(ブルームバーグ):メルセデス・ベンツグループのオラ・ケレニウス最高経営責任者(CEO)は、ドイツから米国への本社移転をラトニック米商務長官から打診されたが、これを断った。自動車の発明にまでさかのぼる同社のルーツはドイツにある。
ケレニウスCEOは独メディア「The Pioneer」とのインタビューで、ラトニック長官が約1年前に税制優遇などのインセンティブを提示し、本社移転を持ちかけてきたと明らかにした。ケレニウス氏はこれを辞退したものの、メルセデスはその後、スポーツタイプ多目的車(SUV)の生産をドイツから米アラバマ州タスカルーサにある既存工場に移管する計画を発表した。
「スリーポインテッドスターは100年以上にわたってグローバル企業であり続けてきたが、われわれはシュヴァーベンに根ざしている」とケレニウス氏はメルセデスのロゴ、および本社と複数の工場が所在する地域に言及して発言。「この根っこを引き抜くことはできない。引き抜くべきではない」と語った。
同氏が明かしたやり取りは、トランプ米政権が欧州企業の投資を呼び込もうと、かなり踏み込んだ働きかけを行ってきた実態を浮き彫りにしている。トランプ氏はこれまで、対ドイツの自動車貿易不均衡を繰り返し批判しており、特にトランプ・タワー周辺の通りにメルセデス車が目立つとして不満を示してきた。
メルセデスはシュヴァーベン地方の都市シュツットガルトにおける主要企業の一角で、グローバル本社周辺には旗艦モデル「Sクラス」のセダンや「AMG」スポーツカー用エンジンなどを生産する工場が集積している。ポルシェやロバート・ボッシュ、ダイムラー・トラック・ホールディングと並び、同社はドイツ高度製造業の中核地域を支える存在で、輸出主導型の経済モデルにおいて重要な役割を担っている。
ケレニウス氏はドイツの官僚主義や高い労働コストを再三批判してきたほか、病欠率の高さを公に指摘したことで労働者代表の反発を招いたこともある。メルセデスは同氏の下、生産の一部をハンガリーや中国、米国の工場へ移管している。
原題:Mercedes CEO Rebuffed Lutnick’s Pitch to Move Headquarters to US(抜粋)
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