(ブルームバーグ):上昇を続けてきた東京都心の中古マンション価格が頭打ちになったと指摘する声が出ている。政府や地方自治体が価格高騰を抑制する方針を打ち出したことで国内外の投資家が購入を控え始めたほか、インフレや金利上昇が実需層の購入意欲にブレーキを掛けているためだ。
豊洲や勝どきなど湾岸エリアを中心に不動産売買を仲介するFJリアルティの藤田祥吾社長は「湾岸エリアの中古マンション価格は右肩上がりで上昇してきたが、昨年末ごろから踊り場を迎えている」と指摘する。強気の売り出し価格では成約できない事例が増え、売り手が価格を下げる動きが出てきているという。
同社がまとめる湾岸エリアの中古マンション市況によると、平均成約価格は2026年1月に前月比0.6%安の1坪あたり688万円と5カ月ぶりにマイナスに転じた。70平方メートルのマンションに換算すると価格は約1億4600万円になる。2月は同1%高だったが、「在庫が非常にたまってきたので売却の難易度が上がっている。今までずっと右肩上がりで来ていたが頭打ち感が出てきた」という。
中古マンションは需給を反映しやすく、新築に比べて価格動向の変化がいち早く現れる傾向がある。不動産調査会社の東京カンテイは24日に2月の東京都心6区の中古マンション価格を発表するが、前月比で下落となれば37カ月ぶりのマイナスとなる。
都心の中古マンション市況は近年、売却益や節税効果を狙う国内外の投資家や富裕層などがけん引してきた。政府は外国人による不動産取得の実態調査を行ったり、地方自治体や不動産業界が短期間の転売に規制したりするなど、価格高騰をけん制している。こうした動きを警戒する投資家や富裕層が増え、中古マンション価格は頭打ちとなる可能性がある。
藤田氏が湾岸エリアのマンション市況に異変を感じ始めたのは昨秋ごろだ。とりわけマンション価格の上昇を一部けん引してきた中国人を中心とする海外投資家や日本に住む実需目的の外国人による購入が減少してきたという。外国人に厳しい政策を推進すると見られた高市政権の発足が要因だ。
高市早苗政権は外国人による不動産取得の規制を検討し始めたほか、外国人の在留資格の一つである経営・管理ビザの要件を厳格化した。また東京都千代田区は再開発事業で開発されたマンションについては、原則5年間の転売禁止を打ち出した。
実需層も価格高騰に付いていけなくなった。不動産市場に詳しいオラガ総研の牧野知弘代表は「夫婦いずれも大企業に勤める共働きで、世帯年収が1500万円から2000万円を超えるパワーカップルですら、都内のマンション購入を諦め始めている」と指摘する。
牧野氏が分析する「臨界点」は、マンション価格が1億2000万円だ。一般的なファミリータイプのマンションとされる70平方メートルで換算した場合、坪単価は約566万円。前述した湾岸マンションの平均成約価格はすでに600万円を超えており、牧野氏が指摘する限界ラインを突破している。
さらに昨今のインフレと金利上昇が実需層の購入意欲にブレーキをかけている。藤田氏は「特にパワーカップルの方たちは、経済状況に敏感。住宅ローン金利が上がることに警戒感を示し、マンション市況の先高観が減退したことも慎重姿勢に転じた要因」と述べる。
金利上昇は不動産による売却益や運用益を狙う投資家の動向にも影響する。牧野氏によると、都心の中古マンションを購入し貸し出した場合、表面利回りは2%程度で他の金融商品と比べた投資妙味は落ちているという。
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