援効果を相殺した。

総務省が6日発表した昨年12月の消費支出は、物価変動の影響を除いた実質ベースで前年比2.6%減と、2カ月ぶりのマイナスとなった。市場予想は0.3%減だった。食料は2.4%減った。

家計の消費支出に占める食料費の割合を示すエンゲル係数は同月に30.7%となり、過去最高を記録した。2025年年間でも28.6%と過去最高を更新した。

Photographer: Akio Kon/Bloomberg

秋田県で暮らす佐藤圭子さん(81)は、家計にゆとりがなくなっているため、「無駄な物は買わないようにしている」と話す。 普段は生協を利用しており、たまに普通のスーパーで買い物すると、「手を引っ込めちゃうぐらい値段が高い」という。

これは今回の衆院選に政権の存続をかけている高市首相にとって重要な課題だ。過去4年間にわたり、消費者物価上昇率が日本銀行の物価安定目標である2%を超えて推移してきた背景には、食料品価格の上昇が大きく影響しているからだ。

高市首相は先月、こうした問題に先手を打つ形で、食品と非アルコール飲料にかかる8%の軽減税率を2年限定でゼロとするための議論を加速させることを表明した。2026年度中の実施を目指す考えだ。

日本経済新聞とテレビ東京が先月実施した世論調査では、衆院選で議論してほしい政策課題について、最多の54%が「物価対策」と回答した。国民のインフレへの関心が高まっている様子がうかがえる。

年金で暮らす岩田一江さん(74)は、日常生活で食料品、特に米や、衣料品の価格を見ると、物価高を「すごく感じる」という。娯楽費を減らさざるを得なくなっているとし、「旅行などしたくても、そういうのはできない」と話した。

野党各党も生活費の引き下げに向けた政策を掲げる。最大野党である新設の中道改革連合は、自民党案よりも踏み込み、食料品に対する消費税の恒久的な廃止を目指す。国民民主党は消費税率全体を5%に引き下げることを提案し、参政党は消費税自体の廃止を公約にしている。

こうした主張は、日本の財政健全性に対する懸念を一段と強め、円安圧力になるとともに債券市場にも動揺を与えている。1月には40年国債利回りが4%を突破し、07年の発行開始以来の最高水準となった。日本でいずれかの年限の国債利回りがこの水準に達したのは、30年以上ぶりのことだ。

大和総研の佐藤光シニアエコノミストは「現在、ほぼ全ての政党が消費税減税を主張しており、それが円安の一因として指摘されている」と話す。「仮に減税が1年限定であれば、統計上は影響が出るかもしれないが、中長期的にエンゲル係数を大きく押し下げる効果は期待しにくい」と分析する。

食料品の消費税をゼロとする案は幅広い支持を得ている。日本チェーンストア協会は、消費減税の期間を最低5年に延長するよう政府に要請したと日経が先月報じた。一方、外食産業は、消費者が家庭での食事を増やし、10%の消費税が課される外食を減らす可能性があると懸念を表明している。

為替動向が鍵

食品価格の上昇は昨年急激な上昇が生じた反動もあり、今後数カ月で前年比の伸びが鈍化する兆しが見られる。最新の統計では、食品価格の上昇率が12月に前年比5.1%と、前月の同6.1%から低下した。

コメ価格の上昇率も37.1%から34.4%に鈍化した。ただ、物価変動を反映させた実質賃金の伸びが昨年11月まで11カ月連続でマイナスだった日本では、依然として家計への重い負担となる。

帝国データバンクの調査によると、25年の飲食料品値上げは計2万609品目となり、前年実績を6割超上回った。26年の値上げ予定品目数は4月までの判明分で約3600品目、前年同期比で約4割減少する見通しという。

大阪の黒門市場

埼玉県在住の佐々木洋子さん(51)は最近子どもが家を出て夫と二人暮らしになったものの、月々の家計における食費の割合は今も大きいという。「量は減っても値段は据え置きというところで、何とかうまくいっている」と話す。

円相場も注視すべき要素だ。農林水産省によると、日本は24年度に食料需要の6割超を輸入に依存した。円相場が6日午前は1ドル=156円後半で推移していることを踏まえると、為替による輸入コストへの上昇圧力は継続する可能性がある。

大和総研の佐藤氏は「日本の低い食料自給率は、ここ数十年ほぼ変わっていない」と指摘。政府はさまざまな取り組みを進めているが、実際の数値には反映されていないという。その結果、「最近のように為替が大きく動く局面では、輸入インフレを通じてエンゲル係数が上昇しやすくなる」という。

(第4段落にエンゲル係数を追加して更新しました)

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