(ブルームバーグ):貴金属相場は2日も続落しているが、アジア時間の強烈な売りは止み、下げを縮小している。高値更新が続いた上昇相場からの急反落で、投資家は今後の展開を見極めようとしている。
金スポット価格は一時10%下落したが、ロンドン時間午後3時20分には約4%安まで下げを縮めた。前営業日に取引時間中として過去最大の下落率を記録した銀は一時16%安となったが、7.5%安で取引されている。
JPモルガン・チェースの元貴金属トレーダーで現在は独立系市場コメンテーターのロバート・ゴットリーブ氏は、「まだ終わっていない」と述べ、投資家がこれ以上リスクを取ることに慎重になることで、市場の流動性が抑制されると指摘。「下値支持線を見いだせるか見極める必要がある。結局のところ、取引は過度に集中していた」と付け加えた。

貴金属相場はベテラントレーダーでさえ驚くほど急騰し、高値更新を重ねていた。既に過熱感があった上昇は1月に入るとさらに加速し、地政学的な混乱、通貨価値の下落(ディベースメント)、米連邦準備制度(FRB)の独立性に対する懸念の再燃を背景に、金と銀に投資家が殺到した。中国投機マネーの大量の流入も、上昇を後押しした。
「既に利益を上げていた多くの買い手は、片足を出口にかけており、いつでも逃げる準備ができていた」と、上海東呉玖盈投資管理のトレーディング部門責任者、賈錚氏は指摘。今回の下落は、主に金相場に連動する上場投資信託(ETF)や、レバレッジ型のデリバティブ商品によって引き起こされたと述べた。
サクソバンクのコモディティー戦略責任者、オーレ・ハンセン氏によると、価格高騰とボラティリティーでトレーダーのリスクモデルやバランスシートには既に緊張感が生じており、極端な動きが発生しやすい状況にあった。そこへ、「大規模な取引での価格提示にトレーダーらが消極的になり、流動性が一段と悪化、ボラティリティーが爆発的に上昇した」と説明した。
あらかじめ設定された価格で購入する権利が取得できるコールオプションに過去最高の買いが入っていたことで、スクイーズが発生しやすい条件も整っていた。価格上昇時にディーラーはオプションに対するヘッジとして現物資産を買い、これが価格上昇を一段と後押ししたが、価格が下落するとこの動きが反転し、ディーラーはヘッジの売却を急いだ。
投資家の多くがレバレッジ取引を利用していたことも、売りを膨らませた。先物契約やプロシェアーズ・ウルトラ・シルバー(ティッカー:AGQ)などの銀ETFを保有していた短期筋には、マージンコール(追加証拠金請求)も発生した。AGQは1月の相場上昇を加速させたが、同月30日には保有資産の評価損を反映するため数十億ドル相当の銀のポジションが強制的に巻き戻され、相場急落を増幅させた。
同日にAGQの資産価値再評価に伴って売却された銀先物はおよそ40億ドルに達すると見込まれると、ハンセン氏は予想した。

今後の相場の方向性は、中国人投資家が押し目買いにどの程度動くかに大きく左右される。上海市場では取引開始後に下げを拡大したものの、依然として国際価格を上回って取引されていた。週末には、中国最大の金市場である深圳に買いが殺到し、春節(旧正月)を前に金の宝飾品や地金を買い込む動きが見られた。
「ボラティリティーが高まっている上、春節の直前でもあるため、トレーダーはポジションを縮小し、リスクを軽減しようとするだろう」と、金瑞期貨のアナリスト、呉梓傑氏は語った。ただ、とりわけ買いが盛り上がる時期でもあるため、下落局面では中国の個人の買いが促される公算が大きいとの見方も示した。
中国本土市場は、春節に伴い16日から1週間余り休場となる。
貴金属価格の急落は、トランプ米大統領がケビン・ウォーシュ氏を次期連邦準備制度理事会(FRB)議長に指名するとの報道を受けてドルが上昇したことが引き金となった。市場関係者の間ではこれまでの急騰を受け、調整局面が近いとの警戒感が広がっていたが、今回の下落幅は多くの投資家の想定を超えた。
原油価格も下落。1月には2022年以来最大の月間上昇を記録したが、市場ではトランプ米大統領による対イラン政策の行方と、貴金属市場の急落が注視されている。
北海ブレント原油先物4月限はシンガポール時間午後2時33分時点で5.3%安の1バレル=65.65ドル。米国産標準油種のウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)原油先物3月限は5.5%安の61.64ドル。
原題:Gold Slump Eases as Traders Weigh Unwinding of ‘Crowded’ Bets(抜粋)
(相場を更新し、第6-9段落を挿入します)
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