米エヌビディアのジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)は、人工知能(AI)の発展によって世界的に高まっている雇用不安を一蹴し、今まさに熟練した技能労働者への需要が急増していると強調した。

フアン氏は、AIが史上最大級のインフラ整備を必要とし、数兆ドル規模の投資を生むと指摘。その上で、AIを稼働・学習させるためのデータセンター建設需要の高まりにより、配管工や電気技師、建設作業員は「6桁の年収」を得られるようになるだろうと語った。さらに、「誰もが十分な収入を得られるべきだ。コンピューターサイエンスの博士号は必要ない」とした。21日に世界経済フォーラム(WEF)年次総会(ダボス会議)で、米ブラックロックのラリー・フィンクCEOとの対談で発言した。

前日には、パランティア・テクノロジーズのアレックス・カープCEOが「職業訓練を受けた労働者」を称賛。地元でより多くの雇用を生み、移民を大量に受け入れる必要はほぼなくなるだろうと指摘した。AI向けクラウドサービスを手がけるコアウィーブのマイケル・イントレイターCEOも、AIブームの「物理的側面」に言及。配管工、電気技師、大工といった職種の需要が一層高まっていると話していた。

 

一方、AIの労働市場への影響はすでに表れ始めている。AIチャットボット「Claude(クロード)」を手がけるアンソロピックのダリオ・アモデイCEOは、エントリーレベルの仕事の半分が失われる「ホワイトカラーの大量解雇」が起きかねないと警鐘を鳴らした。クロードはコーディング能力に優れ、ジュニアレベルのプログラマーの仕事を代替する可能性が指摘されている。

アモデイ氏は20日、ダボスでのブルームバーグのインタビューで、「現在、ジュニアレベルのソフトウエア技術者、場合によってはより上級な技術者がこなす作業の多くも、AIによってほぼ自動化されつつある。今後さらに進むだろう」と語った。多くの業界で適応が難しい人々の階層が生まれ、高失業率や不完全雇用といったリスクへの対応も必要になるとの見解を示した。

「中国問題」には触れず

フアン氏との対談中、フィンク氏は中国に関する微妙な話題には踏み込まなかった。エヌビディアの対中半導体輸出は依然として議論の的となっており、同社はいまも米政府の最終判断を待っている。前日にはアモデイ氏が、エヌビディアの対中輸出を「北朝鮮への核兵器売却」になぞらえる発言をしていた。

フアン氏は今月末にも中国を訪問する計画で、エヌビディアのAI半導体にとって極めて重要な市場の再開拓を目指している。米政府は22年以降継続していた対中半導体輸出規制の一部を緩和し始めており、同社にとっても重要な転換点となる可能性がある。

現時点では、旧世代の「H200」については輸出が認められているが、AIの最先端半導体については認可されていない。最先端のAI技術で中国が優位に立つことを米政府が警戒しているためだ。

ブルームバーグは、中国政府が26年1-3月(第1四半期)にも「H200」の商業利用を承認する見通しだと報じた。ただし、軍事分野や機密性の高い政府機関、重要インフラ、国有企業での使用は禁止される見込み。同国主要テック企業であるアリババグループや字節跳動(バイトダンス)が、それぞれ20万ユニット以上の発注に非公式に関心を示しているという。

原題:Nvidia CEO Says Plumbers in Demand as AI Upends Job Market(抜粋)

もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp

©2026 Bloomberg L.P.