ニッセイ基礎研究所が2025年に実施した調査によれば、「仕事についていけるか」「自分の能力でやっていけるか」といった不安は、社会との接点が現実のものとして意識されやすい「内定後の学生」および「25歳未満の社会人」で、とりわけ高い水準にある。
また、NTTドコモ モバイル社会研究所による2025年の調査では、「生成AI」に不安を感じている20代のうち、相当割合が不安の内容として「思考力低下や学力低下を及ぼしそう」「人間の仕事を奪われるリスクがありそう」などを挙げている。
この点について、生成AIが情報探索や文章作成などの前工程を大幅に短縮し得る一方で、当人の能力形成が自動的に担保されるとは限らない、という先行研究の指摘も見られる。
さらに、現役大学生からは、生成AIの利用が「自分がやった感じの希薄化」や「情報の偏り」「視野の狭まり」につながり得るのではないか、といった、成長機会の質に関する不安も聞かれている。
今後、Z世代からα世代へと学生の中心コホートが移行するにつれ、学生生活の延長線上で生成AIに接触し、日常的に利用する層は一段と厚くなると見込まれる。
したがって企業にとっては、若年層に対し、AIとの協働を前提とした能力育成の方針とプロセスを明確に示し、将来不安を「成長の見通し」へと転換していけるかどうかが、これまで以上に問われる局面に入っていると言える。
大学生が語る生成AIへの期待と不安
近年、大学生を対象に消費とAIをテーマとした講義やワークショップを行うと、AIに対して漠然とした不安や戸惑いを示す発言が少なくない。
なかでも多く見られるのが、「AIが社会に広く浸透するなかで、自分は将来きちんと働いていけるのか」という不安である。
さらに、学生と踏み込んで会話をしていくと、その背景には、情報を集め、比較し、考え直すといった意思決定のプロセスが、生成AIの利用によって省略されてしまい、「自分で考えて判断した」という実感や能力が弱まるのではないか、という懸念が含まれている様子がうかがえる。
さらにこの延長線上には、AI技術そのものへの不安というよりも、失職リスクも含め、自らの将来像が見えにくくなっていることへの不安であり、生成AIの時代に「どのように成長し、力を発揮すればよいのか」を問い直す動きの表れと見ることもできる。
そこで、データや先行研究に基づき、こうした大学生の実態と意識を傍証・考察していく。
α世代の入口に近い現在のZ世代大学生~生成AI普及期と学生生活が重なる
現在の現役大学生(学部生/おおむね18〜22歳)は、2026年時点で見ると、概ね2003〜2007年生まれが中心となっている。
この世代は、いわゆるZ世代の中でも「後半寄り」に位置しており、むしろ、2010年前後以降に生まれたとされる「α世代」にも近い環境で育ってきた層でもある。
彼らは、幼少期からスマートフォンやタブレット端末が身近に存在し、検索エンジンやSNS、動画配信サービスを通じて情報を得る日常の中で育ってきた世代であると言われる。
一方で、文部科学省はICT教育の推進策(GIGAスクール構想/2019年〜)を通じて、学校教育の現場においてICT端末の活用やオンライン教材の導入を進めてきた。
その結果、「デジタルツールに補助してもらう」ことで、自らの思考や意思決定を支援してもらうことが、自然な学習経験として組み込まれてきたという点で、今の大学生はZ世代の中でも特徴的な世代であると言えるだろう。
また、現在の大学生は、ChatGPTの試用版が2022年11月に公開されて以降、生成AIが急速に生活領域へ浸透してきた時期と、高校から大学にかけた在学期間の一部が重なっている。
言わば、生成AIの普及期を社会人になってからではなく、学生生活の延長線上で経験している世代でもある。
20代の生成AI利用経験率について、総合調査機関の日本リサーチセンターの調査によれば、2025年3月時点で52.9%となり過半数を超えている。
調査対象は20代全体であり、大学生のみを切り出した数値ではないものの、20代の約半数以上が生成AIの利用経験を持っていることになる。
