(ブルームバーグ):トヨタ自動車グループによる豊田自動織機の株式公開買い付け(TOB)阻止に向け、エリオット・インベストメント・マネジメントが積極的なキャンペーンを展開する一方、短期的な利益追求になびかない株主もいる。一部の機関投資家は、現在の株価を下回る買い付け価格を受け入れてTOBに応募する考えだ。
豊田織機株を保有する企業の幹部は匿名を条件に、TOB応募を判断する上では、同社が非公開後も日本社会で意義ある役割を果たし続けられるかどうかが重要だと述べた。短期的な利益の獲得が目的ではなく、日本経済全体の発展によって長期的に自社も恩恵を受けるかを見極めることが重要だと述べた。
さらに、別の株主企業幹部も匿名を条件に、短期的に価格だけで決めるべきではないとし、重視しているのは長期的な視点での事業運営だと話した。
トヨタグループによると、豊田織機株の4.1%を保有する株主が、1株1万8800円という市場価格を下回る水準でTOBに応じる意向を示した。部品メーカーなど系列の企業だけではなく、あいおいニッセイ同和損害保険、三井住友海上火災保険、東京海上日動火災保険なども含まれる。
一部の株主がトヨタグループと歩調を合わせる動きは、日本の企業間の複雑な関係性を浮き彫りにしており、TOB阻止を目指すエリオットにとっては障壁になる。
岩井コスモ証券の清水範一アナリストは保険会社など国内の投資家は「持ち合い株解消の流れの中で、今後もビジネスを友好的にお互いやっていけるようにわざわざ事を荒立てることはしない」と指摘する。
アクティビストができるだけTOB価格を引き上げて利益を最大化することを重視する一方で、「ビジネスを実際に行っている企業はそうではない」と話す。「資本効率の向上を目指し、株式売却益を成長投資につなげてお互いに発展していこう」という考えが根底にあると分析する。
たが、すでに豊田織機株の6.7%を保有しているエリオットにとって、こうした考え方は受け入れがたいものだろう。同ファンドは、トヨタグループの買収提案に応じないよう株主に対し繰り返し呼びかけている。豊田織機は他社株式も保有しており、それらを合算すると買収提案額と同等かそれ以上になることから、トヨタグループは実質的に無償で同社を手に入れることになると主張している。
1月中旬に買い付け価格が引き上げられて以降、豊田織機の株価は提示価格を上回って推移しており、3日の終値は1万9350円と時価総額は6兆3050億円となった。トヨタグループの提案では企業価値を6兆1000億円と評価している。
文化的な衝突を背景に、今回の取引は複雑な持ち合い解消と投資家価値の向上を狙うコーポレートガバナンス(企業統治)改革の試金石となっている。豊田織機の非公開化には総額5兆4000億円が必要で、そのうち4兆3000億円がTOBに充てられる。
豊田織機は3日、TOBを巡り株主と対話を進めていることを明らかにした。非公開化を主導するトヨタ不動産がTOBのために設立した特別目的会社は2日の発表文で、買い付け価格は豊田織機の「本源的価値を反映した最善の価格であり、株主の理解を得られるよう説明を続ける」とコメントした。トヨタ自動車からはコメントを得られていない。
エリオットは3日にトヨタグループの提案が豊田織機を大幅に過小評価しているとの見解を改めて表明しており、対立は12日のTOB期限まで続くとみられる。
同ファンドは、持ち合いの解消、事業の統合、資本配分の改善、ガバナンス改革を通じて、豊田織機が28年までに1株当たりの純資産価値を4万円まで引き上げることが可能だとし単独路線の案も提示している。
結果のいかんを問わず、両者間の攻防は創業家主導の非公開化に向けた取引が少数株主に公正な価値をもたらしているかどうかへの関心を高め、今後投資家が同様の取引にどこまで強く異議を唱えるかに影響を与えることになりそうだ。
--取材協力:布施太郎、稲島剛史、高橋ニコラス.
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