(ブルームバーグ):「TACOトレード」は過去約9カ月、確実に勝てる戦略としてウォール街で実証されてきた。
「Trump Always Chickens Out、トランプはいつも尻込みする」の頭文字を取ったこの戦略は、トランプ米大統領が昨年4月に世界各国に対して大幅な関税を導入、その後すぐ撤回した出来事を受けて登場した。以降、ホワイトハウスによる過激な脅しを気にかけず、リスク資産を買い続ける投資家たちの合言葉となってきた。
しかし、ウォール街の一角では、この戦略に潜むリスクがいまや認識されつつある。
TACOトレードはトランプ氏が次々と攻撃的な政策を示唆するとしても、投資家がパニックに陥る必要はないことを前提とする。そこでは、昨年の関税発表時のような政策撤回を促すほどの市場の急落は起こり得ない。
そうした中でトランプ氏は、グリーンランドの領有を要求し、それに反対する欧州同盟国への関税賦課を打ち出した。これが市場に危機感を呼び起こした。
20日の取引でS&P500種株価指数は2.1%下落し、ドルは売られ、ボラティリティー(VIX)は上昇した。21日はやや反発しており、相場の軟調は長続きしないかもしれない。
だが、TACOトレードが生き残るには、昨年4月のように市場が大きく荒れ、この痛みをトランプ氏に思い出させることが必要だとの声が上がっている。
BCAリサーチのチーフストラテジスト、マルコ・パピッチ氏は「今回も結局はTACOなのか。ああ、間違いなくそうだろう」との見方を示しつつ、「底を打つ前に、関税発表時のような急落が必要かもしれないとは考えている」と述べた。
欧州との緊張激化には複数の目的が働いているかもしれないと、パピッチ氏は指摘。一つは、トランプ氏が関税を導入できる権限を巡る最高裁判断を含む内政問題から、注意をそらすことだ。この判断次第では、広範な影響が及ぶ可能性がある。
もう一つの理由は、ホワイトハウスの破壊的な政策の続きだ。トランプ政権が連邦準備制度理事会(FRB)に圧力をかけ、貿易に再び不満を示しても、相場は昨年春の時点よりもはるかに高い水準にある。
ただ、S&P500は2022年の安値からほぼ倍増し、過去最高値付近に依然とどまっているだけに、誤りが許容される余地は縮小している。一方でバンク・オブ・アメリカの最新の調査によると、株価急落に備えたヘッジはここ数年で最低に近く、今週のボラティリティー急騰に投資家の多くは無防備だった。
20日の急落は、TACOトレードに陰りが出てきたことを示す明らかな証拠だ。S&P500は今年の年初来上昇分をすべて失い、市場の変動性を示すVIX指数は昨年11月以来の水準に上昇。金価格は過去最高値を更新し、ドルは2営業日で約1カ月ぶりの大幅下落を記録した。
さらに日本の長期国債急落が拍車を掛け、世界的な利回り上昇懸念が再燃した。
それでも、相場の下落がこの程度で済んでいるのは投資家がTACOを信じているからだ、との指摘もある。
コロンビア・スレッドニードルのポートフォリオマネジャー、エド・アルフセイニ氏は、トランプ氏が最終的に後退するという想定を、政策ショックへの反応に織り込んでいるとの見方を示した。
「もしTACOがなければ、米国債利回りは『安全資産買い』でもっと低下し、ボラティリティーははるかに大きく跳ね上がっていただろう」と述べた。
さらに、外国人投資家が為替リスクをヘッジしつつも、米国の債券を保有し続けていることを挙げ、政治的な不確実性が高い中でも、米国資産を投げ売る動きがほとんど見られないことの証明だと主張。このような市場の自信こそ、リスクプレミアムが低いままである理由を説明していると、アルフセイニ氏は論じた。
市場が甚大な損失を被る前にトランプ氏は引き下がると多くが依然見なしているが、そう信じ込むのは尚早かもしれないと警鐘を鳴らす向きもいる。
ミラー・タバクのチーフ市場ストラテジスト、チーフ市場ストラテジスト、マット・メイリー氏は「前例に基づけば、トランプ大統領は極めて強硬な姿勢から後退する傾向がある」としつつ、「それは市場で強力にネガティブな動きが見られるまで、起きないと思う」と指摘。
グリーンランドへの野心はとりわけ根深いように見えると述べ、「これまで同様にグリーンランドでもトランプ氏が引き下がると考えている人々は、誤っている可能性が高い」と語った。
原題:Wall Street’s TACO Trade Runs Into a Problem of Its Own Making(抜粋)
--取材協力:Geoffrey Morgan、Lu Wang (News).
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