(ブルームバーグ):ユーロ急伸は、欧州中央銀行(ECB)が今年初めて開く政策決定会合で大きな焦点になりそうだ。ユーロ圏のインフレ率は、共通通貨の上昇によって目標を一段と下回るリスクに直面しており、フランクフルトに集まるECB当局者に厄介な問題を突き付けている。
ECBは昨年6月以降、金利を変更していない。5日の会合も金利据え置きと見込まれている。ただ、議論の材料には事欠かない。政策当局が前回金利を決めた昨年12月18日以降、トランプ米政権による米連邦準備制度理事会(FRB)への攻撃や新たな対欧関税の脅し、そして直近ではドルの急落が起きた。
トランプ米大統領がドル安について懸念していないと述べたことに後押しされ、ユーロは一時1ユーロ=1.20ドル超と、2021年以来の高値となった。
こうした動きにはECB当局者も留意している。ECB政策委員会メンバーのビルロワドガロー・フランス銀行(中銀)総裁はSNSへの投稿で「ユーロの上昇と、それがインフレ低下につながる可能性については注視している」とし、「これは、今後数カ月の金融政策や金利決定を導く要因の一つだ」と説明した。コッハー・オーストリア中銀総裁もユーロ一段高への警戒感を示した。
ユーロ圏のインフレ率は昨年12月にすでに2%をわずかに下回り、さらなる低下が見込まれている。4日に発表される今年1月のインフレ率は1.7%になるとエコノミストらは予想している。

ECBは追加措置を取らなくても中期的には物価上昇率が目標に収れんすると見込んでいるが、ユーロがさらに上昇すれば、追加利下げを巡る議論が再燃する可能性もある。
ブルームバーグ・エコノミクス(BE)のデービッド・パウエル、シモーナ・デッレキアイエ両エコノミストは、「欧州は地政学的に不安定な年初を迎え、ECBは細部よりも全体像に引き続き焦点を絞る可能性が高い」と指摘。
「つまり、グリーンランドに絡みの最近の対米通商摩擦やインフレ率が2%目標をわずかに下回ったこと、ユーロ高といった動きを、恐らく重く受け止めることはないだろうが、こうした展開は経済見通しに対する下振れリスクが高まりつつあることを浮き彫りにしている」とコメントした。
今週は金利を決定する中銀が多い。英国やメキシコ、チェコも据え置きが見込まれる一方、インドとポーランドは利下げに踏み切る可能性がある。オーストラリア準備銀行は、今年最初に利上げを行う主要中銀になるかもしれない。
米国
米国では、1月の雇用統計が6日に発表される。25年後半の採用減速後に労働市場が安定しつつあるとのFRB当局者の見解と照らし合わされる。
ブルームバーグのエコノミスト調査(中央値)では、非農業部門雇用者数は6万8000人増と、4カ月ぶりの高い伸びが見込まれている。失業率は4.4%で、前月比横ばいとみられている。昨年11月に付けた4年ぶり高水準の4.5%をわずかに下回る。
米連邦政府機関の部分的な閉鎖が先月31日に始まり、短期間に終わる公算が大きいものの、労働統計局(BLS)が統計の公表を延期するかどうかは不透明だ。

米政府の統計は、昨年11月に終了した過去最長の政府機関閉鎖の影響で多くのデータが公表延期となり、一部は完全に中止された後、ようやく最近になって通常の公表日程に戻ったばかりだ。
今回の報告には、通常の月次の雇用者数と失業率に加え、年間の雇用増加に関する改定値も含まれる見通しで、採用ペースが大幅に下方修正されると見込まれている。暫定集計では、25年3月までの1年間の雇用増加が、過去最大の下方修正(91万1000人)となり得ると示唆されていた。

米連邦公開市場委員会(FOMC)は先月28日、主要政策金利の据え置きを決定し、声明で「失業率は安定化の兆しをいくらか示している」と指摘した。
パウエルFRB議長の運営に長らく不満を募らせてきたトランプ氏は1月30日、次期FRB議長にウォーシュ元FRB理事を指名する意向を表明した。インフレタカ派として知られてきたウォーシュ氏は昨年、利下げを公に主張してトランプ氏に歩調を合わせていた。
アジア太平洋
アジアでは、2つの中銀が相反する方向に政策を調整する可能性がある。
トレーダーらは、オーストラリア準備銀行が政策金利であるキャッシュレートの目標を3.85%に3日に引き上げるとの見方を強めている。主要インフレ指標が昨年10-12月期に前年同期比3.4%上昇し、インフレ率の目標レンジ(2-3%)を上回る伸びとなった。
一方、インド準備銀行がレポ金利を6日に引き下げる可能性も残っている。昨年12月のインド消費者物価上昇率が11カ月連続でインフレ目標の中間値を下回ったためだ。ただし、見方は分かれている。BEは、秋の収穫が好調だったことから、食料価格が当面デフレ的に推移すると想定している。
日本銀行が2日に発表する金融政策決定会合における主な意見(1月22・23日分)は、次の利上げがいつ実施されるのかについて手がかりを与え得る。
6日に発表される家計支出統計(昨年12月)は、8日投開票の総選挙で有権者が高市早苗首相に審判を下す前に、消費者がどの程度支出に前向きかを示すヒントになる。最近のデータでは、消費全体に占める食料支出の割合が過去最高となっており、食料品が焦点の一つだ。
原題:Euro Rally Is Latest Risk to ECB’s Inflation Outlook: Eco Week(抜粋)
--取材協力:Tom Rees、Greg Sullivan、Monique Vanek、Beril Akman、Patrick Donahue、Mark Evans、Brian Fowler、Vince Golle、Robert Jameson、Laura Dhillon Kane、Kati Pohjanpalo.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
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