(ブルームバーグ):ウォール街がソフトウエア株に懐疑的なのは今に始まったことではない。しかし人工知能(AI)による業界破壊への不安が積み上がり、最近のセンチメントは「弱気」から「終末論」へと悪化した。
「われわれはこれを『SaaSポカリプス』と呼んでいる。ソフトウエア・アズ・ア・サービス(SaaS)株の黙示録だ」と、ジェフリーズのトレーダー、ジェフリー・ファヴッツァ氏は語る。「『脱出』スタイルの売りだ」と述べた。
この不安はAIスタートアップ(新興企業)のアンソロピックが法務ツールを発表したことを受けて、2月3日の市場で顕在化した。法務ソフトや出版関連の株が急落した。ロンドン証券取引所グループやトムソン・ロイターも大幅安となった。
数カ月前からくすぶっていたソフトウエア業界への懸念は、アンソロピックの「クロード(Claude)コワーク」ツールの1月リリースで増幅した。ゲーム株は先週、アルファベットの「プロジェクト・ジーニー」投入開始で売られた。S&Pノースアメリカン・ソフトウエア指数は1月、15%下げた。
「どの価格なら我慢して買うのかと顧客に尋ねても、確信のある答えは返ってこない。投げ売りが進んでも同じだ」とファヴッツァ氏は語る。「価格に構わず誰もがとにかく売りを出している」と述べた。

プライベートエクイティー(PE、未公開株)でも不安の温度が上がり始めている。関係者によれば、アークモント・アセット・マネジメントやヘイフィン・キャピタル・マネジメントでは影響を受けやすい投資先の点検に、コンサルタント会社を起用している。アポロ・グローバル・マネジメントは2025年に直接投資ファンドのソフトウエア関連エクスポージャー(投融資)を半減させた。
ブルームバーグのデータによると、S&P500種株価指数採用銘柄で四半期売上高が予想を上回ったソフトウエア企業は、71%にとどまり、テクノロジー全体での比率を下回った。
マイクロソフトは先週、好決算を発表したが、投資家の関心はクラウド事業の成長鈍化やAI投資額に向かい、株価は急落。1月全体では11%下げ、2015年1月の13%安に続く悪い月となった。サービスナウとSAPの決算は投資家の慎重姿勢を強めた。一方でパランティア・テクノロジーズが2日に強気の売上高見通しと、70%の四半期増収を発表した。
LPLファイナンシャルの株式調査責任者トーマス・シップ氏は「AIに対する不安は、競争の激化や価格圧力の高まり、参入障壁の低下でAIに置き換えられやすくなることだ」と説明する。「今後の成長がもたらす結果は幅が広く、適正価格や割安感の判断が難しくなっている」と続けた。
こうしたAI関連の不安を背景に、パイパー・サンドラーは2日、アドビとフレッシュワークス、バーテックスの株式投資判断を引き下げた。アナリストのビリー・フィッツシモンズ氏は有料ユーザー数圧縮やバイブコーディングといった流れを挙げ「株価収益率(PER)の上限を形成する恐れがある」と指摘した。バイブコーディングとは、AIを使ってソフトウエアのコードを書くことを指す。
反発の好機
それでもソフトウエア銘柄の値下がりを、好機と見なす投資家もいる。サイコモア・サステナブル・テックのファンドはマイクロソフトが将来的にAI勝者になるとの見方から、下落局面で同社株を購入した。
BTIGのチーフ・マーケット・テクニシャン、ジョナサン・クリンスキー氏は、ソフトウエアセクターは「売られ過ぎているようだ。反発するには十分だ」と、先週の顧客向けノートで指摘。ただし「修復と新たな基盤構築には時間がかかる」と述べた。
投資家にとっての課題はAIの勝ち組と負け組を見極めることだが、現時点では判断が難しい。
「最も厳しいのは、ソフトウエアが将来性の面で印刷メディアや百貨店のようになるという見方だ」とファヴッツァ氏は話す。「すべてを売る状況になっていることは、将来、非常に魅力的な機会が生まれることを示唆する。しかし2026年や27年を見渡しても上昇余地はなかなか見えてこない。マイクロソフトでさえ苦戦しているなら、破壊の直撃を受けやすい企業の今後はさらに厳しいだろう」と述べた。
原題:‘Get Me Out’: Traders Dump Software Stocks as AI Fears Erupt (2)(抜粋)
--取材協力:Subrat Patnaik、David Watkins.
もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
©2026 Bloomberg L.P.