(ブルームバーグ):米国の人工知能(AI)スタートアップ、Humans&が評価額44億8000万ドルで4億8000万ドル(約740億円)のシードラウンド(初期段階の資金調達)を実施したとの報道に対し、インターネット上では規模の大きさに首をかしげるような反応が相次いだ。
こうした反応は的外れではない。Humans&の初回の資金調達ラウンドはあまりに規模が大きく、「シード」に代わる新たな呼び名を考えるべきだとの声さえ出ている。成長企業を育成・支援するという意味合いを持つ「シード」という呼称は、もはや当てはまらないからだ。
シードラウンドは通常、スタートアップに対して機関投資家が最初に資金を投じる段階を指す。事業アイデアの検証や初期製品の開発、少人数の中核チームの採用、さらには事業として成立するかどうかの見極めに充てる資金とされてきた。
歴史的に見れば、この段階で投じられる資金は比較的少額な一方、事業の成否を見通しにくく、結果のばらつきも大きいと考えられてきた。実際の資金調達の現場では、すでにこうした定義を大きく外れた動きが広がっている。それでも、資金調達用語集や投資家向け資料には、この説明が今もそのまま残っている。
しかし、スタートアップが誕生時から十分な資金を確保し、評価額が数十億ドル規模に達する場合、脆弱な立ち上がり段階を前提とした言葉は、もはや当てはまらない。
調査会社ピッチブックの集計によると、2015年から2025年にかけて、米国では4万8155件のシードラウンドが実施された。この期間における1回当たりの平均調達額は300万ドル弱だったが、その水準は時間の経過とともに着実に拡大している。
開示されたシードラウンドの調達額上位30件のデータは、「シード」という言葉がいかに形骸化しているかを浮き彫りにする。上位30社の平均調達額は実に3億5000万ドルに達している。Humans&は現時点ではこの一覧に含まれていないものの、4億8000万ドルという調達額を基準にすれば、歴代でおよそ6位に位置づけられる計算だ。
ピッチブックの定義が示すシードラウンド本来の姿と比べると、こうしたデータは違和感を伴う。同社の定義には、500万-1000万ドル規模の投資を念頭に置いた金額面での目安に加え、過去にベンチャーキャピタル(VC)による資金調達を行っていないことや、VC出身の取締役がいないことなど、複数の基準が含まれている。
これらは厳格なルールではないが、こうした目安の50倍や100倍に相当する規模の資金調達まで同じ呼称で扱われるようになると、その区分は説明力を失っていく。
特にAI時代に入り、シードという言葉と実際の調達規模とのずれは、もはや無視できないほど大きくなっている。最近の大規模シードラウンドの多くには、いくつかの共通点がある。AI関連であることに加え、投資家が事業内容以上に創業者そのものに賭けている点だ。
業界用語として定着しているわけではないが、こうした資金調達を「ファウンデーション・ラウンド」と呼ぶ向きもある。ただ、この呼称も、初期段階のリスクを前提としてきた従来の経済的な枠組みから、現実がどれほど乖離しているかを十分に説明するものではない。呼び名を変えただけでは、初期投資のリスクと規模を巡る現実の変化を覆い隠すにすぎない。
原題:Startup Seed Funding Has Grown to Need a New Name: Tech In Depth(抜粋)
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